科学哲学

 

 

 科学の本質的限界や欠陥、構造や境界についての基礎づけをする学問。

たびたび倫理学と混同され、生命倫理の問題や科学者の行動規範をこの分野で問題にすることがあるが、科学哲学の知的範疇で論ずるのは分野違い。

歴史

科学哲学はフランシス・ベイコン(〜1626)の経験科学によって始まった。

観察と実験による経験によって、検証されないものは知ではないとしたのである。

そして中世スコラが600年もさまよっていた哲学の行き詰まりの問題の根底はここにあるとしたのである。

この経験主義は実はアリストテレスから始まる。

彼は観察によって得られる事実は、理論よりも上だといっている。そして古人の理論と自分の理論をあらためて自然に向けて検証しなおした。

こうしたアリストテレスとベイコン両者の手法の核は仮説=検証の主張にある。

そして観察と実験による検証の差も認めていた。

観察には無限のパラメーターがあり、実験にはそのとき科学者が関心のあるパラメーターしか採用しないのに気がついていたのである。

この差を縮めたのが、膨大なパラメーターと計算を可能にする、コンピューター・シミュレーションによる「虚験」である。

これは、複雑系の科学の原理でもある。

 

 

科学的対話

 

アメリカの哲学者ジョージ・ゲイルが科学を「クックブック」(料理本)つまり作り方だけがかいてあってそうする理由が書いてない本と「説明のための科学」を分けた。

ギルバート・ライルは「心の概念」で「xxのようになっている」と「xxのようなっているわけを知っている」とでは大きな差があることを指摘した。

 

ゲイルとライルはともに科学は2つの段階が区別されるとしたのである。

 

やがて科学は3段階に区別される。

すなわち記述、一般化する帰納、観察による検証

この考え方が19世紀末まで科学者と哲学者の両方を支配している。

 しかしこれはヒュームによって深刻な問題を突きつけられる。

一般論による手法が正しいか否かを一般論自体では証明が循環して不可能であるとしたのである。帰納は数学のような演鐸的な手法のように確実ではないのである。

 この逆説を解いたのはホパーだった。1930年にホパーは科学の言明と科学を超えるメタフィジックスの言明を区別した。そして帰納の限界を示した。

発展の背景 

20世紀に入りユークリッド幾何学とニュートン力学に支えられた物理が崩壊した。その要因は下記の2分野からによる。

数学の分野から:非ユークリッド幾何学と集合論のパラドックスの成立、不完全性定理の証明

物理の分野から:相対性理論と量子力学の成立、その両者の対立

 

この2分野は古典力学の崩壊をもたらしたが、確固とした新しい基盤をなにももたらさなかった。つまり科学は基盤を失ったのである。

やがてこの危機を克服することが科学哲学にも課せられるようになり、1920年代末から認識論、論理学などと融合しウィーン学団により<論理実証主義運動>を生み出した。

しかし哲学の科学化という彼らのアプローチは現在では功罪相半ばとされる。

発展

現代の科学哲学では、論理主義の影響を抜け、下記の3人が主論となって展開している。

 

1)ホパー<批判的合理主義>

2)クワイン<知識のネットワーク理論>

3)クーン<パラダイム論>

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