1957年

エヴェレット解釈

(多世界解釈)

 ヒュー・エヴェレット

プラトテレス>さて、量子力学の系譜を先にすすめよう。

ソフィー>コペンハーゲン解釈の後継者ね。

プラトテレス>ちがうちがう、実はハイゼンベルグシュレディンガーの後、量子力学の系譜は主にコペンハーゲン解釈と多世界解釈に枝分かれしたんだ。

ソフィー>じゃあ、コペンハーゲン解釈の後継ではなく、その対局にある理論ってこと?

プラトテレス>その通り。それが多世界解釈だ。これは1957年にヒュー・エヴェレットV世によって最初に説かれた。

ソフィー>王様みたいな名前ね。それにしても「多世界」ですって?もちろん、本当にもう一つの異世界があるって意味じゃないんでしょ?

プラトテレス>一言でいうと、「 シュレディンガーの猫実験の時、箱をあけた観測後でも、たくさんの状態が存在しつづける」ということ。そこで、多世界っていうわけだ。でも、このたくさんの世界は完全に線形 に枝分かれしていて、他の状態を僕らは一切知覚できないし、一切の情報交換もできない。

つまり別の世界はこの世界にはないってこと。

ソフィー>どうしてそんなこと考えたの?

プラトテレス>コペンハーゲン解釈でも、物性物理のような分野では、まあまあいけるんだ。

でもエヴェレットが初期宇宙の量子重力を研究した時にコペンハーゲン解釈でやってみたら、この解釈は全く役立たずなことに気が付いたんだ。

そこで、新しい理論の必要を感じたのが全てのきっかけだ。

ソフィー>根っこが同じ量子力学から枝分かれした違いはなに?

プラトテレス>両者の解釈の違いは、「観測者はどういう存在か」という点だ。「存在」の原理の入れ替えだ。

ソフィー>よくわからない??普通は「観測者問題」って「何処から」観測する立場かって問題でしょ?

プラトテレス>古典的にはね。でもここでいう存在の原理の入れ替えは、量子の世界を記述するには「観測者も量子的存在」でなければならないってことだ。

ソフィー>それまでの量子論はどうだったの?

プラトテレス>コペンハーゲン解釈では、量子の対象に対して、原子の人間の立場のまま記述している。つまり古典力学の世界の観測者なんだ。よく考えてみるとそれは…

ソフィー>やっぱりおかしい?

プラトテレス>ってことだね。自分も含めた、宇宙全体を量子論で記述しなきゃいけないのに、記述者だけ、量子で記述するのを忘れていたんだ。

ソフィー>量子的観測者によると多世界解釈が可能になるってことよね

プラトテレス>そう、そしてコペンハーゲン解釈の観測時の波の収縮のような不自然な解釈は不用になる。

ソフィー>シュレディンガーの猫の解釈はどうなるの?

プラトテレス>猫は観測後も共存しつづけていることになる。僕たちは猫が死んでるか生きているかのどちらかの世界にしか住めないので、猫が死んでるか生きているのどちらかしか見ることができない。だから半死半生の猫なありえない。

ソフィー>結果は、波束の収縮したのと同じ世界をみることになるのね。

プラトテレス>そう、結果は同じだけど、もともとシュレディンガー方程式からは波の収縮なんて絶対に導き出せないんだ。

ソフィー>結果が同じなのに、派が分かれるの?単なる解釈の問題じゃないの?

プラトテレス>エヴェレット解釈では、波束の収縮を仮定しないというのは、非常に重要なことなんだ。少ない仮定で同じ現象を説明できるという点でも優れているといえるかもしれない。

ソフィー>結果が違う面はないの?

プラトテレス>一般相対論のように時空にについて、研究するとき、コペンハーゲン解釈は深刻な問題を抱えることになる。どちらが、真実かと言う問題ではなく、有用性においてコペンハーゲン解釈は問題があるんだ。

数々の矛盾を抱えつつも、「それでもコペンハーゲン解釈は有用だ。科学におい意味があるのは観測事実だけなのだ。」と言ってきたのに、有用性の範囲が限定されたってことだ。

ここで重要な関係図を整理するよ。

 

依拠している理論

世界観

コペンハーゲン解釈

相補性

不確定性原理

 

全体論

エヴェレット解釈

シュレディンガー方程式のみ

還元主義

 

ソフィー>ああっ!わかったわ。「これからは量子論、こらからは量子論!量子論は、全体論だから、ホーリズムが世界観として正しいのだ」といっていた人達の根拠がまったく崩れる。「量子論=全体論」だけだと思いこんでいたのが「量子論=還元主義」でもありえてしまう。

プラトテレス>そう、「量子論」と言う1つの言葉の上には、世界観を語ることは決してできない。

語るなら「コペンハーゲン解釈」か「エヴェレット解釈」のどちらの前提に立つかをハッキリさせないといけない。

ソフィー>そういえば、アインシュタインは、量子論と対立したんじゃなくて、コペンハーゲン派と対立したのよね。アインシュタインとエヴェレットが論争したらどうなったのかしらね。

プラトテレス>「歴史は仮定できない」という言葉があるけど、もしアインシュタインがあと2年長生きしてエヴェレットの論文を読んでいたら、きっと決定論的な量子力学に賛同していただろうと思うよ。

ソフィー>それは、別のパラレル・ワールドで実現しているかもしれないわね。

ところで多世界解釈によれば、超ヒモ理論大統一理論も修正しなきゃいけないんじゃないの?

プラトテレス>それは、あと何回か後に教えてあげよう。

今日のところは相補性不確定性原理も完全ではなかったことを覚えておいてもらえればいい。 

 

*エヴェレット解釈の強力な証拠→影の光子

 

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引用:エヴェレットの多世界解釈Toshifumi Sakaguchi, Ph.D.:http://homepage2.nifty.com/qm/index_jap.html

171「シュレディンガーの猫がいっぱい」 「多世界解釈」が開く量子力学の新しい世界観 和田純夫 1998 年 河出書房出版

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