1991年講和 |
宇宙における生命
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スティーブ ホーキング
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そのかわり、時空と呼ばれる四次元的なものの中で、時間は空間と結びつくのです。
この時間にそってすべてもののはそのエントロピーの増大する傾向に支配されるわけであるが、生命だけはこれに反している。生命は、無秩序へ向かう傾向に反して、自らを維持でき、自分自身を複製できるような、秩序あるシステムと定義できる。(そうエントロピーは増大するか?) 生物は2つの要素からなりたつ代謝と自己複製と呼ばれている。 私たち自身も含めて生命の大部分の形態は、寄生体といえる。コンピューターウイルスは人類の作った唯一の生命体といえる。
地球型DNAが宇宙の放射線の中で生き残る可能性はきわめて少なく確率としてはこの地球上で進化したといえるでしょう。但し、もとの物質が地球外からきた可能性はあります。
最初の細胞から多細胞へと進化するのに25億年費やし、魚類と爬虫類を経て哺乳類に進化するのには更に10億年かかっています。しかしそれ以降進化は早くなっているといえるでしょう。初期の哺乳類から私たちに進化するにはおよそ1億年しかかかっていないのです。 この進化が、DNAが発生したときの重要性にも匹敵します。言語などを通じた世代から世代へのDNAを通した遺伝子的なものよりも、多くの情報が伝達できるようになったからです。遺伝子に対するミームが優生とされる一部です。 私たちは洞窟に住んだ祖先に比べると強くもないし、また生まれつき知的でないかもしれません。 しかしまさに私たちは遺伝子を越えた存在なのです。 ダーウィンの進化論の時間尺度は10万年単位であり、外面的、解剖学的でしたが、今回の今までの進化とは異種の進化をわたしたちは経験して、いまそのまっただ中にいるのです。
未来の世代への不安としては洞穴生活時代の攻撃性を私たちが今後も持ち続けてしまうだろうかという事です。 核などの巨大な力を持った人間が、いつ自己破滅の道を突き進むかそれこそいつ起こっても不思議はありません。しかもそれは着々と進行していると言っていいでしょう。しかし私たちが、もっと知的になり善良になるようにダーウィン進化を待つ時間はありません。 私たちは今「自己設計進化」が可能な段階にあります。 しかしこれは慎重にやらないと改良されてない人間と改良された人間の間でかえって大きな問題が発生おそれもあります。
これらの問題を考えるとき知的生命体がに私たちになぜかつて一度も訪問してこなかったのかと言うことについて考えてみましょう。まとめると下記の4通りしかありません
- DNAそのものがきわめて珍しい
- 生命は生まれても知的生命となりうる可能性はきわめて低い
- 知的生命になり得てもある段階で自滅する
- 知的生命は存在するが、私たちが見落とされている。
- 自然界を支配する真理を理解し、それを応用することのできる生命体は、たとえ肉体的にはみすぼらしくても自然淘汰の中で生き抜くことのできる最強の存在である。この地球上では人間がその山を登り切ったといえます。
- 生命体としての人類の進化にはコピーミスなどによって生じる突然変異と自然淘汰の繰り返しによる進化のメカニズムはもはや働いていない。
むしろ逆淘汰すら起こっており、新たに突然変異によって生じた好ましくない遺伝子は淘汰されず人類全体の中で累積することになる。
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154「宇宙における生命」 S・W・ホーキング 1993 年 (訳: 佐藤勝彦 1993 年) NTT出版