HOME - 1 - =自然と文化の記号論(‘02)=(TV 〔主任講師: 池上嘉彦(昭和女子大学教授) 全体のねらい 私達の回りのさまざまなものの多くは、何らかの意味を持つものとして私達に関わってきます。つまり、私達は<記号> (何かを意味するもの)に満ち満ちた世界に住んでるわけで、このことは生命体一般とその環境世界にまで拡げて言えるこ とです。人間の文化から自然の世界にかけてのさまざまな営みを記号現象として横断的に捉えてみる――現代の記号論の視 点と可能性について考えてみます。 回テーマ内容 執筆担当 講師名 (所属・職名) 放送担当 講師名 (所属・職名)
1 <ことば>と<ことば らしいもの> <記号>という用語から、どのようなものを思いつきますか。 <記号論>でいう<記号>は、私たちが日常<記号>ということで 思いつくより、遥かに柔軟な概念です。そのことを理解する ために、<ことば>から出発して、私たちの回りに厳密な意味 での<ことば>ではないけれども、<ことばらしいもの>がいか に満ち満ちているかを考える。 池上嘉彦 ( 昭和女子大 学教授) 池上嘉彦 ( 昭和女子大 学教授)
2 <ことば>の再認識 広く<ことばらしいもの>について考える際、<ことば>はそ の出発点となる理論的枠組を提供してくれる。<ことばらしい もの>の範囲を拡げていくにつれて、<ことば>のどういう特徴 が薄れ、またどういう特徴が加ってくるか−<ことばらしいも の>がどこまで<ことば>らしいかを考える。 同上同上
3 < 意味> の意味 既に説明の中で何度も出てきた<意味>とは、一体どのよう なものと考えればよいのか。<意味を担うもの>と<担われる意 味>という二項関係でなく、それにその意味が関わる<主体>を 加えた三項関係として考えてみる必要のあること、そのよう な主体にとって差異を生むような差異がその主体にとっての <意味>であると考える。 同上同上
4 記号の諸相(1) <記号>と呼ばれるものには<記号表現>と<記号内容>という 二つの側面がある。この二つの側面の間にはどのような関係 があるのか。<有契>と<無契>という概念、それに基いての<記 号>の分類の試みについて考える。 同上同上
5 記号の諸相(2) <記号>の二つの側面としての<記号表現>と<記号内容>のそ れぞれについて、<二重分節>、<表示義>と<共示義>、<有徴> と<無徴>、<プロトタイプ>など、考察に必要な基本的概念の いくつかを学ぶ。同上同上
6 記号の諸相(3) いくつかの記号が集まって、<メッセージ>あるいは<テクス ト>と呼ばれるまとまりが構成される。そのような、まとまり をなすということは、何によって達成され、保証されるので あろうか。 同上同上
7 記号の諸相(4) <メッセージ>あるいは<テクスト>の<機能>の諸相を考え る。とりわけ、それらのコミュニケーションの手段としての 実用的な働きとは際立った形で対立する<美的機能>と呼ばれ る側面、および、<機能>が<構造>を規定するというテーゼに 注目する。 同上同上 - 2 - 回テーマ内容 執筆担当 講師名 (所属・職名) 放送担当 講師名 (所属・職名)
8 記号現象としての 文化(1) <文化>を<記号> (ないしは<記号現象>)として捉える<文化 記号論>の考え方と実践を学ぶ。まず、<ことば>の関与の大き い広義の<文学>と呼ばれるものへの記号論的アプローチを考 える。池上嘉彦池上嘉彦
9 記号現象としての 文化(2) <ことば>よりも<イメージ>的なものが中心的に関与する広 義での芸術的なジャンル(写真、絵画など)についての記号 論的アプローチを考える。 同上同上
10 記号現象としての 文化(3) 人間の生活での衣食住に関わるさまざまな営みについて、 記号論的に考えるということはどのようなことかを学ぶ。 同上同上
11 記号現象としての 文化(4) 現代の人間の日常の生活は、メディアを通してのあらゆる 種類の記号の洪水の中で営まれている。広告、消費などとい った生活の側面についての記号論的なアプローチを取りあげ る。同上同上
12 記号現象としての 生命(1) 生命の営みを<記号現象>として考えるまず最初の段階とし て、人間以外の動物や植物がその生きるという営みの中で<こ とばらしいもの>とどのように関わっているか―<動物記号 論>、<植物記号論>と呼ばれる分野を眺めてみる。同上同上
13 記号現象としての 生命(2) 生物体にとっての<環境世界>と呼ばれる概念について検討 する。生物体にとっては、外から入ってくる刺激に対して、 自らの生存にとってそれが持つ意味に応じて適切に反応する という営みが欠かせない。どの生物体も、自らとの関連で意 味づけされた世界を持っているのである。
同上同上
14 記号現象としての 生命(3) さらに一歩踏み込んで、生命体の体内で生命維持のために なされているさまざまな営みにも、基本的には、関係する組 織の間での意味の伝達、解読という記号過程が関わっている ―こういう<生命意味論>の考え方を検討する。同上同上
15 記号の進化 人間が関わる記号の成立、進化ということについて、人間 の身体性、人間の置かれている環境、そしてそこでの人間の 経験といった要因が深く関与する。記号に刻印された人間ら しさを確認する。同上同上