ファウスト

ゲーテ

 

第一部:

老学者ファウスト教授はあらゆる学問を極めつくしたが、結局「我々は何も知ることができない」と絶望し自殺を企てる。そこに悪魔メフィストフェレスが現れ、<満足>できたら、魂を取られてもいいかと賭けを持ちかけ、ファウストは決して魂の底から満足はしないだろうとその賭けにのってしまう。魔力で20代の青年に若返ったファウストは、美しく敬虔なクリスチャンである少女グレートヒェンに一目惚れし、罠にかけ、たぶらかし、身ごもらせる。

グレートフェンは、ファウストと逢い引きする為に母に飲ませた睡眠薬の分量を誤り、母を死なせてしまう。彼女の堕落(当時自由な恋は堕落)を怒った兄はファウストと決闘 するがメフィストの手助けにより殺されてしまう。やがてファウストは金に目がくらみ彼女を捨てるが、子を産んだ彼女は悲しみのあまり気が狂ってその子を殺し、死刑囚として牢獄につながれ てしまう。当のファウストは、そんなこととは露知らず、酔いしれていた。しかし、そこで彼は苦しむ彼女の幻を見る。そしてメフィストの力を借りて彼女を助け出そうとするが、彼女は悪魔と手を結んだ彼の助けを拒み、牢獄にとどまりそして死ぬ。

第二部:

その後もメフィストの手助けにより絶世の美女やすべての富を手に入れたりするが、年をとらない彼の前では、女性の美しさなど一瞬のもので、富も意味をなさないことを知る。後に残ったのは、年をとらないが故の永遠の苦しみだけだった。ある日、波に洗われる荒涼とした海辺の土地を眺めながら、民とともに荒れた地を整え、世界を作り治すことを思いつく。

この天地創造にも似た事業に生き甲斐を見いだしたファウストは、「日々、自由と生活のために戦うものこそ、自由と生活を享受するにふさわしい」と悟り、ついに、「この瞬間よ、止まれ、おまえはいかにも美しい」と<<満足>>することができる。賭に勝ったメフィストフェレスは彼の魂を地獄へ連れ去ろうとするが、天国から来たグレートヒェンの願いが聞き入れられ、ファウストは天使達により天国に導かれる。

解説:

悪魔は、信仰の力で撃退はできるものの、根絶することは出来ない。悪魔は我々の心の影ゆえに、我々がいる限り悪魔も存在するからだ。ファウストは、事業が完成するのを待たず将来の夢を確信したところで、<満足>を認めてしまう。悪魔は賭けには勝ったがその理由がわからなかった。ファウストの満足は真に高次元の欲求(人のために尽くすという自己超越)によるもので、悪魔にはない概念ゆえに理解できないのである。ファウストの魂をグレートヒェンが最後に救いに来たのは、高次元の欲求は信仰と同等に貴いと言いたかったのだと思う。

 


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