<<第5部進化の必然>>


 秩序を生み出すという能力は、生物のもっとも特異な特徴である。無生物の世界では、原子が集まって分子になる。しかし水晶をのぞけば、それ自身が逐次発展を続けて、より複雑な構造になるという明確な特徴はない。(※そういう意味では水晶はもっとも生物に近い石になる)これに対して生物は、ほとんど脅迫観念的にそうせざるを得ないという衝動を示す。

 恒星やブラックホールがあるのも、物質の性質がそれを必然的に生み出すからに他ならない。これはひとつには環境的制約の結果、すなわち物理的法則の自然な成り行きであるが、もう一つには、事物がある一定の方法で成長する組み込まれた必然性のためでもある。

 植物の成長にあてはめて説明しても同じ事がいえる。生長しつつある植物の先端の細胞は、ある程度遺伝子の「指示」によって支配される。パターンに落ちつく。その種にふさわしい葉の形や色を決定するのは遺伝子である。しかし葉の配列、その分岐の角度となると一輪一輪違いがあり、「必然的」な自然的な形をとる。

 指示と必然性の組み合わせを支配している唯一のルールは、全ての事物が持っている平衡化の傾向にあるように思われる。平衡状態に向かう作用は、測定したり定量化できないものだから「力」とは呼べないが、ルールではあるようだ。

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