複雑系

サンタフェ研究所

生命・進化から経済・産業・企業まで、これこそ21世紀の科学の基礎となるだろう。

しかし英知の結集はときには無知さえ生むのである。

式ではこうなる。では自然界では?

定義 

複雑なものを単純化せずに受け入れる。細かく分断しても単純にならないこと。

予測と原因

 還元主義は完成物からそれを要素分解していく、ダウンの発想であるが、逆に要素より全体を把握できるか(未来を予測)できるかを問うアップの発想も必要である。

この研究は、現在では複雑系として、要素よりの予測をしても結果を推論することは不可能であるという結論をだしており、したがって結果から原因を予測することも推論にすぎないとしている。数学的にはカタストロフィーフラクタルカオス、などに支えられ(ファジーやニューロもそこから派生したものである。)物理学、生物学、経済、社会の分野に広く応用しよとしている。

複雑系からの7つの知

1)全体性の複雑化すると新しい性質を獲得する

H2Oが集まるを水という性質を持つ、脳細胞があつまると知恵を生む。

還元的分析の限界は、すでに明らかだが、一見聞こえの良い「総合」の手法もまた分析を前提としているものがあり、各界で限界に達している。例えば総合大学は、単なる要素を単純に合わせただけの悪い例で、真に学際的な知恵を生み出せない。

そこで必要ななのが「分析」と「要素総合」を超える「全包括的な知」が必要になるのである。

いままで全包括的知は単なるメタファーで要素還元主義のような具体的分析手法がなかったといわれているが、「複雑系の知」によって具体的方法が登場したのである。

2)創発性の知:個の自発性が全体の秩序を生み出す

鳥の群の挙動は複雑に見えるが、一羽一羽の鳥に簡単な行動基準を与えるだけで、その挙動をシミュレーション(boid)できる。

近くの鳥が数多くいる方向に向かって飛ぶ

近くにいる鳥達と飛行の早さと方向を合わせる

近くにいる鳥や物体に近づきすぎたら離れる

このように個の自発的規則性が全体の秩序や構造全体を形成することを創発性という。

3)共鳴場の知:共鳴が自己組織化を促す

散逸構造論は自己組織化の起こる3つの基本条件を明らかにした。

@外部との開放性−外部とのエネルギーの交換があること。エントロピーを放出できること。

A非平衡な状態−

Bポジティブ・フィードバックの存在−自己触媒プロセスの存在

 

4)共鳴力の知:ミクロのゆらぎがマクロの大勢を支配する

カオス理論で説明される。つまり初期のわずかな違いが結論を大きく変えうるということである。

5)共進化の知:部分と全体は共進化する

動的なプロセスの中で部分と全体はお互いに影響を与えながら、ともに進化していく。

この概念を理解するにはガイア理論を参照するといいだろう。

6)超進化の知:進化のプロセスも進化する

宇宙創世の段階でエネルギーの進化があった。

やがて科学的進化を経て散逸構造的段階を経て生命の創発が行われる。

われわれの段階になる進化は遺伝子という形で行われる。

新しく出現したきたレベルで、進化を支配する法則も進化してきているのである。

 

7)一回性の知:進化の未来は予測できない

@非線形性

Aプロセスの進化-進化のプロセスも進化する

この一瞬は今しかないのである。

グローバルシンクロナイゼーション

コンピューターネットワークの

ジップの法則

これはもしかしたら知の法則といえるかもしれない。

我々が使用している言葉を頻度順にグラフかすると次のような線形を表してくる。これは文学作品でも、ニュースの言語でもかわらない。

自由意志によって言葉を使っていると思っているけど、こうした法則が潜んでいるのだ。

文法につても同じことがいえる。



ラプラスの悪魔

ラプラスはニュートン力学の集大成をとして「天体力学」という5冊の大著を記した人だ。ここでは宇宙のすべての物質の初期位置と初速度がわかっていればすべては予測できるということが述べられていて、未来を人の手でどうすることもできないんだとされている。それだから「悪魔」という。

これを最初に打ち破ったのがハイゼンベルグの「不確定性原理」だ。一言でいうと初期状態は決定できないということ。それ故「不確定性理論」でななく「原理」と言われてる。

でも初期状態が少しぐらいちがったって、少ししか違わない結論がでるなら、やっぱり宇宙誕生の瞬間に我々の未来は決定されていたことになる。

でもここにカオスが現れて、初期状態が少し違うと、全くちがう結論がでることが証明されてしまった。これで決定論的世界像は完全に打ち破られ、「ラプラス悪魔」は退治されたってわけだ。

でもカオスはメチャクチャな混沌というわけではない。ローレンツアトラクターをある規則でプロットしていくとちゃんと規則的な動きが見えてくる。だからカオスといっても何らかの法則性はあるんだ、ランダムとはまた別のものだ。

チャレンジすれば、誰にもどんなチャンスがある。そうしないと希望だろうが絶望だろうとびっくりするような驚きや、楽しみには出会えないよ。

法則なし

現実世界のすべての真理はある規則の集まりから導出される論理的帰結である。本当だろうか

パラドックスの力

チューリングマシーン

AI肯定論

トップダウン型:

人間知性を複製することは全くアーキテクトが違うコンピューターというハードウェアでも、知識のルールさえ抽出できれば、実現できると考える。キーワードは表現とルール。思考のルールの探求を探求していた。

チェスゲームなど限定された範囲では成果をあげることができたが、すぐに人間の日常はこのような限定範囲にないことが明らかになった。

なぜなら、たいていの人間は「暗黙知」という莫大な背景知識をもっていて、これが特定ルールに影響を及ぼしていることが明らかになったからである。

ボトムアップ型:

脳の物理的構造が、我々の認知能力を作り出しているとする考えである。

脳の100億ものニューロンはシナプスによってネットワーク構造をつくりだしている。このシナプスの張り方を返ることによって脳自体をリプログラムする仕組みになっている。

AI否定論

AI賛同者は心理学者、数学者を中心に展開したが、反対論は哲学者たちによって展開された。そうした反論は現象学か反行動主義かゲーテルの定理のいずれかに基づいている。

現象学:哲学者ドレイファスこれはトップダウン派に対しての反論である。

自動車を運転するのに初心者はどのスピードになったらギヤをどうするかなのいろいろ考えないと走れない。ふつうのドライバーはそのそれらの判断を素早く処置することができる。プロのドライバーとなると、もはや直感的理解によってのみ疾走している。

これが意味するのは知性と熟練の技は単に計算的合理性以上のものである。

反行動主義:1980年サールにより発表

中国語の部屋:中国語を全く知らない人に中国語の辞書を持たせてある部屋に閉じこめてるとする。その部屋に外部から中国語のカードが差し入れられ、中の人は辞書を引き、その回答を外部にカードにして差し出すとしよう。

このときに外部からは部屋の中の人は、中国語を理解しているように見えるが、実際にはそうではないはないのである。

ゲーテルの定理:1961年哲学者ジョン・ルカスにより発表

彼はゲーテルの結果に訴える。我々人間には真であると見なせるのに、機械には証明できない算術的結果が存在するのだから、人間の精神はどんな機械の能力をもしのぐものであるにちがいない。

1989年理論物理学者ロジャー・ペンローズは「皇帝の新しい心」のなかで同様の立場を取っている。

人工生命:1990年トム・レイ、ティエラ実験

簡単なルールによる電子生態系であったが時間がたつにつれて驚くべき複雑な結果をうみだした。

これは原子のスープから

ティエラの実験結果導き出された答えは、進化の過程は特定の物質から独立したもので、生物のような炭素系生物のルールは、プログラムというメモリのなかでもたやすく起こりうるということである。

この進化論的実験結果をゲーデルは肯定している。

つまり、人間知性と等しい機械が作れるかもしれないとしている。

しかしゲーデルはそのような機械が存在しても、我々はそれを理解できないとした。

知性は構築するものではなく育てるもの。

もし人間と同じと認められる知識生命体を作り出したとしたら、ただちに人権の問題に至るだろう。

還元不能性

 

複雑なシステムはより単純な部分へと分解することで理解できる。本当だろうか

従来の科学ではどんどん部分に分解して、これ以上分解できないところまでいくともうそれだけで、その全体てが解ったつもりになっていた。部分を知り尽くしたも全体とは全く別のものなのだ。これはたとえ厳密に数式で表現しても基本的考察が間違っていては、意味がないということになる。

創発性

ライフゲーム:簡単なルールから無限の複雑性が生まれる

そのセルがオンの時:

 隣接のセルのうち2個か3個がオンなら、中心のセルは次の世代はオンになる。

それ以外の場合、セルはオフとなる。

世代1

 

 

 

 

 

 

世代2

 

 

 

 

×

 

 

 

 

 

 

そのセルがオフの時:

 隣接するセルのうち3個がオンなら、次の世代にオン

 それ以外のなら次の時刻にもオフ

このゲームの興味は最終的に最初の配列と同じ配列が作り出せるかどうかということである。

1970年のこのプログラムをマーティン・ガードナーが発表したとき、

オンのセルが無限に拡大するパターンはないだろうとして、懸賞金まで賭けたのである。

しかしグライダーと呼ばれる循環パターンはみつけだされた。

最初のルールが単純だからといって結果も単純とは限らないんだ。

こんなふうに部分は単純なのに全体としてはきわめて複雑な振る舞いをすることを創発性という

 

単純複雑性

 驚きの科学の創造について

Xは、非Xではないの証明式

1世紀以上昔に数学者、論理学者のジョージ・ブールの論理関数の発見により証明された。

「X2乗=X」を因数分解すると「X(1―X)=0(空)」

限定合理性

つまりわれわれは最適な解にもとずいて意識を形成しているのではない。

コンピューターに最適な計算以外のこのができるだろうか?

ナッシュ均衡

一回限りゲームでは両者裏切り

囚人のジレンマ

計算複雑性の理論

ナッシュ均衡は計算できない。

メカニズムデザイン論

うそをついても騙されない仕組み

応用分野としてオークション理論がある。入札価格の2番めが落札されるとした場合、それぞれがいろいろな戦略をとり、ナッシュ均衡に落ち着く。これは真の価値が創造される。

補完性

制度は現状維持に陥りやすい

実験経済学

経済学でも実験ができる。経済学では、物理学のような制御された環境がなく、理論に再現性がないことが許されていた。しかし最近は実際の人間を被験者にして実験室の中に経済理論に必要な環境を設計する。

しかしこれは閉じられた実験であり、これからは世界ネットワークでの実験を期待したい。

人工市場

コンピューター上の人間的仮想取り引き

それぞれの予測、賭け、出し抜きなど人間的な市場をつくる。

遺伝子ネットワーク

遺伝子を単なるスイッチと見立てて、はたしてどこからく秩序はくるのかという問いに耽った。抑えようにもほとんど抑えられなかった。

「もしそれぞれの遺伝子が命令をだしていたらそれは混沌の状態になる。」

「かといって一つの遺伝子が他の全てを制御していては単純になりすぎる。」

ソフィーはいくつかの遺伝子が他のいくつかの遺伝子をコントロールしていたらどうなるかという着想にとりこまれた。サーバー遺伝子をクライアント遺伝子からなる遺伝子ネットワークモデルだ。最初ソフィーは計算を簡単にするために遺伝子一個につきかならず2個の入力があるようなネットワークを考えた。

原子のスープからの新仮説

DNAが組上がるのに、偶然にたよっていたのでは宇宙の年齢より時間がかかる。誰が挑んでも同じ結論がでる。複雑系の見解は、最初の分子こそは偶然であったが、その分子は触媒作用があるものであったとされる。そしてこの触媒は連続の後にループを閉じるように最初の分子生成にたどりつく。つまり原子のスープの条件さえそろっていれば、ランダムな偶然を待つ必要などまったくなかったと言うのである。スープの化合物は首尾一貫した自己強化力のある反応の網を形成し得たかもしれない。秩序は分子のカオスから自然に生まれ、一個の成長するシステムとしてのその姿を現す。

心の創出

思考と学習は脳の中の同じ実態の2つの異なった側面でしかないという信念であった。

スタンフォード大学の人工知能グループは「エキスパートシステム」からの研究を進めていた。これは例えばテレビの故障個所を特定するような1ステップづつの積み重ねの知識ルールをそれぞれのデーターベースにセットするといったものだった。しかし、これは刺激→反応型の情報に対しては有効なだけのものであった。

もしシステムがあらかじめ何をなすべきかプログラムされたいたらそれはそれはプログラマーの知識であり、意識ではない。そんなものを人工知能とよぶのは欺瞞である。


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「複雑系」 ミッシェル・ワールドロップ COMPLEXITY M.Mitchell Waldrop 1992 年 (訳: 田中三彦+遠山峻征 1996 年) 新潮社 複雑系―生命現象から政治、経済までを統合する知の革命

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