アストロ・バイオロジー |
松井孝典 |
宇宙からみる生命と文明
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松井孝典 東京大学大学院教授 | ||||
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地球をシステムとして捉える | ||||
地球生成のプロセスを探求する過程で、地球をシステムと見る重要性に気づく。 | ||||
地球史を5段階に区分 | ||||
地球史は、物質圏の<分化>の歴史としての<環境汚染>の歴史でもある。 | ||||
「人間圏」の誕生 | ||||
地球システムのモノやエネルギーの流れに人間が関与することによって「文明」を築いた。 | ||||
フロー型文明への転換が必要 | ||||
ストックに依存する文明は短命だ。フロー型文明のお手本は江戸時代。 | ||||
現在は地球史の折り返し点にいる | ||||
俯瞰的な視点から環境問題を捉えなおすことが大切。 |
ぼくは「地球をシステムとして見る」ことによって、環境問題に新しい視点を導き入れることができると思っています。まず、なぜそういう考え方を打ち出すようになったかについてお話ししましょう。これは環境問題とは関係のない地球科学から始まっています。 地球にはなぜ海が誕生したのか、あるいはなぜ海の水が1.4 ×21乗kgという一定の量で保たれているのかなど、地球の生成進化を考えると不思議なことがいっぱいある。ぼくの研究はそんな疑問を追求し、地球ができるプロセスを詳細に分析していったことからスタートしました。 たとえば、地球に海がどのようにできたか──。原始地球は火の玉状態で誕生した。地球に降ってきた材料物質の中に含まれていた水がガスとなり、ガスがたまって原始大気となります。原始大気になる過程で地表が溶けマグマの海ができるのですが、原始大気と溶岩とが接していると、大気との間で構成成分のやり取りが起こる。このやりとりの結果として、原始大気中にある水の量が一定に保たれる。「溶解平衡」というメカニズムであるマグマの海と大気の間に相互作用があるということです。従来の地球科学の考え方では、これらは関係のないものとして考えられていたのですが、そうではなくて、地球ができるときには、原始大気もマグマの海も、あるいはコアの部分も、表層から中心までが密接に関連していることがわかってきたんです。それで、ぼくは、地球というのは一つのシステムとして、全体の変化を見なければいけないんだなと考えるようになったわけです。 システムとは一般的には、複数の構成要素からなり、その要素間になんらかの関係があるものをさします。地球システムも、何重もの階層構造からなっているけれど、ここでは大気圏、海、生物圏、大陸地殻、海洋地殻、マントル、コアなど基本的な構成要素だけを考えてみます。これらの構成要素は、基本的にはすべて違う物質からなっていて、構成要素間でエネルギーやモノの流れなど相互のやりとりが生じているわけです。構成要素を箱としてとらえると、その箱の間の関係性を探りながら全体を見ていくのが、地球をシステムとして見ていくということなのです。 | |
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