火に憑かれて


 火を魅力的に感じるのは人間ぐらいのものだろう。

 人間の古代からの業績で大いなる飛躍が三つある、言語の発達、作物の栽培、そして火の支配である。人間の精神がいかに洗練されようとも、子どもの心は、マッチのちょっとした、魔術で活き活きと輝く。大人の疲れきった想像力でさえ、焚火や暖炉の炎の表情に見とれる。

 他の全ての動物が恐れる火をなぜ人間だけが、手中におさめたのか?たぶん最初から火の効能を想像していたわけではないだろう。はじめは単に美しいから落雷の残り火などを洞窟に持ち帰ったのだと思いたい。そのうち暖かいことに気づき、全てを焼き尽くす力に気づいたのだろう。

 いまや太陽よりも強力な火を作り出せるようになっても、ロウソクの炎に私達の心は奪われる。火にはどこか神聖なところがあるからだ。

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