1992年

サイエンス・ギャップ論

Science Gap

ロスマン

M.A.Rothman

科学的啓蒙書より超常現象などのまがまがしい本の方が桁違いに売れているのは何故だろう?

ロスマンは科学者と公衆の間に癒やしがたいサイエンス・ギャップがあるからとした。 そして、このコミュニケーション不全の元凶を16の神話とした。科学が否定してしまった、過去の神話や迷信のことではなく、科学そのものに含まれる神話のことである。

これを4つにカテゴリー分類して以下に示す。

A:楽観的態度に基づく神話群:

第3神話「科学に不可能はない。」−とんでもない不可能はいっぱいあるじゃないか。

@人の能力の限界:人の一日の計算量には限界がある。

A資源の限界:あまり巨大なものは建造できない。

B数学的限界:角の3分化は科学でも不可能

C物理的不可能:永久機関も夢

第11神話「科学者は客観的な人間である。」−科学者は本当に過ちを犯さないのか?

事実は理論によってつくられるという理論負荷性(theory-ladenness)、つまり誰の目にも明らかな客観的事実なるものは存在せず、いかなる事実もそれ自体を成り立たせている理論的背景をもつと言うことを認識すべきである。

第13神話「あらゆる問題はコンピューターで解決できる。」

第14神話「技術が進歩すればどんな問題でも解決してくれる。」

 

B:未来および未知の知識に関する神話群:楽観と悲観に更に細分

第5神話:楽観「未来の進歩した文明では、現在知られていない力が利用される。」

第6神話:楽観「地球以外の惑星の進んだ文明には、地球上の我々のもたない力が存在する。」(例)超光速宇宙船建造

第4神話:悲観「我々が現在何を考えていても将来覆されてしまうことは十分ありうる。」確かに理論体系が覆されたことはあるが、知識は不可逆な形で累積していっている。

C:懐疑主義および相対主義にもとづく神話群:

次の2つは、認識の限界を知り尽くした者の慎ましい発言としてより、むしろ、疑似科学の主張を擁護するように誤った使われ方をしていることが多い。

第2神話「何事も確実に知ることはできない。」

第7神話「世界には哲学(科学)では理解できないことがたくさんある。」

 

第10神話「あらゆる理論は同等の権利をもつ」科学は民主的には決まらない。

 

D:科学を批判する神話群

第8神話「科学者は創造力に欠けている。」

第12神話「科学者はいつもあやまった予言をする。」

むしろ、科学に大切なのは予言は失敗すること容認することなのだ。

その他:

第1神話「観測されない限りなにも存在しない」月は見ていない時、存在しないのか?

第9神話「科学者は直感で理論を創造する。」

第15神話「神話は精神にとって無害な楽しみであり、良いものです。」

 

 

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