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2004/11/05 8920176.DOC 1

= 健康科学(‘05)=(TV)

−人々の健康を支える基盤−

〔 主 任 講 師: 多田羅 浩三(放送大学教授)〕

〔 主 任 講 師: 瀧澤 利行(茨城大学教授)〕

全体のねらい

平均寿命世界一の社会は、世界一多様な健康状態の人たちが生活する社会であり、そ

のような社会が求

めている新しい科学の役割こそ、「健康科学」が担わなければならないか。そうした

観点に立って、講

義ではヒポクラテス以来の人類の医学のあゆみ、また人々の健康を支える制度の構築

に先駆的な取り組

みをすすめてきたイギリスのプライマリケアの現状についての理解をもとに、21 世

紀の「健康科学」

が、人々の多様な健康状態を支える科学として、どのような方向を目指すべきか、考

えたい。

回 テーマ 内 容

執筆担当

講師名

(所属・職名)

放送担当

講師名

(所属・職名)


医学のあゆみ

その1

西洋医学の父といわれ、医神アスクレピオスを奉じて活躍し

た、ヒポクラテスの医学の、症状の観察、液体病理学、瘴気

論という方法と考え方、またヒポクラテスの医学を継承した

ローマ時代の医師、ガレノスの生気論を中心に、その内容、

特徴について学び、西洋医学の原点を確認したい。

多田羅 浩三

(放送大学教

授)

多田羅 浩三

(放送大学教

授)


2

医学のあゆみ

その2

人間の発見をモットーとする、ルネッサンスという時代を迎

え、ヴェザリウスの解剖学が生まれ、ハーベイ、ラマッツィ

ーニ、モルガーニ、ビシャー、シュヴァン、ウイルヒョウら

によるヒポクラテスの液体病理学への挑戦をつうじて得られ

た人間の疾病の本態についての理解、またスノー、パスツー

ル、コッホ、フレミングらによる瘴気論への挑戦、ナイチン

ゲール、ペッテンコーフェルらによる瘴気論の継承によって

進められてきた疾病への闘いのあとをたどり、その特徴につ

いて考えてみよう。(パスツール以下は、医学のあゆみ そ

の3で講義)

多田羅 浩三

多田羅 浩三


3

医学のあゆみ

その3

ヒポクラテスの医学において、最も重視されたのは症状の詳

細な観察と記録である。その伝統を継承したのは、シデナム、

ブールハーヴェであり、産業革命を背景に登場してきた病院

を舞台に区分収容という方法を取り入れ、症状の中に疾病を

発見するという診断学の手法を明らかにしたのがブライトで

ある。3 回の講義のまとめとして、長いあゆみを経て到達し

た現代の医学の特徴をふまえ、21 世紀の健康科学の目指すべ

き方向について考えてみたい。

多田羅 浩三

多田羅 浩三


イギリスのプライ

マリケアに学ぶ

その1

人々の健康を支え

るシステム

イギリスでは、1911 年の国民健康保険制度の発足以降、公衆

衛生、一般医の医療の上に、病院の医療が重ねられるよう、

プライマリケアの管理システムをどのように構築するか、

1948 年の国民保健サービスの実施を経て、100 年に近い取り

組みがすすめられてきた。講義では、その意義、特徴につい

て考えてみたい。現地にオックスフォード・プライマリケア・

トラストを訪問し、現状や課題について話しを聞き、紹介し

たい。

多田羅 浩三

多田羅 浩三


イギリスのプライ

マリケアに学ぶ

その2

人々の健康を支え

る施設

プライマリケアの中核を担っているヘルスセンター、また地

域の多様な住民を対象にした母子保健事業の拠点となってい

るファミリーセンター、在宅での療養を中心にしたケアをす

すめるために設置されている成人用、小児用のホスピスなど

が、人々のプライマリケアを支えている。オックスフォード

に設置されている、これらの施設を訪問し、施設の特徴や課

題について、話しを聞き、紹介したい。

多田羅 浩三

多田羅 浩三

2004/11/05 8920176.DOC 2

回 テーマ 内 容

執筆担当

講師名

(所属・職名)

放送担当

講師名

(所属・職名)


6

イギリスのプライ

マリケアに学ぶ

その3

人々の健康を支え

る多様な専門職

地域にあって、疾病ではなく人間を診るという理念のもとに

活躍している一般医、また健康課題のよき相談相手として活

躍している保健師、ナイチンゲール以来の伝統の中で在宅看

護を担っている地区看護師など、多様な専門職によって、人々

の健康は支えられている。これらの専門職の人たちをオック

スフォードに訪問し、その仕事ぶりを紹介したい。

多田羅 浩三

多田羅 浩三


7

現代社会における

健康問題の多様化

現代社会における健康問題は先進国においては、ライフスタ

イルの変化にともなう生活習慣病を中心とした慢性疾患と社

会構造の複雑化に起因する心身のストレス性疾患が増加して

おり、発展途上国では貧困による栄養障害や感染症がなお健

康阻害要因として大きな位置を占めている。文明化の過程で

疾病像がどの様に変化するかを検討しながら、現代社会にお

ける栄養、運動、こころの健康問題について検討してみよう。

瀧澤 利行

(茨城大学教

授)

瀧澤 利行

(茨城大学教

授)


8

ヘルスプロモーシ

ョンと健康増進

こんにち、多様化した健康問題を解決するための国際的動向

としてヘルスプロモーション運動が展開されている。個人の

健康向上のためのスキルアップや技術向上と社会的環境整備

の両面を指向したこの活動は、先進諸国においても発展途上

国においても共有できる理念・方法として普及している。こ

こでは、その理論的背景と具体的構成要素について、考察を

加える。

瀧澤 利行 瀧澤 利行


9

健康管理・健康教育

の新たな動向

急性疾患から慢性疾患への疾病像の変化にともない、プライ

マリケアの重要性が提起されるようになって久しいが、こん

にちではさらに健康管理においては根拠にもとづく健康管理

(EBHC)やケアの質管理の問題が論じられ、健康教育にお

いても行動変容からさらに住民参加型の健康教育へと方法論

が拡大している。ここでは、専門家の裁量や経験性への依存

にとどまらず、情報の共有による創造的・双発的な健康管理

と健康教育の動向を検討する。

瀧澤 利行 瀧澤 利行


10

健康と文化 人々の健康に関する働きかけは、前回までの講義で明らかに

されたような科学的方法論による追求とともに、個別の地域

や集団の文化性に強く規定される。人々の健康増進をその生

活の次元に合わせて融和的に実現するためには、対象集団の

文化的特性や地域的実情を十分に知る必要がある。ここでは

地域への保健活動の前提としての健康と文化的特性との関係

を主要な理論や実例を通して考えていくことにする。

瀧澤 利行 瀧澤 利行


11

人々の健康を支え

る事業‐成果と展

望−

わが国の公衆衛生は、保健所の機能を基盤として成長してき

た。近年、多くの事業が保健所から市町村へ移行している。

市町村が実施している母子保健事業、老人保健法による保健

事業、介護保険事業計画、健康日本21 地方計画などについて、

大阪府摂津市を訪問し、現状を中心に、その実績から、人々

の健康を支えている事業の役割、成果、展望などについて考

えてみよう。

多田羅 浩三

多田羅 浩三


12

健康の危機管理 人々の健康を支えるという課題について考えた場合、人々の

健康は、大きな公害や震災、流行病などによって大きな被害

を受けてきた。それらの経験から学ぶことは極めて多く、貴

重であると思われる。とくに戦後、わが国が経験した水俣病

やイタイタイ病、阪神淡路大震災、大腸菌O157 食中毒、バ

イオテロ、SAHS などの事例を振り返り、危機管理の基本的

なあり方について考えてみたい。

多田羅 浩三

多田羅 浩三

2004/11/05 8920176.DOC 3

回 テーマ 内 容

執筆担当

講師名

(所属・職名)

放送担当

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(所属・職名)


13

公衆衛生の役割と

展望

人類の公衆衛生は、19 世紀、産業革命を背景とした人口の都

市への集中と国際的な経済交流の発展を背景とした感染症の

流行という事態に直面して生まれた社会の制度である。フラ

ンクやチャドウイック、ラムゼイ、シモンらの活躍によって

構築されてきた、公衆衛生の伝統について学び、とくに社会

の関与が人々の健康に対し、どのような役割を担うことがで

きるか、公衆衛生の展望について考えてみたい。

多田羅 浩三

多田羅 浩三


14

健康日本21 の意義

− 国民の責務と

人々の健康−

西洋医学は、人類の疾病への闘いに大きな成果を挙げてきた。

その現代の優等生は日本である。昭和61 年には男女ともに平

均寿命世界一の記録を達成した。そのような実績にもかかわ

らず、わが国の生活習慣病による死亡数は激増している。平

均寿命世界一の社会は、最も多様な健康状態の人たちが生活

している社会である。結果として、人々の生活習慣、医療保

険制度、保健事業や福祉事業のあり方が厳しく問われている。

そのような状況の中ですすめられている、健康日本21 の意義

について考えてみたい。

多田羅 浩三

多田羅 浩三


15

人々の社会を

支える制度

人類の歴史の中で生まれ発展してきた制度の中で、とくにイ

ギリスの歴史にみられる、陪審制度、議会制度、大学、修道

院の解体と救貧法、プロフェッションの誕生、医療保障制度

の成立などにフォーカスをあてて、長い歴史の中で人々の社

会を支える制度が築かれてきた歴史について考えてみたい。

その中で、講義の最終回として、人々の健康を支える基盤が

目指すべき方向について、考えてみたい。

多田羅 浩三

多田羅 浩三