永遠の太古の海


 いずれにしても生命として開花したのは、三五億年前の海だ。その時海の塩分は一%しかなかった。やがて海は若干塩辛くなったが、私達の体の中はまだ一%のままだ。大気すら激変したのに、私達の体の中には、古代の海が永遠に生きている。その時代に一斉に生命が開花したように、魚でも、エビや虫でも鳥でも同じ塩分の一%を保っている。

 おそらく一%の時代は生命と他のものの区別がなく混然一体としたスープのようなものだったに違いない。海そのものが一つの生命体といってもいいだろう。やがて、高まりゆく塩水から身を守るために自分の回りに膜を張った部分ができた。これが最初のDNAの乗り物としての個体生物の起源のようだ。私達はその誕生のときからたった一人で生き、たった一人で死んでいく運命にあった。

 海水の量に比べたら私達の体の中の古代の海は極めて小さい。まるで大海の中からスプーンで一杯すくった程度だが、永遠の杯いっぱいだ。

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