木の再定義


タンポポはクローン繁殖し、周囲何十キロにもわたり生成物をばらまくが、おびただしい数ではあっても遺伝的には同一の個体である。すなわちたまたま広い地域にまばらに散らばるという一定の遺伝的構成を持った生命体なのだ。

 これとまったく逆の生き方をしているのが木だ。大きな木は遺伝子的モザイクをなし、一つ一つの芽に新しい世代を生み出す可能性を潜ませている。その新しい世代は、幹からの制約から全く切り放されたといっていいほど別の進化をたどる。

 大地の穴の中に突っ立て、動きのあるもののなすがままにされているように見えても、実は極めて臨機応変に生きているのである。これが樹齢何百年という長生きの秘訣なのだろう。

 こうした観点でみると木は新しい意味を帯びてくる。木は単に大きな植物というよりサンゴのような集団としての生命体と考えた方がいいのだろう。

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