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2004/11/08
1884212.doc 1
=日本の食文化(‘04)=( TV )
〔主任講師: 原田信男(国士舘大学教授)〕
全体のねらい
日本における食文化の在り方を、世界的な視野で見直すとともに、その歴史的な背景を学ぶことで、我々の生活文化に
どのような特色があるのかを理解する。食文化は、単なる民族の嗜好ではなく、むしろ日本社会の長い歴史のなかで形
成されたものである。本講義では、食物の獲得と生産、食事作法、料理文化さらには地域差など、食文化のさまざまな
位相について、日本のおける実態と特色を明らかにする。
回テーマ内容
執筆担当
講師名
(所属・職名)
放送担当
講師名
(所属・職名)
1 食文化の日本的特
質
食を抜きにして、人間の生活や社会は存在しえないが、そ
の実態と特質は余り知られていない。まず世界史的な視野か
ら、東西の食文化の違いを認識し、その上で、日本が属する
東アジアの風土と食文化の特色を考える。日本の食文化が、
その地形・気候と幅広い文化交流のなかで成立したことを理
解する。
原田信男
(国士舘大学
教授)
原田信男
(国士舘大学
教授)
2 食文化史T・先史
日本列島における食文化の原像を考える。旧石器時代の食
べ物や食料獲得の実態を押さえ、それが縄文土器の登場によ
ってどのように変化したのか。また狩猟や漁撈の発展、さら
には弥生における水田稲作の本格的展開、古墳時代の大陸文
化の伝来によって、どのような食文化が展開したのかを理解
する。
松井章
(奈良国立文
化財研究所主
任研究員・京
都大学助教
授)
松井章
(奈良国立文
化財研究所主
任研究員・京
都大学助教
授)
3 食文化史U・古代
中国文化の影響を受けて成立した古代律令国家が、どのよ
うな食糧政策を採ったかを、法令や神話・祭祀などを通じて、
米と肉の問題を中心に考える。また日本料理の成立について、
どのような特色があったかを、大膳職・内膳司の問題や、平
安貴族の饗宴である大饗料理の在り方などから検討する。
原田信男原田信男
4 食文化史V・中世
古代に成立した米を至上とし、肉を穢れたものとする価値
観が、中世を通じて、どのように社会に浸透していくのかを
明らかにする。また公家・武家・寺社家の料理文化を考える
ため、庖丁流派の形成や茶の湯の発達、食品の全国流通など
の問題を踏まえ、精進料理・本膳料理・懐石料理の特色を検
討する。
同上同上
5 食文化史W・近世
近世における食生活の実態を考えるとともに、幕府法令な
どによって、どのような規制を受けていたのかを理解する。
また、中世後期にほぼ完成した日本の料理文化が、近世にど
のような展開を遂げるのかを、茶の湯・料理書・料理屋の問
題を中心に検討した上で、化政期における盛況の実態を明ら
かにする。
同上同上
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回テーマ内容
執筆担当
講師名
(所属・職名)
放送担当
講師名
(所属・職名)
6 食文化史X・近代
西洋文明の流入によって、それまでの食生活がどのような
変貌を遂げていくのかを明らかにする。西洋料理がどのよう
な形で、日本に入り、肉食の問題を含めて、どのように人々
の間に受容されていくのかを、日本の近代化という視点から、
軍隊生活や学校教育・工場労働などの問題に触れつつ考える。
高田公理
(武庫川女子
大学教授)
高田公理
(武庫川女子
大学教授)
7 食文化史Y・現代
戦後日本の食文化について、食糧難の時代から、高度成長
を経て、今日の飽食・グルメ時代に至る過程を振り返る。食
糧統制や闇市の問題をはじめ、アメリカの食料援助、台所の
近代化、インスタント食品・チルド食品の登場、グルメ番組
などのメディア情報、ファミレスやコンビニ等々の問題を取
り上げる。
同上同上
8 北海道の食文化
日本のなかでも、長く異域としての位置にあった北海道で
は、アイヌの人々が狩猟・漁撈や採取による食生活を営み、
一部では農耕も行っていた。その食文化の特色を、和人の食
文化と比較しつつ検討し、北方に暮らす人々独自の生活の知
恵を学ぶ。また近代以降に移住した和人の食文化についても
触れる。
原田信男原田信男
9 沖縄の食文化
沖縄もまた、日本からは長く異国として扱われ、独自に中
国との交流を行ってきた地域である。このため沖縄では、中
国料理や日本料理の影響を受けつつ、独自の食文化が形成さ
れた。日本のなかでは、北海道と同様に肉食文化が栄えた点
が注目される。その食文化の形成と特色を、ヤマトとの比較
で論じる。
同上同上
10 考古遺物と食文化
これまで食文化の研究は、主に文献史料によって行われて
きたが、近年発達が目覚ましい考古学の立場から、文献では
抜け落ちてしまう問題を扱う。眼に見えにくい花粉や種子、
少数ながら残存する動物の骨、トイレの糞に混じった食物の
残滓などから、今まで知られなかった食文化の位相を明らか
にする。
松井章松井章
11 民俗慣行と食文化
日本の食生活では、四季折々に食べ物の変化があり、しば
しば共同飲食が催される。また家々の年中行事や人生儀礼の
場でも、さまざまな食べ物が用意されたり、村々の祭りにお
いても、村人が寄り合って、芸能などとともに食を楽しむ風
景が見られる。こうした食の民俗や、食事作法の問題につい
ても論じる。
神崎宣武
(旅の文化研
究所所長)
神崎宣武
(旅の文化研
究所所長)
12 食器と食文化
食事をするための器は、単なる用具ではなく、彩りや盛付
けに心を配って、食の美学の演出に重要な役割を果たしてき
た。食事用具を構成する箸や膳、皿や椀などの機能と役割の
ほか、木器・土器・陶磁器・漆器など、材質による使い分け
も、食文化を考える上で、重要な問題となる。それらの意義
を検討する。
同上同上
2004/11/08
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回テーマ内容
執筆担当
講師名
(所属・職名)
放送担当
講師名
(所属・職名)
13 調理具と台所の文
化
食べ物を調理する調理具もまた、食文化の重要な構成要素
で、その系譜や歴史についても理解しておく必要がある。ま
た調理の空間である台所も、時代や地域によって大きく異な
り、それぞれの食文化の在り方と密接に関係している。ここ
では日本における調理具と台所の文化を、世界各地との比較
で論ずる。
山口昌伴
(GK
道具学
研究所所長)
山口昌伴
(GK
道具学
研究所所長)
14 アジアと日本の食
文化
日本は、大きく見れば、やはりアジアの一部で、食文化に
ついても、全く個別的に独自な発展を遂げたわけではない。
あくまでもアジアの食文化圏のなかで考える必要があるが、
その際に、アジア全体に共通するものと、地域的な限定を持
つものとを比較検討し、アジアと日本の食文化の特質につい
て論ずる。
森枝卓士
(札幌大学非
常勤講師)
森枝卓士
(札幌大学非
常勤講師)
15 和食と日本文化
これまでの講義を踏まえた上で、いわゆる和食と呼ばれる
もの実態と本質を検討し、日本の食文化全体について考える。
さらには食文化を中心に据えつつも、衣や住を含む生活文化
の日本的な特質について、外来文化との関係から、その形成
と展開を跡づける。和食から見た日本文化の特質について論
じたい。
原田信男原田信男