DNAの最大の特色は自己複製ができることだ。前に、アミノ酸までは簡単に作れると言ったが、アミノ酸には自己複製の力はない。ここから自己複製能力をもった特定配列のタンパク質になるには、きわめて希有な確率だ。

 自己複製能力を持つことが生命の条件であり、この連続性により人の子は人であることができるのだが、必ずしも完璧な複製が必要なわけではない。もし完璧であったら、最初の一個とうりふたつのレプリカで世界は埋めつくされていた。

 逆にコピーミスはなければならないといったほうがいい。というのも、進化を可能たらしめたのは、この間違いによるところが大きいからだ。

 この進化の推進力たる遺伝子のCOPYミスは時には先天的な病となって破壊因子となったり、自分の細胞においては癌細胞となって自らに襲いかかってくることもあるが、多様性を高め、自然淘汰への生存率を高める役割をするうえでの必然といえよう。

 進化は微妙なバランスで細いロープを渡っているような危ういものかもしれない。

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