哲学者
ギムレットをもらえないかい?
評判を聞きつけた、しかめっ面の哲学者がやってきた。議論をしにきたようだ。
哲学者:君は意味を与えれば何でもいいと思っているのか?
フランク:いや、それだけじゃダメです。あくまで、究極的な人間の実存であるロゴスの覚醒に通じる意味でなければなりません。
哲学者:運命の意味を知る方法は?
フランク:人生はほとんどが一回性の課題の連続で成り立っています。
それには、良心の声に素直になることです。
哲学者:意味なんぞ出て来る所があるとでもいうのか?
フランク:ロゴスからです。フランク 三次元の図を描いて見せた。
3次元の円柱を投影すると2次元の壁面にとっては、四角や円にしか見えません。次元の高い存在は、低い存在から認識できないのです。
床や壁に映るのは意味、発信源は、中の立体そのもの。これがロゴスです。
哲学者:ロゴスとは?
フランク:魂自身が知っているのです。人生に訪れる試練の意味が何であるのかを。
哲学者:謝った意味付けをしている人もいろか?
フランク:はい、自己を必要以上に自己処罰するという行為です。人は意味なくして生きられませんから、苦しんでいる意味をわざわざ見つけ出します。
苦悩は魂を成長させますが、苦悩自体が目的化してしまってはいけません。成熟の機会を拒否することです。これはロゴスの本領を発揮するという本質から外れています。
それは第三者を傷つけることもあるでしょう。
哲学者:本当に意味あるものとは?
フランク:断片的な言葉でいうと、希望、信仰、使命感や責任感、愛や美の体験。整理すると3つの価値になる
1) 創造価値:創造的行為を通して得られる意味。
有形無形を問わず、価値ある何かを創造する行為。例えば、教育、芸術、学問でもいい。
2) 体験価値:体験を通して得られる意味
創造は能動的だが、受動的でも得られるのが、体験価値。自然や芸術に触れたり、愛を分かち合ったりすること。
3)態度価値:苦悩的運命に対し理性的態度を取ることで得られる意味
創造価値、体験価値もなにも得られなくても、それでも、我々は意味を見出せる。
フランク:この3つ目が最も大切です。
哲学者:最後の態度価値を発揮された患者さんの例を教えてください。
フランク:沢山いますよ。あるデザイナーの話をしましょう。
彼はある日悪性の脊髄腫瘍で手足が麻痺して絵をかけなくなった。
ここで彼は、創造価値を失った。それでも彼は、本を読んだり、車椅子をを押してもらってですが、遊歩道の並木に感動し、体験価値の生活を送っていた。
いよいよ末期になり、目も見えなくなった時、彼はこういった。
「また今夜も先生を夜中に起こしてしまっては、申し訳ない、モルヒネを打ってください」
哲学者:なるほど、もし彼が今でも生きていたら、最高のデザイナーになっていたかもしれませんね。
そういうと哲学者は、涙を流した。
哲学者:フランク先生・・・・実は、私、末期の癌だったんです。でもこれからは、誇りをもてます。ああ・・・思い出すことができました、自分の哲学を誇りとは他人に与えられるものではなく自分の課題を乗り越えた時に自分だけが獲得できるものだと・・・
哲学者は静かにドアを閉めて行った。