1927年 |
不確定性原理 Uncertainty Principle |
ハインゼンベルグ |
古典物理学の概念が原子の現象に適用できる限界を数式にあらわしたもの。
単に予測不能というだけでなく、原理的に未来は非決定なのだ。
原子の運動量と位置は同時に計れないとしたもの。
粒子の位置を測定する為には波長の短い粒子で測定しなければならない。したがって測定波の粒子の運動にぶつかり、観測対象の粒子ははじきとばされてしまい位置は測定できない。
逆に粒子の運動量を正確に測定しようとすると、波長の長い波をつかわなければならないが、今度は位置が正確につかめないというというもの。
これらは測定技術の問題ではなく、自然の法則なのである。それゆえ「原理」と呼ばれている。
問題はこの不確定原理を神秘性の根元のようにいいかげんなことをいうエセ解釈が多いことだ。
不確定性原理は「世界は予測できない」という証拠と思われ勝ちでであるが、実際はその逆だ。この原理は精度の高い観測を行うための秘策なのである。
例えば、A点とB点間を走る自動車をストップウォッチで測るとしよう。
A点にいる観測者がまず車が目の前を通り過ぎるときにストップウォッチを押す。
次にB点のいる観測者が車が通り過ぎる瞬間にストップウォッチを押す。
このABの距離が分かっていれば、2つのストップウォッチの差を計算すれば、速度が分かる。
しかし、ストップウォッチは真に通り過ぎる瞬間に押せるか?
実際にはいろいろ誤差がでてしまう。
では速度計算の誤差を極小にする工夫は?
そう、AB間の距離を広く取るほど正確になる。
だが、速度を測定している間、車は何処にあるのだろう?
AとBの間のどこかだ。
では、そのどこかを極力正確に知るには?
AとBの距離が短いほど、精度が高くなる。
この交換条件はなにも量子の成果に関わらず、観測問題に関わる典型的ジレンマだ。
位置と運動量は「相補的」に変化しうる。
ハイゼンベルグが仮定したのは「粒子の位置と運動量の両方を正確に知るのは、根本的に限界がある」ということだった。その限界が「プランク定数」と呼ばれる量子力学の基本定数であり、実験の予測結果に限界を設けることになる。原子の異なる状態における量子遷移は特定のエネルギーを持つ光子を放出する。同じ遷移が起これば、全く同じエネルギーを持つ光子が放出されることが予測される。つまりハイゼンベルグの不確定性原理は世界をより確定できるものにしたのである。
実際には車自身に速度計と距離計がついていれば、問題は解決される。しかし、粒子に計器を搭載し、それを直接観測することは不可能だ。観測技術の限界がある。
微視的世界の量子物理学が不確定性を免れぬことから、決定論的因果律が崩壊したかにも語られるが、むしろ巨視的世界で成立」している通念を押し通すことのできぬ微視的世界が見出されたという認識が重要だろう。
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