*第五章 人間としての成熟 それに至る方法(上方向進化)

*第一節 富と肉体的欲求と条件反射を克服する 性の問題 不安の問題

*一 物質的富への執着を乗り越えることについて  足を踏み外すと落ちたり,火に触れると火傷をするなど、我々は物理的・化学的法則に支配されて いる。しかしその一方で、我々は日常、様々なかたちで物質を利用し、自然を支配しようとしている ところがミイラ取りがミイラになるように、物質世界を支配するどころか、物質的富の魅力に取り付 かれて、自由を失い、その奴隷になり、退化する場合も決して少なくない。  それではどうするか?答えはわかりきったことであるが、一言で「ものは自分の成熟と人類の進化 に役立つ限りにおいてのみ利用する」という原則を持つことである。  イメルダが三千足の靴はあまりのも有名だが(毎日変えても八年以上かかる) ところが人間より貧しい生物は必要以上に獲物を取ることはしない。今日の人類もそうした生物たち によって支えられてきたといってもよい。では、なぜ人間の欲望には際限がないのか。それは人間は 知性を持っているからである。知性は同時に不安をもたらし、不安はより不透明な社会をつくり出し た。  その為、知性が欲望を結びつくと個々の対象をこえて際限なく欲しい物を見つけだすようになる。 その結果自己中心になった人は、自分の享楽のために飽くことなく富を収奪し、叶うなら世界の全て も富も自分のものしようとする。そしてたとえ世界を全て自分の物にしても、まだ満足しないだろう  ところが、富をいくら集めても幸せになるとは限らない。 問題はひとえに何を人生の目的にするかにかかっている。その目的が第二の自由化(物質的文明の発 展)の実を得ることのみにあるならば、欲望は際限なく拡大するだろう。しかし、第三の自由化(真 人類への進化)を目的とするならば、<富ははじめて目的ではなく手段となる>。  物資手的富は野や山を同じに生物全体の共有財産であって、個人の物ではない。 個人の所有の財産があるとすれば、それは<真人類に進化する手段として必要な範囲>で使用すべく 与えられた物である。 そして全ての生物のために大切に管理するよう、一時的に託された物にすぎない。 その証拠には、死ぬときには誰も富は持っていけない。

 

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