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2004/11/08 1827014.doc
科目名学習科学とテクノロジ( 03)
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=学習科学とテクノロジ(‘03)=(TV)
〔主任講師: 三宅なほみ(中京大学教授)〕
全体のねらい
学習科学(Learning
sciences)は、人々が互いに理解を深め合う協調的な学習環境をテクノロジを駆使してデザインし、実
践的に学習理論作りを進める新しい学問分野である。先進的な研究・開発に取り組んでいる研究者たちの考え方やカリキュ
ラム構成の実際を現地に取材した生の声から紹介し、それらを検討しながらそこに含まれる学びの理論の本質に迫る。
回テーマ内容
執筆担当
講師名
(所属・職名)
放送担当
講師名
(所属・職名)
1 学びを見直す
「人は生きてゆくために問題を解決しながら経験を積み社
会的に知識を精錬させてゆく」とする協調的な学習観を基に、
学習とは何か、学習の転移はどのように起きるか、学習はど
う動機付けられているかなど、学習科学の基礎を紹介しつつ,
学習科学の先導的な研究者たちが何を目指して実践的な研究
を進めているのか、15回で取り上げる内容を概観する。
三宅なほみ
(中京大学教
授)
白水始
( 中京大学講
師)
三宅なほみ
(中京大学教
授)
白水始
( 中京大学講
師)
2
協調学習という考
え方
協調的な学習観では,人は互いに自分たちの考えているこ
とや分かったことを他人に説明し、自分と他人の考えを比較
しながら各々自分の知識を作り変えることによって賢くなる
と考える。人の学習過程についてのどんな研究からこのよう
な学習観が支持されるのか、協調学習の基礎とそれを支援す
るテクノロジの役割を検討する。
同上同上
3
掲示板による協調
学習
電子掲示板は協調的な学習を展開するための基本的な機能
を備えている。互いの考え方を確かめ合い、自分たちが何を
学ぶべきかを確認しながら学ぶCSILE/KF(コンピュータによ
る意図的学習支援環境/知識フォーラム)を利用した実践を
紹介し、協調学習過程の基本的な学習過程を検討する。
同上同上
4
マイクロワールド
の利用
マルチメディア技術を駆使してマイクロワールドを設定し
その中に答えが一つではない問題を用意して、学習者が協調
的に問題を解くことによって学習する環境を作ることができ
る。その典型例としてJasper
プロジェクトを紹介し、学習へ
の動機付け、自己学習管理能力の育成について考察する。
同上同上
5 デザイン研究
学習科学ではデザイン研究と呼ばれる新しい実践的な研究
方法が重視される。効果の期待できる新しい学習環境を作り
授業を実践して、何がうまくいったのかを分析し、その経験
を活かしてさらに実践と評価を繰返す。3回、4回で取り上
げた実践研究を振返りながらデザイン研究の実態を検討し、
6回目以降の着目点を整理する。
同上同上
6
科学的な考え方を
日常化する
科学教育に成果を上げているWISE(ウェブ統合型科学教
育)プロジェクトについて、背景理念とカリキュラム構成を
追う。生徒がどのように情報を整理して現実社会に役立つ理
解につなげる工夫がなされているのかを分析し、情報の編集
や吟味の学習にテクノロジが果たす役割を検討する。
同上同上
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科目名学習科学とテクノロジ( 03)
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回テーマ内容
執筆担当
講師名
(所属・職名)
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講師名
(所属・職名)
7
パートナーシップ
という考え方
WISE ではweb
を、情報源としてだけでなく、学習者が学ん
だ結果を確かめる吟味の場として、また教員が自らの授業の
ために教材を共有し作り変える支援の場として活用してい
る。学習環境を広く開放して科学者−研究者−教師−学習者
をつなごうとするWISE
の「パートナーシップ」という考え
方を検討する。
三宅なほみ
白水始
三宅なほみ
白水始
8
科学する技術を身
につける
「動くもの」や「考えをはっきりさせるための模型」を作
ることを通して物理や地学を学ぶLBD(デザインによる学習)
プロジェクトでは、ものを作る過程に内在する外化や再吟味
のチャンスをうまく生かして学習者間の学び合いや理解深化
を促している。LBD
について、科学的内容だけでなく、科学
する技術を習得させる様々な工夫に焦点を当てて紹介する。
同上同上
9
協調学習への足場
掛け
LBD には、協調学習そのものに対する積極的な態度を涵養
する準備活動(Launcher
project)が設けられている。その過程
を詳しく追い、協調学習の原理そのものを学習者に理解させ
ようとする長期にわたる足場掛けや協調的な吟味のためのコ
ミュニティ作りに向けた学習科学の新しい方向を検討する。
同上同上
10
科学的な問いを問
う
シカゴやデトロイトの公立中学校を対象に科学教育のレベ
ルアップを狙ったLeTUS
プロジェクトでは、科学教育の究極
の目的を「科学的問いを学生が自分たちで作り出し、データ
を駆使して自分たちなりの答えを求められること」に据える。
LeTUS のカリキュラムを紹介し、その可能性を検討する。
同上同上
11
世界のモデルを作
る
LeTUS の学習目標は、学生が自分たちで世界のモデルを作
ることでもある。LeTUS
が提供する学習支援ソフトには、モ
デルつくりを支援するためのさまざまな仕掛けが組み込まれ
ている。モデルつくりに関する認知科学的な研究例にも触れ
ながら、6回から11回を振返り、科学教育の目標を再検討
する。
同上同上
12
学習コミュニティ
の形成へ
CSILE, Jasper, WISE, LBD, LeTUS
とここで取り上げてきた
プロジェクトは、個々の学習者の理解だけでなく、それぞれ
少しずつ強調点は異なるものの、いずれも学習者を取り巻く
大人社会全体が知的に創造的であるような学習コミュニティ
の形成を目指している。それらを概観しつつ、「持続性の高
いコミュニティ」について考察する。
同上同上
13
共有、再吟味のため
のテクノロジ
様々な協調的な学習環境で、テクノロジは、学習者一人一
人の考えていることを外界にうまく表現し、他人の考え方と
比較吟味して自分の考えを作り直す過程を支援していた。研
究の現場ではさらに新しい技術の利用が検討されている。将
来を見越して学習科学にテクノロジが果たす役割をまとめ
る。
同上同上
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科目名学習科学とテクノロジ( 03)
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回テーマ内容
執筆担当
講師名
(所属・職名)
放送担当
講師名
(所属・職名)
14 学習の評価
人が一生学び続けるためには、必要な情報を的確に探しそ
れらを統合して自分の考えを作り、他人と協調的に深化させ
るための知力が必要になる。学習科学研究の成果としては、
そのような将来にわたって有効な知力がどこまで育成された
かが評価されるべきだろう。学習科学に必要な新しい学習評
価のあり方を、取り上げたプロジェクトを参考に考察する。
三宅なほみ
白水始
三宅なほみ
白水始
15 これからの課題
14回を振返って学習科学が見出してきた知見と研究テー
マを整理し、これからの課題を展望する。学習科学は、実践
をデータに学習の理論作りを目指している。学習の目標をど
う設定するか、学習環境をデザインするための指針にはどの
ようなものがあり得るか、学習についての一般的なモデルを
どう立てるかなど、これからの研究テーマを検討する。
同上
三宅なほみ
白水始
波多野誼余夫
(放送大学教
授)