無脊椎動物は同種の生物の細胞や組織を無条件に受け入れるモノと最近まで信じられていた。しかしサンゴのような単純な群体動物でも、自己認識をもっていることが分かっており、更に共同体意識を持っていることも分かっている。

 例えば、サンゴの一部を切り取って同じ群体同士に移植するとすぐに受け入れるのだが、別の群体のサンゴに移植しようとしても互いに触れ合う部分に瘢痕組織のような、死んだ細胞の防壁を作ってお互いに相手をよせつけない。

 もっと、興味深いことは一方が相手より大きい場合は、小さい方だけ崩壊する。しかし、それは大きい細胞群に殺されるわけではなく、いわば自殺をするのである。小さい方の自己消滅溶解メカニズムが働くのだ。ただし、小さい方は追い出されたり、勝負に負けたり、圧倒されるのではなく、ただ自ら身を引くにすぎない。生物の世界にこのような現象が存在することは、驚きであり、愉快でもあるが、この話を聴くときなぜか安心する。

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