1970年

GAIA仮説

ラブロック

GAIAが生まれた日

ラブロック>最初は僕すら自分自身の仮説を真剣に取り上げなかった。でも今は違う。

 地球にはなにか奇妙なところがある。いや、奇妙なところがやたらとある、というのが本当だろう。それらを総合すると宇宙の変わり者、宇宙のあらゆる法則の例外的惑星という像が浮かび上がってくる。

 熱力学の法則に従えば、地球はとっくに平衡状態に達しているべきであり、地球ほど古ければ表面は高温度の塩水におおわれ、二酸化炭素が大部分を占め、沸騰点に近い温度の世界になっていて当然。とっくに生命は絶滅していてもおかしくない。酸素と窒素の爆発性のふたつの気体も結合もせず、バランスをたもっているのも奇跡的だ。

 矛盾は前から見えてはいた。しかし、あまりに大きく立ちはだかりあまりに明々白々としていたため、目に入り難いものがあるが、これもそういう類のことであったらしい。一九六九年までそれには名前さえ与えられてなかった。まったくものを見る能力は空気が澄んでいるかどうかより、心が澄んでいるかどうかにかかっていると思い知らされる。

 その年J・E・ラブロックがこんな指摘をした。この地球の大気や海の塩分の安定は偶然ではなく生命が自らのために創造し維持しているというのである。この地球上の微生物から植物、高等生命体にいたるまで、ありとあらゆる生命が、いちがんとなって、地球環境の保つために働いているというのだ。

 彼は、地球を一つの生きた生命体としてとらえそれを「GAIA」と名付けた。操縦士も目的もなく永遠に太陽の内軌道を巡り続ける狂った宇宙船という気の滅入る地球像に代わる生物的なイメージとして地球をとらえたのだ。

GAIAは私達が意識して始めて誕生した最も巨大な生命体といえる。

GAIAの発見

ラブロックは、NASAで行われた火星の生命探査計画に参加し、生命探査の手法を確立した。

それはどんな形であれ生命体が物質やエネルギーを取り入れて排出をするというシステムをもつとすれば、その環境には検証可能な痕跡が残る事になる。

逆に生命の存在しない惑星の場合は、大気、海、土壌などすべてが化学的平衡状態になる。

この実際の火星は化学的平衡上であることがガス・クロマトグラフィーで検出されており、他の観測でも生命の存在は見られなかった。

さて問題はこれからである。この結論をだした後、火星のデーターを地球と比較してみたのだ。
(地球は金星と火星の間にあるから比較計算がしやすいのだ)

ガス

惑星

 

金星

生命無き地球

火星

現在の地球

二酸化炭素

98%

98%

95%

0.03%

窒素

1.9%

1.9%

2.7%

79%

酸素

微量

微量

0.13%

21%

アルゴン

0.1%

0.1%

2%

1%

表面温度

477度

290±50度

−53度

13度

気圧(バール)

90

60

64

生命あふれる地球が火星のデータとちがうのは当然であるが、問題は生命誕生の40億年前からこのデーターが保ち続けられているということである。

それは何によって制御されているのか?この疑問に対して唯一の可能な解釈は「地球は生きている」というものである。

とうぜん一個の生物を指すものではなく、地球上の全生命が現在の環境を一定に保つように一丸となったフィードバック・ループを持った、ホメオスタシスをなしている生命群という意味である。

GAIA仮説

 全ての生物系というのは自分で自分の体調を物理的、化学的にコントロールする力がある。これをホメオスタシスといい、生物学の用語で、ふつう、「恒常牲」と訳されている.

地球の数一〇億年も安定した、大気の酸素量、海水の量や塩分濃度は、生命の総体により生命の総体のためにホメオスタシスが機能されているとし、地球というものを一つの生命体としてとらえ、その生命にGAIAと名付けた。 彼のGAIA仮説がすぐれているのは、宇宙の創世から、生命の誕生までが、首尾一貫して説かれているところにある。

地球起源(双子の太陽説)

太陽は今は一つだが、もとは双子の星であったというのがこの説の前提だ。これは、宇宙物理学者のホイルが以前から唱えているが、日本では糸川英夫などがいる。 あるとき、その一つが終焉をむかえ爆発し、その飛び散った原子が残された太陽の引力で集まり、徐々に噴まったといのが双子説の概略である。 GAIA仮説がユニークなのは、そうして飛び散った物質が、地球へと囲まっていく中で、生命が発生したのだとし、その可能性を具体的に示しているところである。

生命起源説

生命の起源説には2大分類として地球での発生説と宇宙飛来説がある。私は、宇宙飛来説を唱えているのは、はんの一部の学者で、定説は地球での発生説であると思っていた。 最近知ったのだが、実は、生物学者や物理学者をふくめ、宇宙飛来説はかなり古い時代から定説とされていて、今でもこの説を唱える人が圧倒的に多い。GAIAが発表当時異端の仮説とされたのは、生命が地球で誕生したとしている点で、かの「ネイチヤー」から「科学的でない」といって掲載を拒否されている。

GAIAのフィードバック・ループ

大気

 酸素二一%、窒素七九%というのが地球の大気の組成比である。空気中の酸素が二二%になったとする。たった一%増えたにすぎない。どうってことはないと思いたいところだが、そうはいかない。酸素が一%増えただけで、山火事なる危険性は七〇%も増加する、と試算されている。 二五%になるともう最悪で、雷で、すぐに火事が起こり、地上は全て焼け野原となってしまう。反対に酸素が減ったらどうなのか?これも同じで、酸素が二〇%をきると現存の陸上生物はすべて、生きていけないだろうといわれている。 いまの大気成分の濃度はたまたまそうなったわけではない。なるべくしてなったそれ以外にない、絶対のバランスなのだ。 化石からでも古代の大気は分析できる。何十億年という間、この比率は変わっていないのである。十億年前の太陽のエネルギーは今と大きく変化しているのに地球の大気の組成はまったく変化していないのである。さらにあるかないかわからないほど微量だが、アンモニアやメタン、アルゴンなどといった希少ガスの組成もぜんぜん変わってない。まさにミステリーだ。 こうしたコントロールを解きあかす科学的アプローチはGAIA仮説によって始めてなされた。

メタンガス

 この安定に重要な役割を担うのが、微生物が生産しているメタンガスだ。この地球上で年間に生産されている量は一〇億トンにもおよぶ。 メタンガスの分子(CH4)は、炭素(C)一つと水素(H)4つからなる。炭素は重いが、水素は非常に軽い原子である。いわば、メタンは炭素に四つの風船を結び付けたような格好をしていると想像してもらいたい。この四つの風船によってメタンは発生後どんどん空中に上がっていくが、そのコースは二つにコースを辿る。 一つは成層圏まで、上り詰めるコースである。このコースを辿ったメタンは酸化され、水と炭酸ガスになる。そして水はさらに太陽エネルギーによって酸素と水素になる。水素はかるいので、宇宙の彼方に飛んで行ってしまうが、重い酸素は下におちてきて、大気に混じり込む。そして地球の酸素は増加する。 二つめのコースは対流圏にとどまる。なぜとどまるかというと、酸素と結合子や水性室のため、故化され、メチル基に変わってしまうのである。(メチルは不安定な物質である為、その後わずか一秒で分解される) つまり成層圏まで行ったのとは反対に酸素を消費しているのである。 これが、酸素二一%の調整メカニズムの一端である。実に巧妙な仕組みである。しかもこのメタンガスは嫌気性のミクロ・フローラ(バクテリア)によって、ただやみくもにつくられているのではなく大気中の酸素濃度、太陽エネルギーの変化などによって即座にその生産量を調整している。

亜酸化窒素(NO) 窒素(N)+故索(O)

 やはり微生物によってつくりだされその量は年間に一〇〇〜二〇〇メガトンになるという。やはり二つのコースをとり大気圏内酸素と結合するケースと、成層圏にいったものは、酸素と結合して二酸化窒素に変わるのである。ここで重要なのは酸素のほとんどない成層圏で二酸化窒素に変わるときに何から酸素を得ているかということだ。 それは、オゾンからであるオゾンは酸素が三つ集まったものだが、そのうちの一つの原子をいただくのである。 当然オゾンは少なくなる。最近オゾン破壊が問題となっているが、自然のメカニズムは人間のそれを問題としないほど何一〇億年にわたり大規模に破壊しつづけている。もしこの破壊はなかったらオゾンが増えすぎ、太陽光は地上にとどかなくなってしまう。そして、この破壊される量も微生物自身によって調節されている。

アンモニア

 微生物によって年間じつに一〇〇〇メガトンという莫大な量が生産されている。こんなに大量につくられているといのにアンモニアもまた大気中に存在する量は微少だ。どこに消えてしまうかというと、酸性物質と中和結合して、消費されている。環境問題はフロンと並んで、酸性雨が大きくクローズアップされているが、人間が石油を燃やしていることが最大の原因だが、自然界よりも火山活動や、死骸によってもつくりだされている。

そしてこの自然界からの酸の総量は、生物系が作り出すアンモニアの総量とちょうど見合い雨をph8に保たれるようにしている。

 中性はph7だから、ph8はややアルカリ性である。

 いままで説明したものは生命活動に間接的に働きかけるものであった。ではその前提である、生物の生存、生命がその機能を続けていくことに対して、この地球の大気はどのような役目をしているだろうか?

 その、生命活動に対する直接的な働きをするのが、炭酸ガス(二酸化炭素)と水(水蒸気)である

酸素の供給源は一般にアマゾンの熱帯帯雨林が半分以上を供給しているときかされているが、GAIA説のなかでは、海中の珪草がアマゾンよりはるかに酸素の供給量がおおいと計算されている。そしてここで警告を一つなげかけている、「目に見える、森林は保護しようという活動が働いているが、見えない海中の珪草は保護という人の感性に入らない。」

宇宙研究の副産物

宇宙研究の特筆すべき副産物は新しいテクノロジーではない。その本当の成果は宇宙からこの美しい瑠璃色の惑星を実感できたことだろう。そしてこのことがその後の大きな洞察をもたらしたのだ。不断の生命記録をたどると時という偉大な酸化者の手から逃れ。海洋は一度として沸騰したり凍ったりせず僕らを見守っていてくれたことがわかる。酸素バランス、気温、湿度すらコントロールする巨大なサイバネティックス・システムが働いているのだ。世界は生きているし生命が今の世界をこの強固はグリーンハウスは輝ける進化を生み出したが、その成果は巨大な破壊力をもつ集団を作り出した。唯一の汚染それは人間だったのか?大気圏ではなく、バイオスフィア(生命圏)こそ、まさしく我々の<生命維持システム>の名にふさわしい

GAIAからの洞察

地球全体が一つのホメオスタシスももったシステムであることをわかってもらったと思うが、地球および宇宙に対する世界感、宇宙感、生命感の一大転換が提示された。いわゆるGAIA仮説である。最近のテレビのニュースで放送されている世界の主だった問題は、自然が進む道と人間が考える道との相違の結果と考えていいだろう。にもかかわらず、私たちの社会はいまだに宗教的・民族的局地戦争に明け暮れ、互いの富の配分を巡って、経済戦争を果敢に押し進め、さらなる工業化、地球環境汚染はそのとどまるところを知らない。

何故そうなのか?

なぜ私たちはこの状況を知り得ても、新たな地球生命圏の再生への道を歩み得ないのだろうか?

おそらく人々にはヴィジョンが見えないからだと思う−この地球生命圏のその内に住むもののヴィジョンだ。つまり、人間とは何かという根源的ヴィジョンだ。いのちの海に生命宇宙に生けるものの可能性とその限界、人間なるものの宇宙的存在の意味とその宇宙的進化の姿が見えないのだ。

私たちが今しがみついている文明を唯一の価値、世界感として、人類やこの生命地球の問題を見てゆこうとするなら、そこにはおのずから限界があり、現代文明の枠を越えて自己と世界をみることはできない。

今日の環境破壊を回復していくには、まずわたしたち自身の内なる自然を回復してゆかねばならないのではないだろうか。

新しいGAIAの頭脳

GAIAは、一つの「散逸構造」または「自己組織化」をなしているといえる。

こうした視座に立つGAIA仮説は生命とは何かについて非常に興味ある問題が提起されてくる。

GAIAの人間原理

こうしたホメオスタシス機能をもった惑星に中で、認知フィードバックをもった人類の発生は何を意味するのかということです。

人類が二酸化炭素の量をコントロールして、氷河期を回避したり、その認知フィードバック能力で地球規模の危機を回避する事ができるなら、人類は地球のホメオスタシスをより安定化させる為に発明されたと言えるでしょう。GAIAの自己組織化の能動的に役割を果たせた時人類の存在意義があったと言えるのです。

地球にとって我々はガンであるのかどうかは、まだ結論がだされたわけではないのです。自覚があれば、今からでもGAIAの必要性に応じた、生き方をすることができるのです。

GAIA哲学:グローバル・ブレイン:地球を一つのシステムとしてとらえたGAIA伝説をさらに一歩進めて、生物的にとらえてみたい。GAIAをハードとソフトという切り口でとらえてみると、GAIA仮説は肉体(ハード)のみをとらえた考えであり、頭脳(ソフト)については触れられてはいないことが見えてくる。 国連、赤十字、グリーン・ピースなど国家間コミュニケーションのシステムは、この100年のうちに次々に創出されてきた。そこに幾らかのエゴィスティックな意志が働いていていたとしても、これほど瞬時の期間にネットワークが形成された事は現代が、今新しい臨界量に達している事を示す。

 100匹目の猿が臨月を迎えている。 全地球規模のコミュニケーションの能力が高まり、地球の脳(グローバル・ブレイン)が活動し始めている。

90年代ガイア仮説が複雑系とであう時ガイア理論となった。

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