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 =生命と人生の倫理(‘05)=(TV) 〔主任講師: 清水哲郎(東北大学大学院教授)〕 〔主任講師: 伊坂青司(神奈川大学教授)〕

全体のねらい 生命操作技術の発展に伴って新たに生じた倫理的諸問題を対象とする生命倫理学と、人生全体の中で医 療を位置づけつつその倫理を考える方向(ここでは「人生の倫理」と呼ぶ)との間を架橋しつつ、医療 者と患者・家族とが出会う医療現場における倫理の方向付けを目指す。生物学的生命と物語られるいの ち(人生)の間、また高度化した技術と日常的生活の間を行き来しつつ、諸問題を考えたい。
1 生物学的生命と 物語られるいのち 2 生命操作の技術と倫理(1) 生命の誕生をめぐって 3 生命操作の技術と倫理(2) 遺伝子の情報と操作 4 生命操作の技術と倫理(3) 脳死と臓器移植 5 生命操作の技術と倫理(4) 終末期と死の選択
6 個体としての人間 7 人間とその尊厳 8 個人はどこまで自由か 9 規範倫理学の諸理論 10 倫理原則
11 社会の中の個人 12 ケアという活動 13 相手の最善を目指す 14 合意を目指すコミュニケーション 15 全体のまとめ

 

回テーマ内容 執筆担当 講師名 (所属・職名) 放送担当 講師名 ( 所属・職 名)


生物学的生命と 物語られるいの ち

私たちが《いのち》について考え、語る際に、二つ の観点がある。身体に注目しつつ「生きている」と いう時に、注目している生命は、「生活し」「人生 を送って」いる私たちのいのちを支えている。この 二つの見方を説明し、本授業のタイトルの意味を提 示するとともに、以下の授業内容を説明する。 清水哲郎 (東北大学 大学院教 授) 清水哲郎 (東北大学 大学院教 授)

生命の2つの層に注目して講義を進める
身体の死と人格の死
精神の死 黄泉の国にいって 腐敗した死体を見てしまう
     
     
ポリフェリオウスの樹    
 
     
     
 

2 生命操作の技術 と倫理(1) 生命の誕生をめ ぐって

今回から4 回に亙って、生命操作技術の高度化に伴 って、新たなタイプの倫理的問題が起きてきた状況 と、それに対処すべく成立した生命倫理学について 概観する。今回はまず、人工授精や体外受精などの 生殖補助技術、およびクローン技術をめぐる倫理的 問題を考える。 伊坂青司 (神奈川大 学教授) 伊坂青司 (神奈川大 学教授)

     
     
     
  人工授精の余剰胚を利用してES細胞をとりだす それを医療に使用する。本人が何つ使われるか、インフォームドコンセントが必要。
体細胞クローン    
   
生殖細胞を使わない。老化が早い。癌の発生率も高い

 

生殖では、自己遺伝子は50%である。100%遺伝子が欲しいのは、願望以上の欲望である。

クローンは許されるか?作る側の権利より、作られる側の権利を考える必要がある。

未来を閉ざすものともいえる。

 

   

3 生命操作の技術 と倫理(2) 遺伝子の情報と 操作

 最先端の生命操作技術と目される遺伝子情報と操作 をテーマとして、それが医療に有効に使われる可能 性とともに、プライバシーについての新たな問題や、 出生前診断による妊娠中絶の問題などを、倫理的側 面から考える。 同上同上

    遺伝子情報のプライバシー
血友病以外は遺伝子によって病気は決定されない。

ガンや生活習慣病ですら、本人しだいである。

まして、人間性は、まったく関係ない。 アメリカでは、保険加入に遺伝子を提供させる。

雇用の差別も、結婚相手の身上調査

 

     
  出生前診断は、差別が起こりやすい。遺伝病に過度に神経質な社会は、標準外を廃することいなり、遺伝子の先細りになる。 種の多様性を保つ必要がある。

4 生命操作の技術 と倫理(3) 脳死と臓器移植

脳死と臓器移植についての現状を理解し、倫理的諸 側面を検討する。「脳死をもってヒトの死とする」 という理解の妥当性、臓器移植をめぐる提供側(ド ナー)、受け手側(レシピエント)のあり方等を検 討し、人間全体を見る立場から問題にアプローチす る。 同上同上

     
    人は心臓だけではなく、脳だけではなく、特権的なものでなない。
    脳死判定基準(竹内基準)
     

5 生命操作の技術 と倫理(4) 終末期と死の選 択

耐え難い苦痛や人間としての尊厳を理由に、自らの 死を選択する自己決定権の主張がされている。生死 のコントロール技術が進んだことによって、問題は 複雑になっている。そうした諸状況を概観し、終末 期における安楽死や尊厳死の選択を考える手掛かり を探る。 同上同上

     
進行性の癌の告知率:日本30%アメリカ100%

日本は家族主義、アメリカは個人主義

アメリカも以前は低かった。個人主義というよりインフォームドコンセントのによるところがおおきい 日本では、尊厳死は非常に限られている。安楽死となにが違うのか?
     
  患者本人の意思表示がなく医師が安楽死をさせた事件は、医師の有罪となったが、告知が無かったから。 宗教的には安楽死は罪と、とられたりするが、告知についての議論はない。

逆にそれは患者の意志表示がなく、苦痛な延命だけが行われるもの同罪とおもう。

死の準備ができていない。

  ホスピス  
リヴィング ウィル  生命の質を保ち尊厳死を迎える。身体と心の両方をケアする  
     
   
     

 
6 個体としての人 間

今回から3 回に亘って、前回までに見てきた生命倫 理の典型的諸問題の根本にある、《人間》をどう捉 えるかという問題を考える。今回は、《個体・個人》 がテーマであり「個体はどのようにして個体か?」 を、生物学的視点から、および個体史の視点から考 える。 清水哲郎 清水哲郎

     
  親が聴覚障害を望んでいて、

親が胚に聴覚障害を起こす薬を投与したら?当然問題。

しかし聴覚障害を起こす胚をえらんだら?

上段は同一個体

下段は別の個体

     
     

7 人間とその尊厳《人間》について、価値という面から考える。人格 と尊厳、人権、自律、QOL(quality of life;生の 質)、生命の価値、人生の価値等々について理解し た上で、「(いろいろなことが)できないよりでき たほうが良い」と「できなくても良い」という価値 観が並存する可能性を探る 同上同上

8 個人はどこまで 自由か 生物学的生命体としての個々人は互いに独立してい る。が、人生の物語を生きる者同士の生は互いに絡 み合い、浸透しあっている。そこで個人はできる限 り自由であるべきだとはいえ、「私の身体なんだか ら、どうしようと私の勝手だ!」と言い切れない事 情が生じる。この点を考える。 同上同上
9 規範倫理学の諸 理論 今回から3 回に亘って、生命と人生の倫理を考える 基礎となる諸理論を学ぶ。まず今回は、規範倫理学 のさまざまな概念や立場(義務論、目的論、結果主 義、功利主義、選好功利主義、状況倫理、徳倫理 等々)を概観する。 同上同上
10 倫理原則「いかにすべきか?」を考えるにあたって、倫理規 範を参照しながら考えるのが通常である。諸規範の 中でももっとも基礎となり、他の諸規範を支えてい るようなものを《倫理原則》と呼ぶ。今回は倫理原 則について、医療現場で医療従事者に課せられたも のを中心に考える。 同上同上
11 社会の中の個人《社会倫理》をテーマとする。構成員それぞれの福 祉のために、社会としてどのような体制をとるべき であるかといった問題の医療・福祉に関連する側面 を探る。人権、正義、共同体、自己決定、個人主義、 自由主義、共同体主義等の概念をとりあげる。 同上同上
12 ケアという活動今回以降は、人間同士が共同で進める活動としての 医療や福祉のあり方について、倫理面からの考察を する。まず、《ケア》という活動への哲学的アプロ ーチを試み、そこから医療・看護・福祉などに共通 して倫理的に押さえておくべき点について基礎的な ことを検討する 同上同上
2004/11/05 1116916.doc 3 回テーマ内容 執筆担当 講師名 (所属・職名) 放送担当 講師名 ( 所属・職 名)
13 相手の最善を目 指す 医療・福祉の活動においては、何をするかという意 思決定のプロセスが倫理的に重要である。今回はそ のプロセスの要の一つである「相手の最善を目指す」 検討について考え、利害のアセスメント(一般的お よび個別化した)、益と害の双方が見込まれる時に どうするか(二重結果論、均衡性論)といった問題 を検討する。 清水哲郎 清水哲郎
14 合意を目指すコ ミュニケーショ ン 医療等の現場における意思決定のプロセスにおける もう一つの要となる、当事者たちが合意を目指すコ ミュニケーションのあり方について考える。パター ナリズムを脱して共同の決定を目指す場合、インフ ォームド・コンセント、事前指示、リビングウィル といった事柄をどう理解したらよいかを検討する。 同上同上
15 全体のまとめ 医療現場の個別 事例に臨む 最終回は、全体のまとめとして、最後の3回で検討 したような倫理的視点から、生命操作技術を駆使し た医療における決定について振り返って考える。い くつかの事例を提示して、これまでの検討を活かし た検討を試みる。 同上同上