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 =人文地理学(‘04)=( TV 〔主任講師:小林茂(大阪大学大学院教授) 〕 〔主任講師:杉浦芳夫(東京都立大学大学院教授)

全体のねらい グローバル化がすすむ今日、多様な人間社会はますます複雑に変動し、これをどう認識するかが大きな 課題となっている。大学レベルの人文地理学初学者のための入門として、まずその古典的視角の理解を はかるとともに、現代における発展を追跡し、さらにそれを基礎として今日の多彩な問題の理解にむけ た課題を検討する。あわせて、高等学校までの地理のイメージのリニューアルをはかりたい。

 回テーマ内容 執筆担当 講師名 (所属・職名) 放送担当 講師名 (所属・職名)


多様な世界へのア プローチ―人文地 理学とはどんな学 問か― グローバル化がすすむ今日、地球上の多様な人間社会はます ます複雑に変動し、これをどう認識するかは私たちの大きな 課題となっている。多様な世界とその変動へのアプローチの ひとつとして人文地理学を位置づけ、その主要テーマを解説 する。 小林茂 ( 大阪大学大 学院教授) 小林茂 ( 大阪大学大 学院教授)
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地理的知識の発展 と地図 世界の人びとは、自分たちの居住地に関する地理的知識を蓄 積し、それをさまざまな手段で表現してきた。地図はそれら を視覚的に統合する媒体として大きな役割をはたし、正確さ をましながら多彩に発展してきた。地理的知識の発展につい て、その地図的表現の歴史をみながら概観したい。 久武哲也 ( 甲南大学教 授) 久武哲也 ( 甲南大学教 授)
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人文地理学の先駆 者と古典理論 人文地理学の確立期であった19 世紀には、今日につながる、 3 つの大きな課題に関心が展開した。その第1 は、人類による 環境に対する適応および環境の改変の問題であり、アレクサ ンダー・フォン・フンボルトらによって展開された。第2 は 「地域の個性」の認識で、カール・リッターやヴィダル・ド・ ラ・ブラーシュによって推進された。第3 は「空間と立地」 の問題で、フォン・チューネンの『孤立国』以降、立地論と して進歩する。こうした近代人文地理学の発展過程を、その 時代的背景と結びつけながら概観する。 同上同上
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環境への適応人びとの環境への適応が、さまざまな戦略や方法で実現され ることを、具体例(ネパールの中間山地農村におけるマラリア に対する文化的適応と生物学的適応)を紹介しつつ解説する。 また、環境と生活様式、民族分布との関係など、世界の多様 性が形成される背景のひとつに環境への適応があることを示 す。 小林茂 小林茂
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資源利用と景観環境への適応の一局面である資源利用が、景観の形成に密接 にむすびついていることを、具体例(福岡県太宰府市の農業水 利と里山利用)を紹介しながら解説する。また資源利用の変化 が景観をどのように変化させるかについても具体例に即して 示し、景観のもつ意味について考える。 同上同上 2004/11/08 1879170.doc 2 回テーマ内容 執筆担当 講師名 (所属・職名) 放送担当 講師名 (所属・職名)
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農村・定期市・都市 ―中心地理論から みた地理空間― 農村空間を背景に都市的集落が成立するプロセスを中心地理 論的に説明する。まず経済発展の低い段階では定期市システ ムが成立することを、J.H.スタインのモデルを用いて説明す る。ついで、定期市システムを克服して都市的集落の階層的 配置(中心地システム)が成立することを、W.クリスタラーの モデルを用いて説明する。 石原潤 ( 奈良大学教 授) 石原潤 ( 奈良大学教 授)
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計量革命1950 年代中葉のアメリカ地理学界で起こった計量革命(地理 学の理論化・数量化の動き)は、世界の地理学の学問内容を刷 新した。計量革命の背景を当時のアメリカの社会や地理学界 の現況と関係づけて説明するとともに、計量革命がめざした 新しい地理学(「空間の科学」としての地理学)について概説す る。 杉浦芳夫 ( 東京都立大 学大学院教 授) 杉浦芳夫 ( 東京都立大 学大学院教 授)
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都市システム都市をシステム論的に記述・分析する視点は、1960 年代から 人文地理学にとりこまれる。そこでは、個々の都市をシステ ムの構成要素とみなし、複数の都市間の機能的な関係を特定 する都市群システムの視点と、都市内部の部門間の関係から1 つの都市をシステムとみなす都市内部システムの視点から研 究が推進された。これらにより、時空間的な都市システムが、 どのように記述され、説明され、さらには予測されているか を述べる。 矢野桂司 ( 立命館大学 教授) 矢野桂司 ( 立命館大学 教授)
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都市空間と人間行 動 現代都市における都市化・郊外化の進行は、都市空間の拡大 とともに、都市内部の機能地域分化や居住地域分化をもたら す。こうした都市空間の構造変容を検討するとともに、そこ で繰り広げられる都市住民の日常的な活動(就業や通勤など) の空間的な展開を考察する。 岡本耕平 ( 名古屋大学 大学院教授) 岡本耕平 ( 名古屋大学 大学院教授)
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GIS 革命1980 年代後半に欧米で始まる地理情報システム(GIS: Geographic Information Systems)革命は、紙地図からデジ タル地図への単なるIT 技術の地理学の導入にとどまらず、地 理情報システム(GISystems)を地理情報科学(GIScience) へと展開させた。この革命がどのように進展したのか、そし て、膨大な地理情報と高速コンピュータの出現によって、ど のような新しい地理学的研究分野が拓かれたのかを紹介す る。また、バーチャル空間などの新しい空間概念の地理学へ の影響などに関しても、言及する。 矢野桂司 矢野桂司
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地理情報科学196070 年代に構築された地理学における様々な理論モデル は、GIS 革命を経て、膨大なデジタル地理情報の創出や、そ れらを処理するための高性能コンピュータやAI を始めとす る新しい分析手法の出現によって、現実世界に適用されるよ うになった。ここでは、大型店舗の進出によるインパクト分 析などのモデリング研究、GIS を活用した住民参加型の地域 計画手法を紹介する。 同上同上
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現代空間と人間情報技術の革新は、人々の生活空間に産業革命期に匹敵する ほどの大きな影響を与える可能性がある。情報化の進展は空 間的制約を取り除く一方で、新たな空間的差異を生み出しつ つある。同時進行する経済のグローバル化と絡めてこの問題 を検討する。 岡本耕平 岡本耕平 2004/11/08 1879170.doc 3 回テーマ内容 執筆担当 講師名 (所属・職名) 放送担当 講師名 (所属・職名)
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発展途上国の都市 生活 郊外化・情報化のすすむ先進国の都市に対して、発展途上国 では、農村から都市への人びとの移動が継続している。その 結果発生してきた都市のスコッター地区の生活の実態を紹介 し、住民の構成や移動性の高さを検討する。また住民のコミ ュニティーと行政の緊張関係のなかで、施設やサービスが 徐々に向上していることも示す。 池谷和信 ( 国立民族学 博物館助教 授) 池谷和信 ( 国立民族学 博物館助教 授)
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発展途上国の環境 問題 熱帯林の破壊、稀少動物の絶滅など、発展途上国の環境問題 がひろく報告されえいる。ここではそうした問題のひとつと して野生動物の保護をとりあげ、その住民との関係を検討す る。保護区での住民の資源利用がみとめられているアマゾン 上流と、保護区外への住民の移住がすすめられているカラハ リ砂漠を対比しつつ、その外部世界からの影響にも注目する。 同上同上
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人文地理学と現代 社会 現代社会における人文地理学研究の役割の例示にむけて、多 摩ニュータウンを対象に、前章までに示された手法を援用し て分析し、その人々の居住との関係を検討する。ベッドルー ム・タウンとして開発されたニュータウンが、高齢者や既婚 女性にとってはかならずしも住みやすくないことを示し、場 所の理解にいたる人文地理学研究の道を示す。 杉浦芳夫 杉浦芳夫