HOME 2004/11/08 1891715.doc 1 = 線型代数学(‘04)=( TV 〔主任講師: 長岡亮介( 放送大学教授) 〕 全体のねらい 線型代数は数理諸科学はもちろん、いまや経済金融や統計の理論的な記述をはじめ、ほとんどすべてのシミ ュレーションの分野で不可欠の道具となっている。そしてますます開拓されて行く広範な応用を支えるの は、結果の利用ではなく、理論の確実な理解である。本科目は、線型代数(行列と行列式)の入門的部分につ いての知識を前提として、その知識の背後に潜む数学的諸原理を、その応用を視野において講ずるものであ る。多様な関心をもって本科目にアプローチしてくる学生諸君がそれぞれの分野での自在な応用ができるよ うに、思想として広く、技法として確実な線型代数の理解を目標とする。また、国際化時代の学習環境を意 識して放送講義では、一部に英語を取り入れる。数学は蓄積的な学問であるので、共通科目「線型代数入門」 「初等微分積分学」を先に履修するのが好ましい。 回テーマ内容 執筆担当 講師名 (所属・職名) 放送担当 講師名 (所属・職名)
抽象代数系の諸 概念(1): 現代数学においてもっとも重要な枠組みの一つである‘構造’ (structure)の理解に向かい、もっとも基本的な‘代数構造’ として‘群’(group)を取り上げ、その基礎構造、とりわけ、 剰余類、商群のような初心者に馴染みにくい概念の確実な理 解を目指す。‘構造’を語る上で本質的な‘同型性’の概念 を歴史的な概念を引用して確実な理解を目指す。 長岡亮介 (放送大学 教授) 長岡亮介 (放送大学 教授)
2 抽象代数系の諸 概念(2): 前章で論じた抽象的な論述を肉付けするため、具体的な群の 構造を紹介する。 有限群の基本である巡回群をはじめ、変換群や2 面体群など、 動的な映像を通じてでないと理解しにくい諸概念を紹介す る。 同上同上
3 抽象代数系の諸 概念(3): 群より複雑な代数構造として、環と体について学ぶ。抽象的 な構造だけでなく、いわゆる数体(実数体、複素数体,円分体) について、特に、その基礎にある複素数体について、その数 学的合理化を含め、やや詳しく紹介する。 同上同上
4 抽象線型空間: 群、環、体の概念の入り交じる総合的な代数構造として線型 空間を導入する。 「方向と長さをもった量」といった素朴なベクトルの概念の 限界が克服されることがわかるはずである。同時に、「方向」 や「大きさ」を論ずるために基礎的枠組みとして「計量」の 数学的定義に進む。 同上同上
5 線型写像の基本 概念: 抽象的な線型空間から抽象的な線型空間への抽象的な線型写 像(線型変換)の概念を定義し、それが行列という具体的な表 現をもつことを示す。その際、線型空間の基底の選び方がそ の表現に本質的に関わって来ることを理解する。 同上同上 2004/11/08 1891715.doc 2 回テーマ内容 執筆担当 講師名 (所属・職名) 放送担当 講師名 (所属・職名)
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線型写像の表現 の単純化: 前章での理解を踏まえ、基底の選び方を変更すると、それが 線型写像の表現にどのように関わってくるかのメカニズムを 理論的に理解する。「基底の取り替え行列」と呼ばれる簡単 そうで意外に難しい概念の確実な理解を目指す。長岡亮介長岡亮介
7 不変部分空間か ら固有ベクトル へ: 線型代数においてもっとも重要な三角化の話題に入るための もっとも重要な理論的な準備を行なう。すなわち、線型変換 は、それに関して‘不変’な部分空間をもつときには、形の 良い行列で表現できる、という定理の紹介である。 同上同上 8 固有値と固有ベ クトルと行列の 対角化: 前章の最後に論じる「不変部分空間の直和への分解」の究極 の形として、固有空間(固有ベクトル)、固有値の概念が自然 に登場することを示す。 さらに、具体的な変換について、固有値、固有ベクトルの計 算方法を示す。 同上同上
9 複素行列の世界: 「想像上の数」を成分にもつ行列(複素行列)の世界でこそ、 対角化についての議論が美しく単純に叙述できることを示 す。エルミート行列、ユニタリ行列と呼ばれる有名な行列の 重要性が納得できよう。 同上同上
10 線型代数の応用: (1) --- 2 次形式: 前章で達成した「実対称行列は直交行列を用いて対角化でき る」という定理を踏まえ、いわゆる2 次形式の分類を紹介す る。これにより、一般的な2 次曲線、2 次曲面が、係数で作ら れる行列の計算だけで判定できることが実感されることにな ろう。 同上同上
11 線型代数の応用 (2) --- 微分方程 式: 同じく、応用として線型常微分方程式(ODE)の解法を取り上げ る。線型常微分方程式は、17 世紀にその開拓が始まった数理 科学の華ともいうべき強力な問題解決の方法である。これを 統一的に論ずる方法は線型代数の応用として取り上げられ る。 同上同上
12 ジョルダンの標 準形(1): すべての行列に「対角化」を望むことは理想的すぎる。「三 角化」で甘んじることは消極的すぎる。両者の中間にあるの が、ジョルダンの標準形である。しかし、ここにたどり着く ための「理論の山道」が険しすぎるため、最近では講義から 避けられてしまうことも少なくない。 本講義では、険しい道を迂回する方法で、ジョルダンの標準 形に向かう。 同上同上
13 ジョルダンの標 準形(2): 前回を受けて、ジョルダンの標準形の計算方法を具体的 に講ずる。 同上同上 2004/11/08 1891715.doc 3 回テーマ内容 執筆担当 講師名 (所属・職名) 放送担当 講師名 (所属・職名)
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線型代数の応用 (3) --- ジョルダ ンの標準形と微分 方程式: ジョルダンの標準形を利用することによって、解くことので きる線型常微分方程式の世界が拡大することを学ぶ。 長岡亮介長岡亮介
15 線型の世界,非線 型の世界: 線型代数の方法で世界を解析することの方法を総体的な視点 から反省し、また、近年話題とされることの多い非線型の世 界にはこの方法からの類推が通用しないことを様々な視点か ら考察する。さらに線型代数の新しい潮流にも触れる。同上同上