1918年 |
ゲージ場理論 gauge theory |
C.H.ワイル |
一切の素粒子は、電磁気力、弱い力、強い力、重力で相互作用している。
この素粒子間に働いている力はなにか?
ゲージ理論は1918年にワイルによって提出されたが、70年代の統一理論の流れかの中で再評価され、拡大され、再発展した。
統一理論(電弱力:電磁気力+弱い核力)にさらに+強い核力をした大統一理論についての量子色力学(QCD)が実験され1970年に確認された。
その結果、
重力も含め、4つの力全部が、ゲージ場理論の量子が媒介して起こることが明らかになった。
ゲージはモノサシの意味だが、そこにどんな深淵な意味が秘められているのだろう?
それは、次の簡単な哲学の概念を考えることが基礎になっている。
もし、素粒子が構成する部分をもたないのであれば、それが明確な特性を持ちうるうるのはなぜか?
これに答えるために、例えば宇宙に1種類の粒子しか存在しなかったら、ある粒子(例えば中性子)はその1種類に属するということは、意味があるのかを考えてみることする。
宇宙に粒子が1種類しかない場合、光、私、測定器などの「他」の相互作用がないの為、観測することは不可能だ。
それ故我々が観測している素粒子の特性は、それ固有のものなのか、他との相互作用の部分的な現れなのか常に真にはわからないのではないだろうかという疑問がもちあがる。
この論争は、17世紀のニュートンとライプニッツにさかのぼる。
そしてワイルはライプニッツの根拠律に再注目した。
それは「世界を記述するにあたって、合理的な理由がない限り、ある方法を選択することを強要されない」という原理である。
例えば、電子はマイナスの電荷を持ち、陽子はプラスの電荷を持つが、どちらをプラスと呼ぶかマイナスと呼ぶかは絶対的な理由はない。従ってどちらが、プラスがマイナスかを問うことは意味がない。重要なのは関係性だけだということになる。
ここで、ワイルは20世紀の物理学にとって深遠な意味をもつ興味深い行動をとった。任意の命名の可能性を受け入れる代わりに、それぞれの粒子が相互作用するしないに関わらず、私たちが自由に粒子をプラス、マイナスと呼べる方法があると主張したのである。
ワイルは電荷を好きなように呼ぶ自由を維持する方法があることを発見した。そのためには、電荷のあいだの力が直接伝わってはならない。
かわりに、電気力は、場によって伝えられなければならない。
場は空間のそれぞれの点に存在する何かである。それぞれの電荷はその回りにある場とだけ相互に作用すると意味で力は場によって運ばれる。
電荷の存在は近くの場を変化させる原因となり、その変化が場全体に伝えられる。それぞれの電荷はほかの電荷の存在を、それが場に与える影響を通して感じることになる。
問題となるのは、それぞれの電荷とそのまわりの場とのあいだの関係だけである。ワイルはプラスとマイナスを選ぶ自由が保たれるように、場と粒子が相互作用する法則を決められることを発見した。
場は私たちの用語に依存しない形で電荷の存在に関する情報を運んでいる。
その結果、私たちは異なる場所では異なる選択ができ、いつでも選択するものを変えることができる。しかし、それができるのは場がある方程式を満足したときだけである。
ワイルはその方程式を書き下ろした。そしてその方程式は電磁場が満たすものと同じだったのである!
望み通りに電荷をプラスとかマイナスと呼ぶ自由を保つのに必要とされる場は現実のものであったのだ。それは電磁場である。
従って、電荷を関係によって完全に定義できるという考えは哲学以上のものである。
この考えによって粒子の間の力を運ぶ新しい場の存在が予測される。
このようにして「ゲージ原理」と呼ばれる物理の原理が誕生した。
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187「宇宙は自ら進化した」 ダーウィンから量子重力理論へ リー・スモーリン The Life of the Cosmoc Lee Smolin 1997年(訳:野本陽代 2000 年) NHK出版|