コミュニケーション


粘菌というのをご存じだろうか?アメーバーのような微生植物の集合体なのに移動することができる、まるで動物と植物の間だに位置するような妙な生物だ。ふだんはバラバラにいるのだが、ある事をきっかけに一ヶ所に集まって合体する。この時不思議なのは個々の細胞がどうやって通信しているかだ。厳密な計測でもほんのわずかな電波すら検出されないのに見事に一力所に集合する。どうしても通常物理では説明できない未知のエネルギーで粘菌同士交信している。

 ハチやアリなどの群居性生命体のコミュニケーション能力は人間のそれを遥かに超越している。逆をいえば、私達のような複雑な生物になると、そうしたコミュニケーションをはかるには障害があるようだ。私達人間や類人猿、クジラ、大部分のネコ、そしておそらく一部の鳥や魚も、独自の「パーソナリティー」を獲得してきたが、それとともにある種の不利が生じたのだ。私達は多くのものを手に入れたが、その過程でコミュニケーションの方法が失われてしまったり、隠されたりしてしまったようだ。壁はすでに高く築かれており、緊急の時にしか突破されない。それは個々相互の問題によって「パーソナリティー」が抑圧されたときであり、そうした自体になると私達は再び根本的なレベルで別の個体と関係を持ち始める。

 人間のアイデンティティーは他の植物や動物とはまた逢う。その壁は分析できるものではなく極めて観念的なものだ。この変化がいつどうやって起こったかは已然としてなぞのままである。多くの細胞が集まって、器官を作り、脳を作り上げたどこかの過程で何かが加えられたのだ。個体性を発達させ、パーソナリティーの外見を作り、心を存在させる新しい魔法のような成分が・・・・・

 我在り、故に我思う、なのである。

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