<<第八部意識の誕生>>


 創造主に自己意識があるとすれば、意識を持つ被創造物など要らないはずである。しかし人間は、その思考能力によって動物界を超越し、そのマインドの存在によって自然が意識の発達にひとかたならぬ力を集中させてきたことをうかがわせる。

 意識で世界の実在を認識することは、まさに自然を所有することであり、創造主を確認する行為であるともいえる。意識的思考がなければ存在しない世界が、それによって現象的世界になる。

 よく聞く科学の伝説に、生物学者とノミの話がある。ある研究者がノミの行動を研究していた。何年間も訓練を重ね、葛藤を繰り返したあげく、古典的条件付けの原理を駆使し続けた結果、「跳べ」と命令するとジャンプするよう訓練することができた。真の科学者である彼は、ノミがなにによってこのように反応する能力を持っているのかと考えた。そして、それは対になった三組の足の前列の二本であるに違いない、と決めつけたのである。その理論をためす為にノミの前足二本をもぎ取り、跳ぶように命令した。しかしノミは挑んでしまった。科学者は仮説を急きょ立て直して、次の中列の二本の足を取った。「跳べ」というと、ノミはふたたびみごとにジャンプした。科学者はなおも実験意欲に燃えて最後の二本足をもぎ取り、命令した。今度はノミは不動の姿勢をとったまま、ジャンプすることを拒んだ。そこで研究者が当然にも出した結論は、「ノミの後ろ足を取るとつんぼになる。」と言うものであった。

 生命の本質を研究しようとする私達の不器用な努力は、電気を説明しようとして発電気を構成している鉄、ゴムなどの化学的、物理的特性を解いているようなものともいえる。生命を真の秘密など決して解らないものかもしれない。

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