HOME 2003/11/15 1622110.doc 科目名= =(R)・(TV1/2 = 学習科学(‘04)=( TV 〔主任講師: 波多野誼余夫( 放送大学教授)〕 〔主任講師: 大浦容子(新潟大学教授)〕 〔主任講師: 大島純(静岡大学助教授)〕

全体のねらい ヒトという種は、単に生物として進化してきたばかりでなく、文化という人工物の体系を作り上げ、それを各個体が学習 により内化することで有能さを増大させてきた。その意味で広義の学習ないしそれを援助する教育がヒトの生活や知性にと って決定的に重要なことは確かだし、子どもの側には成人の行動様式を真似ようとする傾向、おとなの側には子どもに教え ようとする傾向が元々備わっていると想定される。この科目では、こうした広義の教育=学習の援助の過程について考える ところから始め、それにもとづいて学校の独自の役割が何か、それはいかにしてよく実現されるかを吟味していきたい。

回テーマ内容 執筆担当 講師名 (所属・職名) 放送担当 講師名 (所属・職名)


1 熟達化としての発 達 ヒトは実践活動に参加することを通して知識・技能、価値 体系、信念を獲得する。獲得された価値体系・信念は、更な る学習へと学習者を方向付け、新しい知識の生成を可能にす る。こうした発達のモデルを、熟達化の観点から示す。 大浦容子 (新潟大学教 授) 大浦容子 (新潟大学教 授)
2
「心の理論」の発達 他者とのコミュニケーションや共同作業が可能なのは、そ れぞれが相手の心の働きについての理論(心の理論)を持っ ており、それが有効に機能していることによる。「心の理論」 の発達について、認知神経科学分野の研究成果を踏まえて検 討する。 梅田聡 (慶應義塾大 学助手) 梅田聡 (慶應義塾大 学助手)
3
リテラシーの発達 乳児期に獲得した能力を基に、幼児・児童は読み書きの能 力を急速に発達させていく。文章の理解・産出能力の発達、 文章からの知識の獲得、などについて、これまでの研究成果 を総覧する。 秋田喜代美 (東京大学大 学院助教授) 秋田喜代美 (東京大学大 学院助教授)
4
数の理解 子どもの数概念の理解はどのように進むのか、算数・数学 が苦手な子どもはどこで躓いているのか、どのような援助や 介入が重要か、などについて述べる。 吉田甫 ( 立命館大学 教授) 吉田甫 ( 立命館大学 教授)
5
音楽的発達 特別な訓練が無くとも、私たちは歌を覚えることができ、 歌うことで気持ちを伝えることができる。音楽を聴いて楽し んでもいる。日常的に音楽に接することでどのような能力が 獲得されていくか、特別な音楽経験はどのような能力を育て るのかについて述べる。 大浦容子大浦容子
6
ヒトの学習の特 徴:生物学的基盤 ヒトにもっとも近い種である、チンパンジイの社会的知能、 認知的知能、心の理論、「言語」などについての報告をはじ め、異なる種の動物の思考や学習についての比較認知科学的 知見から、人間の学習がいかなる特徴をもっているか、その 生物学的基盤を考える。 藤田和生 (京都大学大 学院教授) 藤田和生 (京都大学大 学院教授)
7
記憶と知識 学習は単なる記憶ではないが、それに基づいていることは 間違いない。また、学習の所産である知識も、一種の記憶な いしそれを圧縮して表象したものと見なし得る。記憶に関す るぼう大な研究のうちから、学習科学にとってとくに重要な 知見を見ていく。 大浦容子 波多野誼余夫 (放送大学教 授)
8
推論:演繹と帰納 認知においては、持っている知識がそのままで利用しうる 場合は少なく、多くはそれを変換しなければならない。得ら れた結論ができるだけ妥当であるよう、目標に応じて段階的 な変換を行うのが推論である。ここでは学習者がどのように 演繹や(類推を含む)帰納を行うかを検討する。 波多野誼余夫 (放送大学教 授) 波多野誼余夫
9
思考における言語、 イメージ、ジェスチ ャー 思考は推論を含むが、その容易さや有効性は、情報がどの ような形式で表象されているかに大いに依存する。情報を言 語的に表示することのメリット、デメリットを中心に、異な る表象の長短を論ずる。 大浦容子同上
10
問題解決と理解 構成主義の学習観では、知識は伝達されるのではなく、問 題解決や理解活動の過程で、次第に構成、洗練、改定される と考える。この意味で教育活動の中心となる問題解決や理解 活動に関し、これまで行われてきた研究成果を総覧する。 同上同上
11
新しい学習理論と 教室への応用 これまでの日常場面、また実験室場面における学習や発達 の研究から、本来人が持っている知識の特性、またそれらが 獲得されるべき環境の在り方が明らかになってきた。こうし た特性を再度まとめ、教育現場に応用するための指針をまと める。 大島純 (静岡大学助 教授) 大島純 (静岡大学助 教授)
12
知識を活性化する 教材作成 学習の最終的な目標の一つは、知識の転移である。学習し た内容がそれを適用すべき場面で利用されなければ、学習が 成功したとはいえない。日常の知識獲得がそうした場面に依 存しているように、教室場面における学習にも知識を利用す べき場面での活用に重点を置いて設計されるべきであろう。 学習科学の知見に基づいて利用可能な知識を獲得させるため の教材開発について具体例を交えて話す。 同上同上
13
学習環境を総合的 にデザインする 学習者中心でかつ理解を深めていくことに焦点をおいた学 習カリキュラムは実現することができるか?そこでは、学習 者自身が自らの進展度を評価し、お互いから学びあいながら 教室全体の知識を構築できていることが望ましい。このよう な学習環境を実現するためには、ネットワーク・テクノロジ ーの活用が重要な位置を占める。総合的な学習の時間におけ る授業設計を具体例に、現場の教師との対話を通じて学習環 境を総合的にデザインする過程を示す。 同上同上
14
新たな学びに則し た教師教育 新しい知識観にそった学習環境のデザインが現場に定着す るためには、そこで子どもと接している教師の認識の変化な くしてはありえない。こうした意味で、教師教育は学習科学 の根幹に関わる問題の一つである。教える側の認識をいかに 変化させることができるか。教師自身を学習者、あるいは問 題解決者と捉え、新しい知識観に添った学習環境のデザイン に参加させ教授者として自己意識を改革するプログラムにつ いて示す。 同上同上
15
新しい学びにおけ る評価のあり方 知識観の変化に伴って、学習者の変化をどのように捉えて いけば良いのか、評価の問題が大きくクローズアップされて きている。以前から形成的な評価の重要性については注目さ れてきていたが、知識自体がより環境との相互交渉の中にあ らわれるtransactional なものとして考えられるようになっ た今、新しい学習理論に基づいた適切な手法の開発は急務で あるといえよう。学習者の活動の観察から、その認知的な変 化をどのように捉え、更なる学習のための処方箋をどう描く かについて検討する。 三宅なほみ (中央大学教 授) 三宅なほみ (中央大学教 授)