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=才能教育論(‘02)=(TV)

−スポーツ科学からみて−

〔主任講師: 宮下 充正(放送大学教授)〕

〔主任講師: 平野 裕一(東京大学助教授)〕

全体のねらい

遺伝的に規定されている範囲内で、子どもの能力を最大限に伸ばすためには、個人の

個性を考慮し発達の度合いに応じて、

もっとも適切な教育が提供されるべきことはいうまでもない。この科目では、個人の

成長・発達と密接な結びつきをもつス

ポーツの分野に限定して、高度な能力を効率的に育成するためにはどのような教育が

なされるべきかを、スポーツ科学関連

分野で蓄積されてきた知見に照らして考えたい。

回 テーマ 内 容

執筆担当

講師名

(所属・職名)

放送担当

講師名

(所属・職名)

1 才能は教育できるか

才能とは、特異的な目的を達成させることのできる、遺伝

的な要因が強く影響するが訓練すればそれだけ高度になる能

力と定義する。そして、才能教育の目的は、それぞれの特異

的な分野において優れた成果を生みだすことができるように

能力の向上をうながすことである。スポーツにおける才能教

育について、今後解明されるべき問題点を挙げる。

宮下 充正

(放送大学教

授)

宮下 充正

(放送大学教

授)

2

スポーツパフォー

マンスの制限因子

−体力と運動技術

スポーツの成績は、運動に必要とされるエネルギーの産生

能力と、エネルギーを運動の目的に応じて効率よく利用する

能力とによって決まる。この能力には向上の著しい年齢があ

る。その年齢における教育の成果をいくつかのスポーツを例

に検討する。

平野 裕一

(東京大学助

教授)

平野 裕一

(東京大学助

教授)

3 運動能力とその発

達における遺伝性

運動を遂行する能力は、どの程度先天的に決定され、ある

いは、どの程度後天的に開発可能なのだろうか?最近、分子

遺伝学的研究、双生児法・発育発達学を組み合わせた研究な

どにより、新たな知見が蓄積されつつある。それらの成果を、

紹介、解説するとともに、今後すすめられるべき研究の方向

を提示したい。

山本 義春

(東京大学教

授)

山本 義春

(東京大学教

授)

4 随意運動の獲得

−学習と発達−

運動は筋肉の活動によって発現するが、その活動は脳・神

経系の働きによって制御される。これら脳・神経系の働きの

中には、恒常性維持という観点から自動的かつ不変(系統発

生的)と考えられているものもあれば、適応・学習といった

現象で表現されるように、可塑性に富んだものもある。脳・

神経系の作用機序に関する最近の研究動向を紹介し、例えば

自動性と可塑性との境界など、解決されるべき課題を考えて

いきたい。

同 上 同 上

5

系統発生的動作か、

個体発生的動作か

−歩くと走る−

誕生して1年目ぐらいから歩け、2年目ぐらいから走れる

ようになる。これら歩くと走るは、特別な訓練をしないでも

身につく動作なのだろうか。歩く、走るの運動力学的解析か

ら、この問題を探っていきたい。

中村 好男

(早稲田大学

教授)

中村 好男

(早稲田大学

教授)

6

個体発生的動作の

学習

−跳 ぶ−

跳躍動作は、段差のあるところから跳び下りる、水溜りを

跳び越すといった経験を経て身につく。跳ぶ機会の減少した

中で成長する子どもの跳躍能力は年々低下している。跳躍動

作の解析から、この問題を提起したい。

深代 千之

(東京大学助

教授)

深代 千之

(東京大学助

教授)

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回 テーマ 内 容

執筆担当

講師名

(所属・職名)

放送担当

講師名

(所属・職名)

7

個体発生的動作の

学習

−水泳−

学習しなければ身につかない代表的動作である泳ぐについ

て、まず、初心者が泳ぐという動作を身に付けるまでと、世

界のトップレベルの記録が出せる泳力を身につけるまでの経

過を解説する。 宮下 充正 宮下 充正

8

個体発生的動作の

学習

−投げる−

上手にボールを投げる動作の学習は人間にしかできない動

作である。この事実には直立二足歩行という人間の最も基本

的な身体的特性が深く関わっている。人間には誰にでも上手

に投げられる可能性が与えられているが、適正な年齢に適正

な指導や練習がなされないと十分にその可能性を生かすこと

はできない。

桜井 伸二

(中京大学教

授)

桜井 伸二

(中京大学教

授)

9

個体発生的動作の

学習

−止まっているボ

ールを打つ

打つ動作には、木づちで叩くといった動作から、止まって

いるボールを長いクラブで打つゴルフがある。ゴルフはボー

ルを遠くへとばすばかりではなく、その方向も重要である。

アメリカにおけるゴルファーの教育機関での指導過程を紹介

し、その合理性を追求したい。

深代 千之 深代 千之

10

個体発生的動作の

学習

−動いてくるボー

ルを打つ

動いているボールを打つ動作には、飛んでくるボールを打

つテニスのストロークや野球のバッティングなどがある。野

球王国アメリカでの野球選手の養成課程を紹介し、飛んでく

るボールを正確に打つ才能を伸ばす視点を提示したい。 平野 裕一 平野 裕一

11

力強さの増強

−レジスタンス・ト

レーニング−

好成績を収めるためには、発揮する力が大きい方が有利な

スポーツの競技種目がある。このような筋力の向上に関与す

る栄養、運動、休養などの因子について解説し、レジスタン

ス・トレーニングの今後を展望する。

同 上 同 上

12 ねばり強さのトレ

ーニング

運動を長時間続けていても、からだの動きの速さが低下し

ない方が有利なスポーツの競技種目がある。このような持久

力に関与する生理学的機能について、マラソンのトップラン

ナーを例にあげて解説する。

八田 秀雄

(東京大学助

教授)

八田 秀雄

(東京大学助

教授)

13

中高年齢者に見ら

れる教育効果

−未開発だった才

能の発掘−

長寿社会となり生涯学習が盛んになった。そこでは、さま

ざまな運動講座が開催されている。成長期に経験しなかった

動作様式が中年を過ぎても身につく事実から、才能教育の可

能性を探ってみたい。

中村 好男 中村 好男

14

身体障害者のスポ

ーツ参加から才能

教育を考える

社会福祉の一部考えられていた障害者スポーツの中からも

競技スポーツ志向が芽生え、パラリンピックに参加するスポ

ーツエリートのパフォーマンスは驚くほど高度である。健常

者と異常者という二大別は無意味になりつつある。個人の能

力を最大限に伸ばす過程について障害者のスポーツ参加から

考える。

桜井 伸二 桜井 伸二

15

個性と成長段階に

応じた運動指導の

主眼

1個の細胞から増殖し、複雑な組織体となって誕生した個

人は、その遺伝的制約の範囲の中で、成長という時間と環境

という刺激とによって影響されながら成熟していく。 その

過程で教育はどうあるべきか考えていきたい。

宮下 充正 宮下 充正--