<<第十一部拡張生命>>
付属物たっぷりの生物
たぶん水晶のかけらとか道具とかちょっとしたことがきっかけだったのだろう最初の発明の石斧(ハンドアックス)からはじまって私達の体にはそれまでになかった付属物がつきまとってしまった。爪は刀身やミサイルで補強され、皮膚や髪はコートや傘といった一風変わった器官でそれぞれ補強されるにいたった。
何が起こったのかと言えば、人類は生物的な進化の制約から解き放たれ、代わりに全く別のもっと急激な進化の渦中に取り込まれたという事である。人間がシャベルで地面を掘っている姿を想像してみてるといい。シャベルの取っ手はまるで上腕骨の先の膨らみだ。木製の柄はつけたしの骨。その先についている三角の鉄の皿は新型の手のひらである。こうしてシャベルの持ち主は、元の手もとうてい叶わないやり方で大地をかき乱せるようになった。恐竜の爪が発掘されるとその爪は「恐竜の爪」であるように数億年後に発掘されるシャベルは「ヒトの爪」と時の博物館に陳列されてもいいだろう。
今やヒトは「機械化された哺乳動物」となり、もし全ての機械が一瞬のうちになくなったら二ヶ月で絶滅するにちがいない。目下のところ自由意志をもった機械の誕生はないようだが、わたしたち自身が知らず知らずに別種の生命体の誕生に手を貸しているかもしれない。
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