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=逸脱行動論(‘02)=(TV)
〔主任講師: 清永 賢二(日本女子大学教授)〕
〔主任講師: 徳岡 秀雄(元京都大学教授)〕
全体のねらい
最近の青少年による逸脱行動に焦点を当て、T.逸脱行動研究への導入、U.逸脱行
動研究の理論、V.逸脱行動研究の
方法、W.少年の逸脱行動過程、X.逸脱少年の司法過程、Y.逸脱研究の最前線と
逸脱の行方、等について社会学及び社
会心理学的視点から総合的体系的に論じる。本講義によって、少年たちによる逸脱行
動の世界的スケールに立った最新の知
識を学ぶことが可能となると同時に、逸脱行動への受講生自身の知的探求行動を促進
活性化することを目的とする。
回 テーマ 内 容
執筆担当
講師名
(所属・職名)
放送担当
講師名
(所属・職名)
1 逸脱行動の世界
少年たちによる逸脱・非逸脱・反逸脱行動が境界性を喪失
しながら膨張を加速化している。何が逸脱行動か、何が逸脱
行動でないのか。社会全体の価値や規範の混乱を背景に、少
年たちの間での逸脱世界も揺れ動く。逸脱世界を俯瞰し、そ
こでの少年たちの逸脱的行動実体についての全体的相貌と問
題を論じる。
清永 賢二
(日本女子大
学教授)
清永 賢二
(日本女子大
学教授)
徳岡 秀雄
(元京都大学
教授)
2 逸脱研究の今日的
意義
逸脱は悪か。悪とは何か。悪は悪か。悪は不正義か。悪は
時として正義ではないのか。それでは正義とは何か。一画的
皮相的「逸脱=悪」論を検証し、少年による逸脱行動の現実
的作用と意味を問い直す。
岩永 雅也
(放送大学教
授)
岩永 雅也
(放送大学教
授)
3 「非行少年」の発明
非行という概念は、少年観の成立と共に、犯罪と貧困とは
相互因果的であり、しかも幼少期の経験に大きく規定されて
いるとの認識に基づいて、刑務所から犯罪少年を、救貧院か
ら浮浪児を救出し、両者のために少年救護収容施設が創設さ
れる過程で生み出された。犯罪少年プラス貧困少年という非
行の原型は、文化・時代による修正を受けながら、今日にい
たっている。
徳岡 秀雄
(元京都大学
教授)
徳岡 秀雄
4 実態・理論・政策
文化と歴史に規定された社会規範からの逸脱の一部が犯
罪・非行として把握される。その実態を説明しようとするの
が理論(仮説)であり、政策は理論を根拠に採用されるもの
だと想定される。しかし本章では、実態→理論→政策、とい
う常識的見解よりもむしろ、現実には、政策→理論→実態、
という流れなのだという点を強調したい。そこに大きく関わ
ってくるのが、背後仮説という概念である。
同 上 同 上
5 社会的緊張理論の
栄枯盛衰
社会学的犯罪理論が成長し、シカゴ学派とマートンのアノ
ミー論とを統合した分化的機械構造論へと精緻化される。こ
の理論(仮説)は時代の追い風を受けて、ケネディ政権のシ
ンボル的政策にまで発展した。理論と政策との相互規定関係
をたどるとともに、理論(仮説)は、さらに大きい時代的背
景の中に位置づけてこそ意味を持ちえたのだという側面を明
らかにする。
同 上 同 上
6 時代精神としての
ラベリング論
政策・理論・実態、三者の相互規定性を如実に物語る一例
として、1960 年代後半から70 年代のアメリカを席巻したラベ
リング論を取り上げる。伝統的実証主義の発想を逆転させた
ラディカルな主張が、時代精神の変化と共にたどった命運を
記述する。また、ラベリング論の政策化は、意図的行為の意
図せざる結果、潜在的逆機能の例示としても面白い。
同 上 同 上
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回 テーマ 内 容
執筆担当
講師名
(所属・職名)
放送担当
講師名
(所属・職名)
7 逸脱行動の量的把握
具体的に逸脱行動をどの様に把握し理解するのか。1つの
方法として官庁統計を中心とした各種量的把握方法がある。
量で把握される「人間行動」の長所と短所、意義と限界、現
実場面における具体的展開手法について論じる。
清永 賢二 清永 賢二
8 逸脱行動の質的把握
官庁統計を中心とした量的把握に対し、量では把握困難な
日々の微細な少年たちの日常生活世界における逸脱行動に注
目した質的把握方法がある。例えば、参加観察法を中心とし
たエスノメソドロジーは、逸脱行動研究にどの様な新しい視
界を開いて行くのか。今後更に必要とされるであろう逸脱行
動の質的把握の深部に迫る。
同 上 同 上
9 逸脱行動の現象学
少年による様々な逸脱行動が噴出する。個々の逸脱行動が
それ自身で、あるいは複数の行動が相互に縒り縺れあいなが
ら、時代時代の逸脱行動世界を紡いで行く。複雑に縒り捩れ
た逸脱行動の現象を解きほぐし、歴史的時間や文化の変遷の
中での逸脱行動の現象学的特性を解析する。
同 上 同 上
10 原因理解のための
理論枠組み
少年はなぜ逸脱行動を働くのか。原因追及のための様々な
理論枠組みが用意される。下位文化論、社会的葛藤論、社会
的統制論の3理論を中心に、少年による逸脱行動の原因追及
のための理論の整理と、こうした理論を下敷にした仮説モデ
ルの設定を試みる。
同 上 同 上
11 逸脱行動の定量的
定性的原因探求
理論は現実に検証されてこそ、その意味を深め、さらなる
発展を可能にする。各種統計調査、また参加観察法などを通
して定量的定性的に現実の少年たちの逸脱行動の原因を探っ
て行く。 同 上 同 上
12 少年法の歴史と現在
「非行」の発明以来、少年保護体制が充実し、世界最初の
少年裁判所がシカゴに創設されるまでの経緯を解説する。
続いて、日本における明治期以後の少年司法政策の発展過
程を略述する。それは統制網の拡大・深化、すなわち刑罰を
補完する保護処分から刑罰に代わる保護処分へ、さらには保
護処分優先主義へと、保護処分対象者が増大する過程でもあ
る。
徳岡 秀雄 徳岡 秀雄
13 これからの少年司法
2001 年4 月から施行された改正少年法は、5 年後の見直し
を規定している。少年司法の現在的課題を明らかにするため
には、何か争点で何が変更されたのかを確認しておく必要が
あろう。
また、改正点の一つに、近年急速に認識され始めた被害者
への配慮がある。アメリカでの均衡・修復司法という実践が、
日本文化の中で応用可能か否かを検討しておくことも重要で
ある。
同 上 同 上
14 青少年問題の変質
と対策のジレンマ
青少年問題全体の、またその重要な一部としての少年犯罪
の歴史的変遷は、いずれも反対社会型から非社会への変質と
して特徴づけられる。それは、モラル・パニックを背景にし
て、対症療法的対策をとり続けてきたことの帰結であると解
せられる。
道徳的社会化を成功させるためには、モラル・パニックに
惑わされずに、あらゆる場面でタイプA 的統制の可能性を追
求することが肝要であると思われる。
徳岡 秀雄 徳岡 秀雄
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回 テーマ 内 容
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逸脱研究「知」の最
前線と少年たちの
行方
少年による逸脱行動も21 世紀を眼前に様々な変容を遂げよ
うとしている。その変容に対し、世界の逸脱行動研究は、ど
の様な対応をし、少年の逸脱行動のどの様な側面に注目し、
研究を進めようとしているのか。逸脱行動研究の知の最前線
を世界的スケールで探る。同時にどうした「知」の窓を通し
て21 世紀社会での逸脱少年の実像の行方を追う。
清永 賢二 清永 賢二---------------