HOME =表象としての日本(‘04)=(TV―西洋人の見た日本文化―〔主任講師:山内久明(放送大学教授)〕〔主任講師:柏倉康夫(放送大学教授)〕

全体のねらい明治以来、西洋人が見て読み解いた日本文化の表象 (イメージ)は、同時代の政治的・経済的な力関係と、西洋世界にとっての文化的「外部」が発散する幻惑とが複雑に入り混じって、従来の日本人が自らの文化について抱いてきた表象とは大いに異なる表象を、しばしば新しい価値として打ち出してもきた。わかりやすい例で言えば、江戸時代の美の一つの凝縮でもあった日光を貶めて、桂離宮のみを日本美の精髄とする視線である。こうして、西洋人の「眼差し」を通して形作られてきた「近代と伝統との文化的重ね絵」は、現代の日本人論にもさまざまなレベルでその痕跡を残している。「表象としての日本」を分析することは、日本人論の歴史的な系譜学としても、また現代の日本人がみずからについて抱く表象を批判的に捉え返すためにも、きわめて有効な作業であり、また、学際的なチームワークによって始めてその成果を挙げうる研究であって、本学の主題科目として相応しいと考えられる。

回テーマ内容執筆担当講師名(所属・職名)放送担当講師名(所属・職名)


表象としての日本本主題の意味。比較文学・比較文化、異文化交流、国際社会論、表象文化論、諸外国における日本研究の系譜学等、「表象としての日本」がどのようなものであり、どのように形成され受容されたか。研究史と現在における問題提起。山内久明(放送大学教授)柏倉康夫(放送大学教授)阿部齊(放送大学名誉教授)山内久明(放送大学教授)柏倉康夫(放送大学教授)阿部齊(放送大学名誉教授)司会渡邊守章(放送大学名誉教授・演出家)
日本を世界に紹介した人々
     
アーネストサトウ 外交官 西郷隆盛や伊藤博文にもあう。相当長いあいだいた。神道のノリト翻訳、竹の研究。旅行好きでガイド本もだす。 ポール・クローデル中国経由 旅行者としてくる:旅行記を出版 ジャポニズム
ルイ・クレットマン:日本の士官学校の教官。 グリフィス:1870年廃藩置県前に来日

MIKADO!S EMPIRE(皇国)を出版

 

モース:生物学の収集にきた。東大に生物学を教授。進化論を教える。
チェンバレ:日本事物誌 言語学、軍事仕官、旅行案内、古事記の翻訳   ラフカディオ・ ハーン:帝国大学でイギリス文学を教える。クレオールに興味をもつ。ヨーロッパのアウトサイダー 日本を発見したのは、日本人ではない。
 
ギメ:日本美術を収集 急速に西欧化していく日本を嘆く ペリー:能の翻訳者

フェノロサ:ボストン美術館に日本を ブルーノ タウト 建築家 ドーア
ベネディクト    
   
     
     

 

 

 

 


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先駆的まなざし(1)−アーネスト・サトウ幕末から明治にかけて外交官としても足跡を残した欧米日本学の先駆者アーネスト・サトウの日本像。山内久明山内久明
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先駆的まなざし(2)−ルイ・クレットマン明治9年に創設間もない士官学校の教師として赴任したフランス人は理工科大学校を卒業した俊英であったが、2年間の滞在中に多くの写真、書簡、文書を残し、かつそれが近年発見されるという、世界に向かって開かれようとしていた明治日本の貴重な証人である。フランス人の目が読み解いた日本とはどのようなものだったのか。柏倉康夫柏倉康夫2004/11/081280910.doc2回テーマ内容執筆担当講師名(所属・職名)放送担当講師名(所属・職名)
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先駆的まなざし(3)−ラフカディオ・ハーン近代日本を知った欧米人の中でも、ラフカディオ・ハーンは特権的な位置を占める。アイルランドとギリシャという二重の文化的記憶を担って日本を固有の表象世界として書き表したからである。それらの言説は、ある意味では近代ヨーロッパにおける日本論のパラダイムを提供しているとも言える。(日本語字幕対応)ジョージ・ヒューズ(東京大学元客員教授)ジョージ・ヒューズ(東京大学元客員教授)
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19世紀における東洋と日本−オリエンタリズムからジャポニズムへ日本とその文化が西洋世界の地平に出現したのは、19世紀という西洋世界の文化にとっても大きな変革期に当たっていた。近年サイードの名著「オリエンタリズム」によって開かれた新しい文化研究の視座と手法は、「表象としての日本」を読み解く上でも基本文献である。単なる「美的趣味」のトポスを越えて、近代西洋世界における「日本の表象」の系譜学を企てる。稲賀繁美(国際日本文化センター助教授)稲賀繁美(国際日本文化センター助教授)ゲスト渡邊守章
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表象としての日本音楽19世紀後半以降、日本の音楽が西洋社会でどのように表象されてきたかを、学術的な記述を出発点にして考える。また、箏・三味線・尺八の演奏家の協力を得て、1901年以降に録音された音楽と五線譜に採譜された音楽を、表象の具体例としてふたたび音にする。徳丸吉彦(放送大学教授)徳丸吉彦(放送大学教授)
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ハナコと貞奴の日本―身体の表象絵画・骨董や音楽とならんで、いや場合によってはそれ以上に、西洋人の視線を捉えたのは日本人の「身体」であった。観光客の性的幻想の焦点としての肉体とは別のトポスで、演技する身体が西洋人に及ぼした幻惑とその結果を、ロダンを捉えた「ハナコ」と、日本の舞台表象として始めて認識された貞奴の場合に焦点を当てて分析する。柏倉康夫柏倉康夫
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アーサー・ウェイリーあるいは理想化された平安朝文化日本文学の紹介と翻訳の始まりを、イギリス人のアーサー・ウェイリーに焦点を当てて考察する。そこには、原典に忠実な翻訳か、一般読者にも受け入れられる翻訳かという古くて新しい「翻訳論」もたちはだかるだろう。謡曲の翻訳としては、ほぼ同時代にフランス語のノエル・ペリーの金字塔的訳業があるわけだから、これは外国文学を受容する側の文化や文学の記憶とも関わるだろう。山内久明山内久明
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ブルーノ・タウトという視線「日光vs桂」という美術史と美学のパラダイムを発明したブルーノ・タウトは、欧米人が日本文化について抱く表象だけでなく、何よりも近代の日本人が日本の伝統美について抱く表象を決定してしまった。ブルーノ・タウトの研究者では世界的に第一人者であり、数年前の「ブルーノ・タウト展」の監修者でもあったマンフレッド・シュパイデル教授に講義をして頂く。(日本語字幕対応)マンフレッド・シュパイデル(アーヘン工科大学教授)マンフレッド・シュパイデル(アーヘン工科大学教授)
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ポール・クローデル―詩人大使の日本文化論大正年間に大使として東京に滞在した詩人・劇作家ポール・クローデルは、現在から見ても、日本文化の理解において、独創的であるとともに普遍的な視座を提出している。特に中国に14年間滞在した経験の上に立って日本文化を読み解く作業は、この授業にとっても重要な鍵を提出するだろう。ほぼ同世代の考古学者セガレンとの対比や、後のバルトとの対照も必要である。柏倉康夫柏倉康夫ゲスト渡邊守章2004/11/081280910.doc3回テーマ内容執筆担当講師名(所属・職名)放送担当講師名(所属・職名)
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アンドレ・マルローの日本1958年に文化大臣として来日したマルローは、既に戦前の1931年に日本を訪れている。かつての革命の戦士である小説家は、第二次大戦後はド・ゴール政権の文化政策の担い手として、その美術論や芸術観を制度の領域にまで押し進めた特権的な知識人である。中国文化との対比で「空想の美術館」の批評家が読み解く日本の表象を論じる。柏倉康夫柏倉康夫
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アメリカにおける日本論の系譜異文化や外国語の研究は、無償の知的な探究に従って行われるとは限らない。というのか、実に19世紀末のヨーロッパがアジアに関心を抱くようになったのも、その植民地帝国としての戦略と無縁ではなかったのだ。第二次大戦中からのアメリカ合衆国における「日本研究」は、その意味で文字通りに「戦略的な」ベクトルに貫かれていた。アメリカの軍部は、対日軍事戦略立案のため、あるいは戦後の占領管理のために、文化人類学者などに日本研究を委託していた。ルース・ベネディクトの「菊と刀」がその嚆矢であったが、その後知日派知識人による日本論が相次ぎ、アメリカの対日政策にも強い影響を与えた。ライシャワーの「日本人」(1979)や「今日の日本人」(1988)などがその代表であろう。アメリカにおける日本論の多様化とそれらを貫く共通性とを共に論じる。阿部齊阿部齊
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共和国から見た天皇制日本とアメリカのもっとも大きな相違点は、アメリカが純粋な共和国であるのに対して、日本が伝統的な天皇制の影響を強く受け続けていることである。昭和天皇の没後、天皇制そのものを対象とした労作が相次いで出版された。ノーマ・フィールド、ジョン・W・ダワー、ハーバート・P・ビックス等の最近の天皇制論を取り上げて、共和主義者の描く天皇像に迫る。同上同上
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ロラン・バルトあるいは「虚構としての日本」1960年代から70年代にかけて、フランスを中心に大きな影響力を持った思想的潮流に「構造主義」があった。文芸批評におけるその代表者、ロラン・バルトは、1966年に始めて来日して、日本文化の虜となった。みずから「虚構としての日本」を論じたと言う。「表徴の帝国」を始めとする晩年の著作は、幻想の日本を自らの「言説生成」の戦略拠点としつつ、同時に、多くの読者に日本文化解読の鍵を与えてきた。バルトの日本文化論の系譜学を企てることで、「西洋における日本の表象」の生成装置を分析する。稲賀繁美稲賀繁美
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欧米における日本研究の系譜と現在欧米における日本研究は、既に1世紀以上の歴史を持つ。日本を研究対象とする専門家の研究が、どのような領域を特権視し、どのような手法に基づいているのか、他の文化研究との対比において現状を明らかにする。山内久明柏倉康夫阿部齊山内久明柏倉康夫阿部齊司会渡邊守章