<<第七部・脳>>意識のデビュー
進化史上例を見ない爆発的な成長があった。百万年ほど前に膨張しはじめた人間の脳は、他のどの動物のどのに器官にも見られないほどの速度で、大きく複雑になっていった。成長は欲望を呼び、頼みもしないのに与えられた贈り物のパラドックスにより未だに私たちは欲望という悪魔に振り回されている。この脳の進化のもう一つの特徴としてほぼヒトの全種族同時に起こったことがあげられる。種全体に同時に何かの危機でもおとずれたのであろうか?
今や進化は肉体的特徴より、脳がキーとなっている。脳は右脳左脳の二つに分けられるが、三層にも分けられる。卵の黄身の部分に相当する脊髄の膨らんだような部分は爬虫類的に考え、白身に相当する部分で鳥や、原始哺乳類的に考え、殻の部分に相当する、「新皮質」で霊長類的に考える。こここそが私達の構造的特徴なのだが、構造そのものよりもっとも重要な瞬間は意識のデビューだと思う。しかし、脳は未だ未知の大宇宙である。心や意識は、いったい何処からくるのだろう?
「私達の脳が私達に理解できるほど単純だったら、その単純な脳をもって理解することはやはりできないだろう。」という有名な言葉がすべて語っているようだ。右脳左脳は、真ん中を脳梁といったものでつながれているが、重度の癲癇病患者の場合この脳梁を切断してしまう。すると人格が二分されてしまうのだ。訓練と時間がたつにつれ一つに人格に統一されるが、それまでは、右脳と左脳が通信をおこなってないためバラバラな行動をしめす。
考えてみると、映画「ジキル博士とハイド氏」のような二重人格も脳に左右があるからなのだろう。君の周りにもいないだろうか?こんな奴が。どうやら脳は、人間を人間たらしめた、進化の最初の一歩であり、最後まで未完成のパーツらしい。
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