水中は決して静かではない。波の砕ける音や渦巻く昔、小石のカタカタという音などいたるところで雑音がひしめいている。
ところがひとたび水中に入るとこの音がどの方向から聞こえてくるかわからなくなる。水の密度が空気に比べて四倍半も早く音を伝えるため、左右の耳に同時に音が聞こえてしまうのだ。さらに私達の脳がほとんど水でできているため、音が脳に直接直接飛び込んでしまうからだ。ダイバーが水中で仲間とはぐれてしまうのはこのせいだ。
ところがイルカやクジラは水中でもしっかり音の方向を感知する。ひたいに「メロン」と呼ばれる油のかたまりがあってここで音を受けとめることができるのだ。私達でも口のなかにめいっぱい空気や油を含むと、水中でも音の方角がわかる。
南の島の人々はこのことを知っていて、水の中での呼びかけにも決して相手を見失うことはない。
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