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=芸術文化政策T(‘02)=(TV)
−社会における人間と芸術−
〔主任講師: 徳丸 吉彦(放送大学教授)〕
〔主任講師: 利光 功(大分県立芸術文化短期大学長)〕
全体のねらい
芸術と人間の関係は社会によって大きく規定されている。芸術の保護・抑圧、芸術伝
承の断絶と保証も、それぞれの社会
がとっている政策によって大きく左右される。この講義は、社会における諸芸術と人
間の関係を、過去・現在・将来にわた
って、芸術文化政策の観点から多面的に考察するものである。
回 テーマ 内 容
執筆担当
講師名
(所属・職名)
放送担当
講師名
(所属・職名)
1 序論、芸術文化とそ
の政策
最初に芸術と芸術文化政策の意味について考察し,芸術が
社会に対して働きかける作用を有することを明らかにする。
この働きかけの反応の現れたものが芸術文化政策であり、そ
の主要は内容を概観して、講義全体の導入を行う。
利光 功
(大分県立芸
術文化短期大
学長)
利光 功
(大分県立芸
術文化短期大
学長)
2
古代からの芸術理
論に見られる芸術
文化政策的要素
古代のギリシャ・中国以来の芸術の理論には、さまざまな
形で文化政策への言及が見られる。とくに、アリストテレス
の『政治学』・墨子の『非楽論』を出発点として、その後の
理論から芸術文化政策に関する見方を抽出する。
徳丸 吉彦
( 放送大学教
授)
徳丸 吉彦
( 放送大学教
授)
3 近代社会における
芸術文化政策
芸術と社会との関係で重要な意味をもつ制度を近代社会を
中心に考える。パトロン制度、検閲、公演・出版の許可など
の変遷を扱う。
同 上 同 上
4
20 世紀における全
体主義的な芸術文
化政策
旧ソヴィエト連邦やナチズム時代のドイツのような全体主
義国家においては、国家の政治目的に合致する芸術文化を助
成し、反対する芸術文化を抑制する政策がとられる。ここで
は政治に翻弄され、ナチによって廃校に追いこまれたバウハ
ウスの事例を取り上げる。
利光 功 利光 功
5 明治時代における
美術政策
明治維新によって近代国家の仲間入りをした日本の場合
は、明治政府の芸術文化政策が、今日まで影響を及ぼしてい
る。ここでは、美術に焦点を合わせて、工芸振興や美術教育
の施策を検討する。
同 上 同 上
6 明治時代における
服飾文化政策
服飾も文化であり、芸術である。明治における頭髪や服飾
に関する政策が現在まで日本に大きな影響を及ぼしているこ
とは自明であろう。この問題を芸術文化政策という広い座標
において考察する。
小池 三枝
( お茶の水女
子大学名誉教
授)
小池 三枝
( お茶の水女
子大学名誉教
授)
7 明治時代における
音文化政策
音楽や音に関しても、明治は現在の日本に決定的な影響を
与えている。西洋音楽の普及だけでなく、日本音楽もこの時
代に大きな変質を経験している。こうしたことへの芸術文化
政策の役割を再検討する。 徳丸 吉彦 徳丸 吉彦
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回 テーマ 内 容
執筆担当
講師名
(所属・職名)
放送担当
講師名
(所属・職名)
8 芸術文化政策とし
ての芸術教育
明治時代の芸術文化政策の影響がいまだに強く持続してい
るのが、芸術教育の領域である。音楽教育を例にして、現在
の日本における音楽のあり方、音楽産業、楽器産業等と教育
との関係を考察する。
徳丸 吉彦
徳丸 吉彦
田中 健次
(茨城大学教
授)
9
国を越えた芸術文
化政策、多文化社会
における芸術文化
政策
芸術文化政策は一つの国や文化の中だけで完結するとは限
らない。日本がヴェトナムを援助して、ヴェトナム宮廷音楽
を活性化した作業は国を越えた政策の例である。また、ロサ
ンゼルスを例に多文化社会における芸術文化政策を考える。
同 上 徳丸 吉彦
10 少数民族に関する
芸術文化政策
現代の産業化と国際化の傾向の中で、犠牲になりやすいの
は、少数民族の芸術である。このための芸術文化政策はどう
あるべきかを、ヴェトナム少数民族の伝統芸能を記録するた
めの日本・ヴェトナムのプロジェクトを例に考える。 同 上
徳丸 吉彦
山口 修
( 大阪大学名
誉教授)
11 地域社会の芸術文
化政策
国のレヴェルではなく、さまざまな規模の地域社会におけ
る芸術文化政策を考える。日本では宮崎県全体と宮崎県椎葉
村の事例を、また、外国ではスウェーデンにおける民俗音楽
の復活プロジェクトを例にして、この問題を考える。 同 上 徳丸 吉彦
12 美術館の思想と実際
国立美術館と公立美術館の設立と運営は、それぞれ国と地
方公共団体の芸術文化政策の一つの現れである。ここでは特
にここ30 年の間に数多く設立された公立美術館の抱える諸問
題について検討する。 利光 功 利光 功
13 音楽博物館の思想
と実際
音楽を聴き、楽器に触れることができ、また、音楽に関す
る調査ができる場所が音楽博物館である。日本(浜松)と外
国(スウェーデンのストックホルム)の典型的な例を出発点
にして、音楽情報と音楽博物館のあり方を考察する。 徳丸 吉彦 徳丸 吉彦
14 現在における芸術
文化政策
日本の文化庁、国立劇場、県立劇場等における意思決定の
方法と現実の運営を検討することにより、いままでの講義で
提出した問題を整理する。 同 上
徳丸 吉彦
海老澤 敏
( 新国立劇場
副理事長)
15 新しい芸術文化政
策を求めて
芸術文化政策の立案も含めて、政策の実行ないし実現には、
芸術家・作品とそれを享受する人々をつなぐアート・マネー
ジメントが重要な役割を果たす。アート・マネージメントの
課題と、この分野の人材の育成について考える。
徳丸 吉彦
利光 功
徳丸 吉彦
利光 功