2004/11/05
1625810.doc 1
= 心理学史(‘05)=( TV)
〔主任講師: 西川泰夫( 放送大学教授)〕
〔主任講師: 高砂美樹( 東京国際大学教授)〕
全体のねらい
今あるような心理学はなぜそのようにあるのか。広く周知されている心理学であるがそもそも心理学
とは何であり何でないのか。その起源をはじめどのような背景と経過の中で形成されてきたのか。また
その立ち上げに直接間接にかかわる先達たちはどのような人物か。日本の心理学史に焦点を合わせ、そ
の移入と定着、拡大展開の過程を世界の心理学の動向に重ね各役割を担った人物を通して紹介する。
回テーマ内容
執筆担当
講師名
(所属・職名)
放送担当
講師名
(所属・職名)
T 日本の心理学の起源(ルーツ)−幕末から明治期―
1
「心理学史」への導
入
主任講師、分担講師紹介。当科目受講に当たっての手引き。
心理学史の位置づけ。全体の講義項目・概要紹介。
心理学成立前夜。哲学的心理学から新心理学(科学的心理
学・実験心理学)へ。自然科学の興隆。擬人論から機械論へ。
ものから生命へ、生命から心(意識・精神)へ。心をめぐっ
てー二元論から一元論へー。
日本の心理学の黎明期・前夜。幕末から明治初頭の海外留
学生。西周の略歴(生育環境(島根県津和野)や森鴎外との
関係)。西周の果たした役割。育英舎。百学連環。近代西洋
科学の分類体系化。「心理学」という学名の起源と語源。そ
の他の訳語。性理学と心理学。ジョセフ・ヘブンとその著作。
大学教育制度の中の心理学。外山正一。お雇い外国人教師。
哲学的心理学から科学的心理学へ。
西川泰夫
(放送大学教
授)
西川泰夫
(放送大学教
授)
高砂美樹
(東京国際大
学教授)
佐藤達哉
(立命館大学
助教授)
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彼が4歳の時にペリー黒船来航し、のちに脱藩。幕府からオランダ留学。やがて塾を開き心理学が |
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サイコロジーは性理学
精神哲学が心理学
しかし現在はサイコロジーが心理学。
どうしたことか? |
心理上の哲学が後に心理学になる |
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心理学のわが国へ
の移入と定着過程
哲学的心理学から科学的心理学への移行を担った人々。デカ
ルトの心身二元論と心身問題への取り組み。ホッブスの一元
論。ウエーバーの触2点弁別実験。フェヒナーの精神物理学
と対数法則。ヘルムホルツの神経伝導速度の計測。アニマル・
スピリッツの正体。ドンダースの反応時間減算法による心的
構成要素の解明。
新心理学(科学的心理学、実験心理学)の開祖。W.ヴント、
W.ジェームズ。新心理学をわが国へもたらした日本の心理学
の開祖、元良勇次郎。クラーク大学総長に就任したG.S.ホー
ルとその下で学んだ日本人たち。新心理学のわが国における
定着と拡大に大きな役割を担った大学教育制度。東京大学(帝
国大学、東京帝国大学)と私学(同志社、東京英学校・東京
英和学校(青山学院)、慶応義塾など)。
ヴント、ジェームズ、ホール、元良略歴紹介。
西川泰夫西川泰夫
フェヒナー |
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ヘルムホルツ |
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刺激が伝わるのは電気現象 |
3
元良勇次郎―わが
国最初の心理学者
―
元良勇次郎の人物像と心理学への貢献。略歴(兵庫県三田市
生まれ。生家跡と記念碑。幼少期の知的環境。キリスト者と
しての勇次郎)。同志社進学からアメリカ留学まで。アメリ
カ留学。ボストン大学からジョンズ・ホプキンズ大学へ。G.
S.ホール。
元良の学位論文。留学中の交友関係(一葉の写真、佐藤昌介、
新渡戸稲造、長瀬鳳輔、元良勇次郎)。
帰国後の活躍について(前期・中期・後期)。帝国大学講師
に就任。精神物理学の担当。帝国大学教授就任。著作と研究
紹介。心理学の制度化。
注意の研究。禅の研究。
「精神物理学実験場(実験室)」開設。建物の概観。
二度目の外遊。晩年の研究。心理学者としての位置づけと弟
子の育成。
佐藤達哉佐藤達哉
4
松本亦太郎と千葉
胤成―心理学の定
着と広がりー
松本亦太郎経歴。千葉胤成経歴。日本で二番目の京都帝国大
学の設置と松本亦太郎による心理学実験室の開設。心理学出
身者の増大と社会的な認識の広がり。応用心理学。
世界の心理学との接点。ヴント。ヴント文庫(東北大学ヴン
ト文庫)。スクリプチュアー。ラッド。
高砂美樹高砂美樹
U 大正期から昭和期前半―第二次世界大戦の戦中・戦後期まで―
ブント文庫 |
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6000冊=当時2万(現在2000マン円ぐらい) |
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日本の心理学の広 がり 大学心理学(アカデミック・サイコロジー)の確立から日本 心理学会設立(1927(昭和2)年)のころまで。アカデ
ミック・サイコロジーとフォーク・サイコロジー。帝国大学 の拡充と整備。大学令(旧制、1918年公布)と私立大学
の成立。心理学研究室(心理学実験室)開設拡大と整備。 大学制度の整備拡充に伴う心理学の拡大と担い手。 帝国大学制度の変遷と心理学。元良の弟子たち。松本亦太郎
の略歴。東京大学文学部卒業生名簿から。 その他の海外留学生の役割。 日本心理学会設立の背景。機関誌の発行と研究大会(年次大 会)の開催、会務の遂行。
名称としての「心理学会」などの変遷。「心理学会」、「心 理学通俗講話会」(雑誌、心理学通俗講和)、「心理学研究
会」(雑誌、心理研究)、「日本心理学会」(雑誌、日本心 理学雑誌(京都大学版、東京大学版))、日本心理学会(雑
誌、心理学研究。日本心理学雑誌と心理研究を廃止)。 「全日本心理学大会発起人有志者代表、松本亦太郎」 の呼びかけによる「全日本心理学大会」を改めて「日本心理
学会」とする。 第1回日本心理学会大会の発表プログラム構成。 以後の簡単な変遷史。 西川泰夫西川泰夫
6
久保良英、田中寛
一、鈴木治太郎
知能検査の日本への導入をめぐって。知能の操作的定義。知
能検査法。知能指数。
ビネー。シュテルン。ターマンなど海外での知能研究を追い、
その日本への導入者である久保良英、田中寛一、鈴木治太郎
の経歴と考え方を追う。
発達心理学、教育心理学などの展開についても扱う。
佐藤達哉佐藤達哉
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回テーマ内容
執筆担当
講師名
(所属・職名)
放送担当
講師名
(所属・職名)
7
森田正馬、中村古
峡、内田勇三郎
当時変態心理学と呼ばれていた臨床心理学の動向について。
精神分析学、分析心理学、深層心理学など。クレペリン、フ
ロイド、ユングなど海外の動向。
森田正馬、中村古峡、内田勇三郎の経歴と考え方を検討。内
田・クレペリン・テストなどの検査法の開発。
佐藤達哉佐藤達哉
8
黒田亮、増田惟茂比較心理学。学習心理学。行動の心理学的研究。日本におけ
る動物心理学の発展。東京帝国大学心理学研究室。京城帝国
大学心理学研究室。動物心理学会。
ダーウイン。ロマニーズ。パヴロフ。ワトソン。
増田惟茂経歴。黒田亮経歴。
高砂美樹高砂美樹
9
佐久間鼎、小野島右
左雄
ゲシタルト心理学とは。グラーツ学派。ベルリン学派。C.
シュトュンプ。ヴェルトハイマー。仮現限運動。プレグナン
ツの法則。ケーラー。洞察学習。レヴィン。トポロギー心理
学、グループ・ダイナミックス。日本におけるゲシタルト心
理学の導入。
高木貞二。佐久間鼎経歴。小野島右左雄経歴。
九州帝国大学心理学研究室。建物の構造と概観。
レヴィン来日。
高砂美樹高砂美樹
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中島泰蔵、堀梅天、
横山松三郎
クラーク大学で学位を取得した日本人たち。その他の海外留
学生たち。
私立大学の心理学研究室(実験室)の創設者たち(その1)。
実験心理学。実験機器。
早稲田大学の場合。中島泰蔵経歴。ミュンスターバーグ。テ
ィチェナー。反応時間。情動反応の計測。
慶応義塾大学の場合。堀梅天経歴。横山松三郎経歴。
ホール。ボーリング。
西川泰夫西川泰夫
11
城戸幡太郎、渡辺
徹、今田恵
私立大学の心理学研究室創設者たち(その2)。そうした研
究者が取り組んでいた応用領域、特に教育心理学、および障
害とリハビリテーションの心理学の展開についても検討す
る。城戸幡太郎、渡辺徹、今田恵の経歴。また、戦争と心理
学の関係についても考察を加える。
佐藤達哉佐藤達哉
V 第二次世界大戦後の心理学の復興と新たな展開―
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概要日本心理学会の変遷。設立以降から、戦前、戦中、戦後の復
興、そして現在へ。「日本心理学会」から「心理学会」へ。
「心理学会」の組織形態。役員。第二次世界大戦後の日本の
心理学の復興。「心理学会」から「日本心理学会」へ。
日本心理学会大会の変遷。機関誌「心理学研究」の中断と復
活へ。京都アメリカ研究セミナー。
グレアム教授(コーネル大学)による京都実験心理学セミナ
ー(1957)。日程、参加者リスト、セミナーのテーマ、
ならびに文献リスト。セミナーの戦後の日本心理学へ果たし
た役割。一心理学徒のルーツ。日本心理学会以外の多彩な学
会の設立と活動。
西川泰夫西川泰夫
2004/11/05
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回テーマ内容
執筆担当
講師名
(所属・職名)
放送担当
講師名
(所属・職名)
W 補遺
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日本の女性心理学
者
戦前における女性の高等教育。
日本の教育制度の中の女子高等教育。
原口鶴子の場合。その経歴。高良富の場合。その経歴。女子
教育と松本亦太郎。
海外での受け入れ教員となったソーンダイクなどアメリカ心
理学者について。
その他の女性心理学者。実生すぎ。久保(黒瀬)艶子。波多
野(畠山)勤子。
高砂美樹
高砂美樹
14
日本の心理学の境
界設定
血液型と性格、念写・透視、心霊現象、妖怪、超感覚現象な
どにチャレンジした心理学者たちを追う。彼らは何を目指し
どのような研究を行ったのか。そしてその帰結はどうであっ
たのか。井上円了、古川竹二、福来友吉の経歴と考え方を扱
う。クレッチマー、ジェームズなどの当時の世界の心理学者
についても検討する。
佐藤達哉佐藤達哉
X 日本の心理学の位置づけ
15
15 心理学史か
らのまとめと課題
世界の心理学の潮流からみた日本の心理学。
さまざまな心理学派。機能主義と構成主義。戦後の日本にお
ける心理学教育。心理学の資格をめぐる問題。心理学史の資
料収集と保存。心理学史アーカイヴズ。心理学史の教育をめ
ぐって。
高砂美樹西川泰夫
高砂美樹
佐藤達哉