紳士:

本を書いているうちに、僕の精神は研ぎ澄まされていった。

チリジリに分散していた、意識が焦点を結んだかのようだ。

収容所であつい演説をした時のようなエネルギーが満ち始めていた。

 

小さなバーでは、お客がいろんな話をしてくる。

ある夜、紳士がバーに来た。

なにか思いつめた様子だったが、ビクトリアのピアノの音色がやさしく包み込んだ。

フランクの作るカクテルにほろ酔いになった頃、妻に先立たれた苦悩を語り始めた。

 

フランクは、紳士にギムレットを作りながら、こう答えた。

 

フランク:もしあなたが先になくなっていたら奥様はどうだったでしょう?
紳士:妻は苦しんだと思います。
フランク:その苦しみから奥様を救ったのはあなたです。
紳士:私が生きたことに意味があるということ・・・

紳士はフランクの手をそっと握ると、帰っていった。

 

 

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