神の変遷史

池内 了

なぜに答えられない科学

ニュートンをはるかに超えて、進歩した科学だが、「引力は距離の2乗に反比例する」のは「なぜか?」と問われると、答えられない。

この例以外に全てに物理の定数に、科学は「なぜ」に答えられないのだ。

科学者は「法則がなぜそのようになっているのか」という問いに答えるのをあきらめ、「そのようになっていることを証明しようとしている」だけになった。

神の変遷史

神学期:(17世紀)この時期は、その「なぜか?」は「神」が決めたからとされた。

しかし、神を証明するための科学が、やがて、神を否定しはじめた。

とはいえ、なぜに答えられない科学は神と完全に手をきることわけにもいかない。

そこで、神を利用することを考えた。アインシュタインは「神はサイコロ振らない」と述べたのは、格好の例だ。この時、神の像はまだ完全なものであった。

2期:神々のたそがれ。「悪魔が頭角をあらわす」神と対決。(18世紀から19世紀末)ゼノンのパラドックスなど、論理として、妙なものがでてくる。

科学の比喩に神と悪魔はよく登場する。科学者は人間の英知の及ばないもをだいたいそう称する。

3期:20世紀初頭「神はサイコロ遊びが好き」とされた。量子論の登場により、確率でしか世界が測れないとされたのだ。

 

4期:20世紀後半神はサイコロやトランプよりもっと賭博性の高いパチンコやビリヤードに熱中し始めた。カオス理論も神の仕業とするならば、神がかなり賭け事が好きなことになる。

しかも、すでに唯一無二の答えというものは存在せず、つまり一神教は時代遅れとなり、多神教の時代になる。

 

第五期:現在:、神の存在をしめす唯一最後の牙城であった、「対象性の破れ」が発見されたのだ。あらゆるところに対象性の破れはあり、対象性が保てる世界は「無の世界」ぐらいしかありえない。つまり、完全なる神とはつまり「無」であり、すなわち存在しないということになる。

そして、ついに賭博にうつつを抜かしている間に神は追い出された。宇宙がこうなっているのは「人間原理」によるとされたのだ。

 

 

 

 

 

 


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192 D物理学 物理学と神 池内了 2002 集英社新書

 

 

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