HOME
2004/11/08 1137018.doc
科目名集団と環境の生物学(03) 1/3
=集団と環境の生物学(‘03)=(TV)
〔主任講師: 松本忠夫(東京大学教授)〕
全体のねらい
自然界における生物は、家族、群れ、群体、群落、混群、種個体群、群集などのさまざまなレベルの集団としてとらえる
ことができる。いかなる環境のもとでは、いかなる生物集団が成立しているであろうか。本講義では無機的環境および生物
的環境と生物集団の成立との関係における論理性を説明するとともに、人間の活動がそれらの集団に与える影響についても
説明する。
回テーマ内容
執筆担当
講師名
(所属・職名)
放送担当
講師名
(所属・職名)
1 生物集団の成り立
ちと環境
生物の集団は、家族、群れ、群落、種個体群、群集などと
いったさまざまな大きさのレベルでとらえることができる。
また、群集には食物連鎖構造をみることができる。現実的に
はそのような種々の集団は無機的および生物的環境との関係
でさまざまな変異性をあらわしている。ここでは生物集団が
成立する過程において環境からどのような影響を受け、また
逆に環境にどのように影響するかを総覧する。
松本忠夫
(東京大学教
授)
松本忠夫
(東京大学教
授)
2 動物の繁殖と社会
通常の動物の個体は、植物と異なり大きく動けるので、繁殖
活動において個体どうしの離合集散が見られる。また、親に
よる子への投資の様相も多様である。そのような動物個体の
繁殖活動を説明すると同時に、個体間の関係が統合された状
態を社会としてみることができることを説明する。そして、
個体行動と社会性の発達の関係を考察する。
同上同上
3 生態系の成り立ち
の基礎
生態系の基礎となる植物による物質生産(基礎生産、一次
生産)および植物の生理生態を説明する。そしてそのことの
理解が地球上の(陸域)生態系レベルでの炭素蓄積・収支の
理解に役立つことを述べる。また、なぜ森林のような炭素蓄
積系ができたのかについても,受光競争の観点から理解して
もらう。
甲山隆司
(北海道大学
教授)
甲山隆司
(北海道大学
教授)
4 植物の繁殖と個体
群過程
植物における受粉、種子散布、密度効果、種間競争などの
個体群過程について説明する。また、種間競争に留まらず,
群集(多種系)について、また、生物多様性の維持機構の生
態学的側面、あるいは遷移についても触れる。同上同上
5 生物の地理的分布
地球上における生物の地理的分布は、水平分布および垂直
分布としてとらえることができる。そのような分布は気候条
件に強く支配され、また地形や地質も関係している。それば
かりでなく、大きくは大陸の動きなど地史の影響も強く受け
ている。また、数万年間以前からのヒトの活動の増大ととも
に、世界各地の生物相が著しく変化してきたことも最近分か
ってきている。(屋久島での現地ロケを含む。)
松本忠夫松本忠夫
6 熱帯環境と生物
1年中、高温多湿な熱帯の陸地環境には熱帯林が成立し、
そこには膨大な種数の生物が生息している。熱帯の生物の様
相を説明するとともに、熱帯においてなぜ生物相が著しく多
様なのか、その理由について考察する。また、生物間の共生
関係が著しく発達していることを説明する。
松本忠夫松本忠夫
2004/11/08 1137018.doc
科目名集団と環境の生物学(03) 2/3
回テーマ内容
執筆担当
講師名
(所属・職名)
放送担当
講師名
(所属・職名)
7 高山、極地環境と生物
標高の高い高山に生育する高山植物は低温、強風、積雪な
どの極限環境下に生育している。日本の高山植物は長い間に
高山の環境に適応したものであり、それらは日本列島で独自
に進化したものもあれば、北極域から氷河期に移動してきた
ものもある。ここでは極限環境に生育している植物の形態学
的及び生理学的性質について説明し、環境適応について考え
る。また北極や南極に生育する植物について説明し、日本の
高山植物との関係を考察する。
増沢武弘
(静岡大学教
授)
増沢武弘
(静岡大学教
授)
8 砂漠と生物
地球上に広くひろがる砂漠について、分布および各々の特
徴を図示する。その中でも植物の乾燥条件に対する形態学的
および生理学的適応現象を「水の利用」という側面から説明
する。具体的には南米のアタカマ砂漠とペルー砂漠の植物群
落についてスライド、映像を用いて述べ、どのようにして乾
燥条件下で生育しているかを、ともに考える。砂漠の季節草
原ロマスについては「水の利用」という観点から大変わかり
やすい群落であるため、特に強調したい。
同上同上
9 海洋環境と生物
生物にとっての海洋環境の特徴について、「水」という媒
質のもつ性質を解説し、それを踏まえて海洋での光、栄養、
水温などの環境要因の特徴を紹介する。ついで、海洋の生物
について、植物・動物・微生物の全般にわたり、海洋を生活
場所にする生物とそれらの特徴を紹介し、それらの生物によ
って作られている海洋生態系の構造と機能を外洋、沿岸、湧
昇域について説明する。その他、最近注目されている熱水生
態系についてもその存在と特徴を簡単に紹介する。漁業活動
による生態系影響にも触れる。
高橋正征
(高知大学教
授)
高橋正征
(高知大学教
授)
10 湖、河川、湿地環境
と生物
陸域の水域環境として、湖・河川・湿地・地下水を取り上
げてそれらの環境の特徴と相互のつながりなどを解説する。
ついで、それらの水域環境を生活場所としている生物、なら
びにそれらがつくりだす生態系の構造と機能を概説する。陸
域の水域環境と生物によって影響される地球環境の部分につ
いても触れる。
同上同上
11 島における生物
周囲の環境から孤立した島における生物相は、そこへの生
物の移住と絶滅のバランスの上に成立している。また、大陸
とは異なった固有の生物が進化しやすいことを説明する。こ
のような島の生物相の成り立ちを理解することは、生息地が
分断化された生物群集の保全に役たつ知識が得られることを
考察する。(奄美大島での現地ロケを含む)
松本忠夫松本忠夫
12
地球環境問題1
(地球温暖化およ
び砂漠化と生物)
二酸化炭素などの温室効果ガスの増加と地球温暖化傾向と
の因果関係について述べるとともに、地球温暖化に伴う海面
上昇と砂漠化促進の可能性、熱帯病や熱帯害虫の分布が拡大
する可能性、逆に高山や北方の生物が絶滅する可能性、につ
いて講義する。
東正剛
(北海道大学
教授)
東正剛
(北海道大学
教授)
13
地球環境問題2
(オゾン層破壊お
よび内分泌攪乱物
質と生物)
日本の南極観測隊によって世界ではじめてオゾンホールが
発見された経緯、オゾンホールができるメカニズムを紹介す
るとともに、紫外線量の増加が生物集団と地球環境に及ぼす
影響について考察する。また、もう一つの地球環境問題であ
る内分泌攪乱物質がヒトや生物集団に及ぼす影響について講
義する。
同上同上
2004/11/08 1137018.doc
科目名集団と環境の生物学(03) 3/3
回テーマ内容
執筆担当
講師名
(所属・職名)
放送担当
講師名
(所属・職名)
14 生物環境の保全と
回復
種の絶滅の危機の現状とその要因を明らかにするための科
学的なアプローチと、それにもとづいて生物環境、すなわち、
生物多様性と健全な生態系を保全し回復するための方策、す
でに始まっている取り組みなどを紹介する。(一部、霞ヶ浦
でロケ)
鷲谷いづみ
(東京大学教
授)
鷲谷いづみ
(東京大学教
授)
15 外来生物の移入と
その影響
生物多様性の保全にとってもっとも大きな脅威と考えられ
ている外来生物の侵入の問題とは何か、侵入がもたらす生態
系や社会への影響、外来種を対象とした生態系管理のあり方
などについて述べる。(一部、奄美大島でロケ。マングー
スほかの深刻な影響と駆除の事業、森林総研の山田文雄さん
にゲスト出演していただく)
同上同上