人間の体は一兆個の細胞からできており、これらの細胞は全て共通の目的、すなわち健康で幸福な個人の維持という目的を保つために働いている。そして皮膚、脳、血液にいたるまで、どこの細胞も全て同じ受精卵から育ち、セットになった遺伝子を持っている。

 体のどの部分をとっても外部からの侵入者には極めて敏感に排除しようとし、もって生まれた遺伝子以外とは決して融合しない。たとえ外部からの攻撃がなくても、ひとたび調和が崩れると、自分自身で免疫病に陥るくらい敏感だ。

 ところが人間に異質な遺伝子が大量に進入しても、それほど強い抵抗なしで耐えられる状態が一つだけある。妊娠という状態だ。胎盤は、普通の細胞と同じように侵入者を排除する能力を備えており一方胎児は母体から独立した存在ではない。拒否反応を起こしても不思議はない。

 事実妊娠期間中母親は免疫力が低下する。妊娠ということが本来あり得ないことともいえる。にもかかわらずそれが起こっているという事実は、生命のもう一つの神秘と言えるのだろう。

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