HOME 2005/01/18 1569317.doc 科目名宇宙からの情報('05). 1/3 =宇宙からの情報(‘05)=(TV 〔主任講師: 吉岡一男(放送大学助教授)〕 〔主任講師: 杉本大一郎( 放送大学教授)〕 全体のねらい 宇宙に関する科学は実証科学であるから、現実世界としての宇宙を対象とする。そのためには、宇宙と天体から微弱なシ グナルとしてもたらされる情報を、観測をとおして読み取らなければならない。それには広く物理系分野にわたる高度な技 術と科学が用いられる。情報を担ってくる電磁波や粒子は、最近ではあらゆる波長帯や特性にわたって観測され、それぞれ に固有な側面に対応して、広くかっ深く情報が取得される。この講義ではそれらに関する最新の手段と方法、それによって 得られた知見について、それぞれの最先端における研究者に論じてもらう。ここで取り上げられる天体現象が宇宙の進化と いう文脈において持つ位置と意味については、これと並行して開設される「進化する宇宙('05)」の講義を参照されたい。 回テーマ内容 執筆担当 講師名 (所属・職名) 放送担当 講師名 (所属・職名) 1 宇宙の観測 宇宙を観測する際に、どのように広い物理パラメターの範 囲と広いアスペクトから情報を得ようとしているか、また得 られているかについて概観する。またそれらの特質について 実験室科学の方法とも対比しながら論じ、この講義全体への 導入とする。 杉本大一郎 (放送大学 教授) 杉本大一郎 (放送大学 教授) 2 観測のエネルギー バンド 宇宙からの情報を得るために、可視光だけではなく、電波 からX線・ガンマ線に至る広範囲の電磁波が観測される。そ れは異なる波長が異なるエネルギーの光子に対応し、宇宙の 異なる側面を示しているからである。ここでは、それぞれの 波長の観測が宇宙のどのような側面について情報をもたらす かを、黒体放射の場合について解説する。 吉岡一男 (放送大学 助教授) 吉岡一男 (放送大学 助教授) 3 観測の分解能 宇宙の観測は、空間・時間・波長等のいろいろな分解能の もとで行なわれる。本章では、それぞれの分解能がどのよう な意味をもち、また、観測装置のどのような性能によって決 定されるかを解説する。さらに、分解能とSN比等との関係 についても述べる。 同上同上 4 光と赤外線で宇宙 を見る 可視光から赤外線で宇宙から情報を得るのに必要な基本的 な概念として、望遠鏡の集光力や分解能、赤道儀や経緯儀、 シーイングなど説明する。光の検出等について、眼視から写 真へ、さらに2次元半導体検出器への発展を振り返り、現在 の大型光学望遠鏡で使用されている最先端技術について、す ばる望遠鏡の例をふんだんに取り入れて解説する。 林正彦 (自然科学 研究機構 国立天文台 教授) 林正彦 (自然科学 研究機構 国立天文台 教授) 5 天体物理学の発展 星の色とスペクトル線など分光学的性質を述べ、スペクト ル分類、HR図などを解説する。続いて銀河の説明に入り、 ハッブルによる銀河の「発見」、銀河の分類、活動する銀河 について解説する。具体的な観測例をもとに、銀河の色、渦 巻と星の形成など、基本的事項を解説し、そこで新しい観測 技術が果たす役割を強調する。 同上同上 2005/01/18 1569317.doc 科目名宇宙からの情報('05). 2/3 回テーマ内容 執筆担当 講師名 (所属・職名) 放送担当 講師名 (所属・職名) 6 星と惑星系 星の物理的性質がその質量によって決まることから始め て、星の質量分布、最大質量、最小質量、褐色矮星について 説明し、観測の視点から重要となるパラメータについて検討 する。星と惑星系の形成に関するさまざまな現象とその観測 について紹介して解説し、最後に太陽系外惑星の探査に触れ る。 林正彦林正彦 7 宇宙の構造 ハーシェルの銀河系宇宙モデルから、銀河が遠方の星の集 団だと認識され、宇宙の大規模構造の発見に至るまでの、人 類の宇宙認識の発展について、すばる望遠鏡の成果を交えて 解説する。その際、それぞれの段階で新しい観測と観測技術 がもたらした役割を強調する。ハッブルによる宇宙膨張の発 見と、ビッグバン宇宙論への発展について解説し、最近の新 しい技術による超遠方銀河の探索から分かってきた成果を紹 介する。 同上同上
8 電波を見る宇宙: 電波による宇宙の観測が始まってから70 年が経過した。こ の間の電波の観測によって数多くの発見がなされ、宇宙の新 たな描像が明らかになり、認識が格段に深まった。この歴史 を振り返りながら、電波による観測の特長や、観測の原理に ついて解説する。 川辺良平 (自然科学 研究機構国 立天文台教 授) 川辺良平 (自然科学 研究機構国 立天文台教 授)
9 電波で探る宇宙の 爆発・活動現象: 電波の観測により、宇宙におけるさまざまな爆発現象、活 動的な現象が明らかにされ、ダイナミックな宇宙の姿が解明 されてきた。ビッグバン宇宙の証拠となる宇宙背景放射や、 巨大ブッラックホールの電波観測や、電波銀河、超新星残骸、 さらには、太陽活動などについて解説する。 同上同上
10 電波で探る星間物質: 星間物質の中でも低温ガス雲の構造や進化について概観す る。とくに、星や惑星の材料となる、塵や分子ガスからなる 低温の分子雲やその化学的な性質、分子雲の銀河系内部での 分布などについて得られている知見を述べる。このような知 見は高分解能による電波スペクトルの観測をとおして得られ たものであることを強調する。 同上同上
11 電波で探る天体の 形成史: 最近の電波観測により、星・惑星系の形成領域の観測や原 始銀河の観測が飛躍的に発展してきた。ここでは、電波観測 によって得られた天体形成の描像について解説する。このよ うに比較的密度の高いガス雲の内部までの観測は同位元素を 含む分子の電波スペクトル観測によって可能になった。 同上同上
12 X線で宇宙を見る: 可視光の千分の1 以下の波長のX線は、高いエネルギーを 持った粒子や1 千万度を超える高温の領域から放射される。 X線は地球大気に遮られるため、こうした高エネルギー天体 からのX線放射が発見されてから、まだ40 年間である。その 間のX線観測の歴史を観測技術の進歩とともに辿る。 國枝秀世 ( 名古屋大 学教授) 國枝秀世 ( 名古屋大 学教授) 2005/01/18 1569317.doc 科目名宇宙からの情報('05). 3/3 回テーマ内容 執筆担当 講師名 (所属・職名) 放送担当 講師名 (所属・職名)
13 X線で輝く激動す る宇宙T: X線で見た太陽は可視光では想像もできないもので、高温 のコロナが激しく吹き出すものである。一般の恒星でも超新 星爆発でできた高温ガスや、中性子星/ブラックホールに落 ちていくガスがX線で光り輝くことが知られてきた。われわ れの近傍にある天体で、X線というバンドからの観測によっ て初めて見えてきた激しい現象と、それを可能にした技術に ついて解説する。 國枝秀世國枝秀世
14 X線で輝く激動す る宇宙U: 銀河や銀河団などという大きいスケールの天体を考える。 個々の銀河ではその中心核にある巨大なブラックホールか ら、また銀河の集団では銀河間空間を埋める高温のガスから、 強烈なX線が放射されている。その観測ではX線による画像 を得ることが重要である。X線よりもエネルギーの高いガン マ線についても、きわめてエネルギーの大きい爆発現象が知 られており、これらについても言及する。 同上同上
15 光(電磁波)以外の 宇宙からの情報: 宇宙を知る手がかりは電磁波だけとは限らない。宇宙のど こかで加速された高エネルギーの粒子が地上にも降り注いで いる。また、物質とほとんど相互作用しないニュートリノを 直接に観測することも可能になってきた。ブラックホールが 生まれる時などに現れる。強い重力場の変化に伴う重力波に ついても、その観測を目ざした計画も紹介する。 同上同上