*複雑系による科学革命Would-Be-Worlds1996年ジョン・L・キャスティ



第1章―バーチャルリアリティ
1:それはスーパー・サンデーから始まった
仮想世界をめぐる問題
シミュレートした世界と現実の世界の関係は
時間が経過するにつれて、その戦略を学習し修正できる能力をエージェントにあたえること
しかしその能力をどうエージェントの与えるかは問題
2:モデルを見極める
3:賢者の石
4:仮想世界への扉 
害虫に強い種をもし畑一面に蒔いてしまったらどうなるのか?
もっと強い害虫があらわれてどんなに強い種もすぐに浸食してしまう
どはどうしたらいいのか?
畑の80%だけ強い種を蒔いたらいいんだ。そうすると弱い害虫の世代交代が遅れて結局は収穫高が多くなる。
第2章―創造性豊かなプログラム
5:モデルそれとも本物?
L体系:それは生命か?
規則が生命になる:例え人工生命を作り出したとしても現実の世界との関係を考えるとそれは生命といえるか?
では逆に現実との関係を断ち切って、コンピューターが作り出す世界だけを世界としたらどうなるのか?
この場合シミュレーションしたもの自体が世界になる。コンピューターの内側にものにとって外側よりリアルな世界がそこにあるんだ
<ソフィー>そんな質問は無意味だわ。私達がコンピューターの中で暮らせるとでも言うの?
<プラトテレス>いや、すべての科学において外側と内側の
6:創世機械
チューリングマシーン:1935年は計算にとって記念すべき年となった。
対話マシーン:人と区別はつかない
7:電子そろばん
8:進化する芸術
チョムスキーの主張
チョムスキー:1957年「文法の構造」は言語学を一夜にしてつくりかえた。
人類の言語はすべて「不変文法」からなるというのである。この不変文法はあらゆる子供の心の中に生物学的に潜在している
9:シミュレーションのリアリズム
10:バブル、急騰、そして破産
第3章―意外性の科学
11:複雑系が残す指紋
ソフィーの部屋にはバウンサーがある
複雑系を生み出すのは次の5つの特徴が要因で、時にはいろいろミックスされる。
パラドックス    
不安定性 カオス、カタストロフィー  
計算不能性    
連結性    
創発性    
<プラトテレス>不安定性には2種類あるカオスとカタストロフィーが
<ソフィー>カオスとカタストロフィーはどちらが不安定なの?
<プラトテレス>カタストロフィーのほうだね。カオスは初期値に敏感に反応して予測不可能な結果をもたらすけどその可変範囲は特定できる。例えば天気予報がいくらはずれたって雨が晴れかのどちらかしかない。でもカタストロフィーはシステム全体の構造そのものが変わってしまうんだ。
<ソフィー>つまり「矢」でも降ってくると?
<プラトテレス>そういうことだね。
12:パラドックスか不安定か?
13:予測と証明
超チューリングマシン:DNAコンピューター
それじゃあ、人の脳はチューリングマシンなの?
 
14:大切な関係:
ダーウィンは自己組織化をしらなかった
カウフマン・ネットワーク:大部分の学者は遺伝的調節を生化学的歩法で調べることで新たなパターンの出現を説明しようとしている
しかし、これとは対照的にカウフマンは遺伝子の制御活動をまねた相互作用ネットワークの形で、遺伝子の数理モデルを作り上げた。
動態系アトラクターとして自発的に生じる。
安定アトラクターと不安定アトラクターの微妙な相互関係
15:創発にみる法則性
ジップの法則:猿がメチャクチャにタイプを打ってもジップの法則になるに従う言語が誕生することがマンデルブロー氏によって証明されている。
但し、この猿の言語においてメジアンとなる単語のランクは189万語に上る。つまり猿の言語は総語数の半分に達するまで膨大な量が必要となる。
英語の場合は一般で100語、文学作品でも500語にすぎない。
ジャンクDNA:
第4章―人工世界へ
16:ミクロな世界のマクロな反応
ソフィーは車の助手席にのって、繁華街にでかけることになっていた。
最近のカーナビゲーションは義務つけられていて、車に乗ったときに行き先をインプットするのだ。それが、中央のTRANSIMSに渡されてたちまちのうちに数時間先のリアルな交通量を計算して最適のルートをガイドしてくれている。
システムと自動車保険のシステムは連動していて、このルートの通りにドライブしていれば、万が一のことがあっても保険が非常に有利になるのだ。
もともとは環境保護局が排気ガス削減の為の交通システムシミュレーションから出発しているところが気に入っていた。
いまでは交通局に移管されて、刻々と一方通行の標識、信号のタイミングなどがコンとロールされ、昔のように渋滞に悩むことはなくなった。
データは橋の建設プロジェクトにまで活用されている。
また複数の地点を巡回する場合にはもっとも効果のある最短の時間で回る順序を提示してくるのだ。
夜タワーに上ってみると都市の車の点滅が全体として振る舞っているようになにか規則が現れているように見えてくるのだった。
システムがダウンしたときは、どこも渋滞になることが分かっているので、仕事以外の人は外出するのがイヤになるほどだった。
もちろん、気まぐれなドライブを楽しみたい人も中に入る
そういう人達も最初のうちはシステムをカットしていたのだが、システム2(追尾システム)だけはオンにしておいたほうが、気持ちよくドライブできるのだった。
さらに自分が直感的に選んだコースがシステムの選んだコースに知覚なっていることに気がついた。
 
17:生命は生きることをどう生きるか? 
ニューラルネットワークは究極のチューリングマシーンになる。
この事実の重要な点は非常に単純な構成要素での複雑な計算が実行できるということである。それは構成要素自身から起こるのではなく要素間の関係によってもたらされる点だ。
 
ティエラTERA:1990年1月4日史上初めて炭素によらない生命が誕生した。
ティエラはRNA世界の生物を電子化したものである。 
あいにく生物学は一つのサンプルしかない、しかし他の惑星からサンプルをもちかえることはまだできていない。しかし理論的には他の惑星に生命がいる可能性は否定できない。
ではその理論をシミュレーションしてみたらどうなるだろう、
 
18:コンピューターの中の世界
第5章―複雑系の回廊
19:モデルの教訓
20:現代版パスカルとフェルマー
何が限界をもたらすのか?
自然や社会についての疑問に対峙して人間の能力や知性に限界あるのだろうか?
少なくても今の我々のレベルでは無限の解決力をもっているとは言えない。
不完全性定理と不確定性原理
不確定性原理は量子論を構成する数学上の形式化がもたらした限界であって、それは現実世界の構造自体に固有の限界なのでなない。
タンパク質の折り畳みはスーパーコンピューターでも10の127乗年かかる。
 
「複雑系による科学革命」 ジョン・キャスティ Would-Be Worlds John L.Casti 1996 年 (訳: 中村和幸 1997 年) 講談社