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2004/11/08
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=アジアの風土と服飾文化(‘04)=(TV)
〔主任講師: 道明三保子(文化女子大学教授) 〕
〔主任講師: 田村照子(文化女子大学教授)〕
全体のねらい
アジアの服飾文化は、気候風土・生活様式・風習・宗教・文化交流などを反映し、アジア各地の民族や地域ごとに独
特のものを生み出してきた。服飾文化はとりわけ風土と密接な関係がある。本講では、アジアの服飾を取り上げ、自然
環境と文化環境の背景と関連させながら、各地域の服飾の素材・形態・縫製・装飾技法・装飾文様・付属品・装身具な
どの観点から特色をさぐり、いくつかのテーマを選びアジア全体を比較する。
回テーマ内容
執筆担当
講師名
(所属・職名)
放送担当
講師名
(所属・職名)
1 「序論風土と服
飾文化」:
アジアの服飾文化は、気候風土・生活様式・風習・宗教・
文化交流などを反映し、アジア各地の民族や地域ごとに独特
のものを生み出してきた。服飾文化はとりわけ風土と密接な
関係がある。本講では、自然環境と文化環境の背景と関連さ
せながら、各地域の服飾について資源・形態・縫製・装飾技
法・装飾文様・付属品・装身具などの観点から特色をさぐり、
いくつかのテーマを選びアジア全体を比較し、アジアの服飾
の過去・現在を検証し、未来を展望する。
道明三保子
(文化女子大
学教授)
田村照子
(文化女子大
学教授)
道明三保子
(文化女子大
学教授)
田村照子
(文化女子大
学教授)
2 「東アジア」:
温帯に属し四季に恵まれた東アジアでは、袷、単、綿入れ
など季節により衣服が変わり、重ね着に適した前開き型衣服
が多い。その代表格である日本のきものや中国の袍、韓国の
チマ・チョゴリなどを取り上げ、四季の文様や吉祥文様など
東アジア独特の表現や身分階級の標識として服飾の果たした
役割などについて述べる。また旗袍からチャイナドレスへの
変遷、チマ・チョゴリの現代生活における位置などについて
考察する。
道明三保子
田村照子
道明三保子
田村照子
3 「東南アジア」:
タイ・ラオス・カンボジア・ミャンマー・マレーシア・イ
ンドネシア・フィリピンなど、東南アジアは気候的にはアジ
アモンスーン気候に属し、高温多湿の気候風土にあって、体
熱放散型の腰巻衣を基本とする服飾を特徴とする。素材は綿、
麻などを中心とする織物で、その染織技法は地域によりきわ
めて多彩である。腰巻衣の形式、染織の差別化・宗教等との
関係について考察する。服飾文化の伝播と変容を、気候と風
土、政治・宗教など周辺条件との関係において論じる。
同上同上
4 「南アジア」:
高温多湿地帯のインドでは、女性のサリーや男性のドーテ
ィなど一枚の布を巻付ける衣服が発達した。風が通りやすく
ゆったりとしていて体を締め付けず、発汗と蒸発を促す衣服
型式といえる。またインドの人々は、裁断したり縫ったりし
ない布こそ清浄であるとみなしている。服飾に使われたイン
ド各地の特色ある染織とその技術を紹介するとともに、パキ
スタン、ネパール、ブータンの風土と服飾文化を取り上げる。
同上同上
5 「西アジア」:
砂漠と草原、オアシス地域からなる乾燥地帯では遊牧生活
をおくる人々が多い。かれらは風通しがよく動きやすいゆっ
たりした貫頭型の衣服を着る。イスラム世界とも重なり、女
性のヴェールは必需品だ。また財産、お守り、装飾として特
に既婚女性に欠かせないのが装身具である。ここでは地方ご
との特色を示すパレスチナ地域の服飾と、部族ごとの特色を
示すアフガニスタンの服飾を取り上げてみよう。
同上同上
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回テーマ内容
執筆担当
講師名
(所属・職名)
放送担当
講師名
(所属・職名)
6 「中央アジア・北ア
ジア」:
中央アジアと北アジアは、ウラル山脈とカスピ海を結ぶ線
の東から、シベリアにいたる広大な地域であるが地続きであ
るだけに、文化的・民族的に密接な交流がなされてきた。ま
た、東西南北の文化交流の重要な交通路にあたり,生活文化
にさまざまな要素が取り入れられた。砂漠や草原、オアシス
が連なり過酷な自然条件のもとでシルクロード文化が開花さ
せた中央アジアの服飾、極寒のシベリアにおける生活と服飾
などを、それぞれの気候風土のもとに、過去の歴史と関連さ
せつつ現代の状況を取り上げ、諸民族がどの様に交流し影響
を与えてきたかをさぐる。
田村照子
田村照子
ゲスト
加藤定子
7 「伝統服飾にみる
機能性」:
アジアの服飾文化の多様性を生み出す要因、特にその生活
様式の相違が、服飾の機能性にどのような変化をもたらして
いるかを探る。たとえば下半身を覆うパンツにはさまざまな
バリエーションが見られる。気候はもとより、日常の起居動
作、床座、椅子座、騎馬生活、などとの関係、あるいは布幅
との関連から来る裁断の合理性、上衣との関係から来る装飾
性などである。同様に袖や上衣のパターンから、その運動機
能性についても触れたい。
同上田村照子
8 「被り物・履物」:
見る・聞く・嗅ぐ・食べるそしてあらゆる感覚を制御統括
する脳を含む、人体の部分でもっとも重要な頭部、この重要
な頭部は服飾の中でいかに扱われてきたのだろうか。被り物
を取り上げ、帽子・ヴェール・スカーフ・チャドル・ターバ
ンなどを、防護機能・装飾性・象徴性などの観点から考察す
る。さらに、頭部と反対の足元に着目し、履物の機能性・装
飾性についても分類整理し、アジア各地の気候風土との関係
を検討する。
道明三保子
田村照子
道明三保子
田村照子
9 「装身具」:
装身具は身を美しく飾るだけでなく、身分階級の標識、招
福や護符、魔よけとして使われる。日本人はあまり装身具を
身に付けないが、他のアジアの地域では特に既婚女性にとっ
て一揃いの装身具が欠かせない所が多く、結婚の際に調える。
装身具にはさまざまな種類や素材が見られるが、圧倒的に多
いのが銀製品で、遊牧民は財産として装身具を身に付けて移
動する。アジア各地の装身具の特色を示すとともに、それら
の基本的な製作技術について取り上げる。
道明三保子道明三保子
10 「服飾文様と装飾
技法」:
アジアの服飾において文様は重要な要素である。一枚の布
の衣服や平面的な構成の衣服が多いので、文様を効果的に表
現することができるのである。文様の果たす役割として、民
族や身分階級の標識、招福、お守り、魔よけなどが、装飾効
果とともにあげられる。風土や生活を反映し、地域によって
独特の文様があり、深い象徴的意味を持つものも少なくない。
またペイズリー文様のように、時代によって変容をとげ他地
域まで広く伝播するものもある。服飾に文様を表現するため
に、絣、絞り、綴れ織り、ろうけつ染め、型染め、刺繍など
さまざまな技術が駆使されてきた。中でもどの地域どの民族
にも見られるのが刺繍で、その特性についても考察する。
同上同上
11 「色」:
アジアでは、中国の五行説における白・赤・黒・青・黄の
用いられ方など民族の宇宙観がこめられたり、色ごとに特定
の意味や象徴性が与えられたり、階級の識別にも色が重視さ
れた。それらは服飾の上にも反映されてきた。そうした例を
挙げながら、各地域の特徴となる色は何か、を考察したい。
さらに、それらアジアの色がシルクロードを通って集積され、
日本の伝統模様の色のオリジンとなっていること、それらの
色を作り出すアジアの天然染料についても述べる。
道明三保子
田村照子
道明三保子
田村照子
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回テーマ内容
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(所属・職名)
放送担当
講師名
(所属・職名)
12 「資源と服飾」:
服装の原材料は繊維である。現在も使用される代表的な天
然繊維、麻、絹、羊毛、綿はそれぞれ世界の4大文明の発祥
地であるエジプト、中国、メソポタミア、インドで発見され、
いずれも繊維から糸、織物、衣服へと構成されている。本章
ではまず、現代の合成繊維にまで継続するこの繊維という服
飾素材の持つ意味を考え、さらに、各地域の気候とそこで入
手できる素材、服飾文化との関係について検討してみたい。
さらに骨や角、毛皮や貝などの動物素材や金属やガラスなど、
繊維以外の素材の使われ方についても触れたい。
田村照子田村照子
13 「生活の洋風化が
もたらしたもの」:
アジアの伝統的な服飾文化は、欧米文化を取り入れ生活が
洋風化につれて少しづつ消えようとしている。アジア各地の
現代社会において伝統服飾はどのような変遷を経てきたか、
どのように位置づけられているか、洋服とどのような関わり
をもってきたか、具体例に触れながら考察する。
道明三保子道明三保子
14 「アジアの服飾と
政治経済」:
服飾文化は時代と共に変化し続けている。その外的要因は
さまざま考えられるが、本章では松本由香子氏をゲストに迎
え、インドネシアの現代モードがインドネシアの国家として
の新しい枠組みにいかに位置づけられ、国民の民族的アイデ
ンティティの創造につながっているか、いわば服飾文化の政
治性について紹介していただく。一方、もう一人のゲスト樫
永真佐夫氏には、ベトナム少数民族の生活における、市場経
済化の波がもたらす変化について紹介していただき、政治や
経済と服飾文化の変容について考えたい。
田村照子
田村照子
ゲスト
松本由香
(高知女子大
学助教授)
樫永真佐夫
(国立民族学
博物館助手)
15 「服飾文化の継承」:
現代社会・未来社会において民族の伝統服飾文化はどのよ
うな価値を持っているか。生活文化・生活資材のグローバル
化の中で伝統的服飾文化はどのように生き延びていくか、民
族の誇りを確立し女性の自立を目指す中で、伝統的な服飾文
化はどのような役割を果たしているか、アジア各地での様々
な例を紹介する。
道明三保子
田村照子
道明三保子
田村照子