トポロジー Topology

出典:エンカルタ

 

位相幾何学ともいう。幾何図形のある種の性質を研究する幾何学の一分野。英語では、ゴムの帯の幾何(rubber-band geometry)ともいう。

空間内の幾何図形の性質のうち、まげても、ねじっても、ひきのばしても、そのほかどのように変形しても不変にたもたれるのはどのようなものであるかを研究する。ただし、ちぎったり、ちがう点をいっしょにする、などのことはしないことが前提である。

幾何学というのは、絶対的な位置関係や、距離、平行などということを問題にするが、これに対して、トポロジーでは、相対的な位置関係やおおまかな形というものをあつかう。

たとえば、円は平面をその内部と外部という2つの領域にわける。円の外の点は、内側の点と、連続した線で、円周に交わることなしに結ぶことはできない。この平面をまげたりねじったりすれば、平面は平らでなくなるし、なめらかでもなくなるかもしれない。そして円はまがりくねった曲線になることであろう。しかしながら円の、この円がのっている面をその内側と外側にわけているという性質にかわりはない。平面上の直線や、線分の長さ、角度などは、平面をねじまげてしまえば、明らかに保存されない性質である。

初期のトポロジー

もっとも初期のいわゆるトポロジーの問題は、「ケーニヒスベルクの橋渡し」の問題である。図1にあるように、プレーゲル川に7つの橋がかかっていて、2つの島を両岸と結んでいる。同じ橋は2度渡らずにこの7つの橋を全部渡ることができるか。これが「ケーニヒスベルクの橋渡し」の問題である。

スイスの数学者オイラーは、これは次の問題と同じことになることをしめした。ペンを紙から離さず、どの線も2本かさなることなく、図2の線図を書くことができるか。

彼は、このことは不可能であることをしめした。

オイラーはさらに、図3のような連結した、つまり離れた部分のない線図を、一筆で、同じ辺を2度とおることなく書くためには、頂点、すなわち黒丸の点のどれもが偶点であるか、奇点があるとしても2個だけであることをしめした。ここで、1つの頂点が偶点であるというのは、そこからでている線分の個数が偶数個であること、奇点であるというのは、それが奇数個であることをいう。

2の場合は4個の頂点が奇点であるから、これは一筆では書けない。図3の場合は頂点のうちに奇点はないから、同じ辺を2度とおることなく、一筆で書ける。

1847年に、ドイツの数学者リスティングは、彼の著書の中ではじめてトポロジーという言葉をつかい、その研究で、奇点の頂点が2n個である線グラフは、ちょうどn回の操作で書くことができることをしめした。各回はいずれも奇点からはじめる。


今日のトポロジー

トポロジーは、現代数学の中で活発に研究がすすめられている分野である。最近解決されためざましい問題は、ふつうの地図を、国境を接する国はかならずちがう色でぬることにした場合、何色が必要かというものである。

1976年に、アペルとハーケンは、コンピューターをつかって、どんな地図であっても、また国の大小や数がどうであっても、4色あればじゅうぶんぬりわけることが可能なことを証明した。これを「4色問題」とよぶ。

組み紐の理論は、未解決の問題の多いトポロジーの分野である。組み紐というのは、3次元空間内におかれた、図4a4b4cのように、1本のゴム紐のようなものでつくった、2重点のない、つまり結び目のない曲線のことである。これらは、ねじったり、ひきのばしたり、そのほか空間内で変形することは自由であるが、ひきさいてはいけない。

このような条件のもとで、1つの組み紐から他の組み紐に変形できるとき、その2つの組み紐は同等であるという。図では、4b4cは同等であるが、4a4bは同等でない。しかし、今のところ、同等でない組み紐をすべて区別できる識別の基準は、みいだされていない。


幾何図形や点集合は、一方から他方へ、どちら向きにも連続な変換でうつることができるとき、同相であるという。同相か同相でないかを区別できる基準をもとめることも、特別な場合をのぞいて、未解決の問題である。

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