<細胞>

生命電流


 電気ウナギのような発電動物ばかりか、ごく単純な原始動物を含むあらゆる生物から電気は検出される。

 サラマンダーを塩水に浮かべてくるくる回転させると磁場が発生する。まるで動物発電機だ。植物にもこの磁場は観測できる。さわると感電死する電気ウナギならぬ電気食虫植物が進化史上あらわれてもまるっきりのSF世界のおとぎ話というわけではないのだ。

 葉っぱの一部を切り取っても、ある特別な写真機で撮ると、切り取った部分までポーっと写り、完全な葉の形で撮ることができる、いわゆる「ファントムリーフ現象」というのがある。これも植物の磁場を観測しているのである。

 植物の磁場は周期性をもっていて、日周期、月周期、太陽黒点周期で変動する。この電磁力は動植物の成長にもふかく関わる。受精卵や胚にもある複雑な電気パターンが、どうやらどの遺伝素子をどのように成長させるかを教えているらしいのだ。例えばサラマンダーの尻尾になるべき胚の部分を切り取って足の部位に移植しても足になるし、蛙の胚を半分にしても半分の蛙ではなく完全なカエルに成長する。受精卵がどうしてカエルや花になったりするのかは、生物学の分野で最大の謎とされている問題で、これこそノーベル賞級の発見が最も望まれているテーマなのである。

 サラマンダーは、人間と違ってとかげの尻尾のように体を再生する能力がある。足でも、目でも、あるいは心臓や脊髄、はては脳の一都も再生することができる。カエルはサラマンダーとほぼ同じ大きさと複雑さを持つ両生類だが、再生能力はない。このカエルとサラマンダーの前足を切った実験で今後の医療が飛躍的に発展できる可能性が見つけだされている。切断後四日目にサラマンダーの切り口から、負の電気が生じ、細胞が胚の時に現れるような、まだ分化してない、これから指示通りにどのようにでも成長する、原始的な状態に逆戻りしたのだ。そこからは卵の中でひなが形を現すごとくもとの足が再生した。

 おもしろいのはこれからで、カエルに負の電気を加えてみたのだ。すると・・・・カエルの足も再生した。さらに実験はエスカレートして今ではネズミの足の再生にも成功してるそうだ。

 これほど生物に関わる電磁場ゆえ、逆に生物のサイクルにあわないものは、生物に悪さをすることもある。五〇〜六〇ヘルツの交流電流は、妊婦はさけた方がいい。永久磁石の工場従業員はイライラやめまいをおこしやすく、高圧線の真下の家では、自殺者のでる可能性がほかの地域より四〇%も高い。

 私達の成長や、神経など生命的なプロセスは基本的に電気的なものであり、私達は電動ロボットと大差ない。この現実からは逃れようもない。私達は宇宙の「コンセント」につながっており、スイッチはもう「ON」になっているのだ。あとはただ、応えるだけである。

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