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2004/11/10 8920117.doc 科目名 物質環境科学U(03) 1/2

=物質環境科学U(‘03)=(TV)

― 環境システムとエントロピー −

〔主任講師:中山 正敏(放送大学教授)〕

全体のねらい

いわゆる環境問題は、人間の生産活動の結果が人間の生活環境を悪化させるところか

ら生じた。この講義ではその自然現

象としての側面を理解するために必要な、物理学的な考え方について説明する。まず

非平衡の場合を含めた熱力学の手法に

ついて述べる。この方法の限界を指摘し、いくつかの手法を紹介する。

回 テーマ 内 容

執筆担当

講師名

(所属・職名)

放送担当

講師名

(所属・職名)


1 環境システム

一般に、生産や生命活動を行う能動系とそれを包む環境に

よって、環境システムが構成される。環境は、能動系に資源、

エネルギーを供給し、廃棄物、廃熱を受け取る。それが大き

くなり過ぎたことが、環境問題である。環境システムの特徴

について概観する。

中山 正敏

(放送大学教

授)

中山 正敏

(放送大学教

授)


2 物質、エネルギーの

保存則

系の変化における基本法則を考える。物質とエネルギーは

保存される。物質変化の階層に応じて、分子、原子、核子の

総数が一定である。系のエネルギーの増分は、系になされた

仕事と加えられた熱の和に等しい。これを熱力学第一法則と

いう。

同 上 同 上


3 エントロピーの増

大則

自然界には、熱伝導、拡散などの不可逆な変化がある。そ

の向きを指定する法則を考える。物質やエネルギーの無秩序

度を表す状態量を導入し、これをエントロピーという。不可

逆変化はエントロピーの増大する向きに起きる。これを熱力

学の第二法則という。

同 上 同 上


4 熱機関

技術者たちが蒸気機関を作った後で科学者たちが、それで

出来る最大の仕事量を考察した。カルノーの熱素説による考

察がエントロピーの発見につながった。それでは、効率でな

く能率を最大にしようとするとどうなるだろうか。

白鳥 紀一

(法政大学客

員教授)

白鳥 紀一

(法政大学客

員教授)


5 開放系の熱力学

エネルギーや物質の出入のある開放系について、熱力学を

考える。その場合には、自由エネルギーを導入すると便利で

あることを示す。また、エクセルギーを導入し、それが系が

環境との平衡から外れている度合を表すことを示す。

同 上 中山 正敏


6 混合と分離

ヒトや生態系に悪い影響を与える物質が環境に散らばると

環境問題になる。散らばっている有用な物質をいかに分離し

て集めるかが資源問題である。散らばるのは物の本性で、エ

ントロピーの増大する過程である。資源環境問題を混合・分

離の過程から考える。

同 上 白鳥 紀一


7 物質と放射

物質中の電子や原子などのミクロな粒子の持つエネルギー

は、いくつかの特定の値に限られる。熱放射は空間の中を熱

を伝える光(電磁波)である。そのエネルギーは、光量子を

単位として物質とやり取りされる。量子性と環境問題の関係

について考える。また物質循環と放射のグローバルな状況に

ついて述べる。

中山 正敏 中山 正敏

2004/11/10 8920117.doc 科目名 物質環境科学U(03) 2/2

回 テーマ 内 容

執筆担当

講師名

(所属・職名)

放送担当

講師名

(所属・職名)


8 エントロピーの原

子論

マクロな量であるエントロピーと、系のミクロな状態との

関係を考える。マクロには一つの状態にある系も、ミクロに

見れば原子などの運動によって多数の異なる状態に存在でき

る。エントロピーは、対応するミクロな状態の総個数の対数

に比例する。

白鳥 紀一 中山 正敏


9 熱ゆらぎ

マクロには熱平衡にある系も、ミクロにはその近くでゆら

いでいる。環境の中にある系に対する環境のゆらぎの影響を

調べる。また環境の中を動く系には抵抗力が働き、熱ゆらぎ

を越えた距離を動かすには、kT程度の仕事が必要なことを

示す。

中山 正敏 同 上


10 情報とエントロピ

情報とエントロピーは相補的である。情報は磁気・電気な

どの物理量によって担われるが、それが意味のあるのは、物

理量の熱ゆらぎが小さく、その値が保持される場合である。

そのような場合には熱力学ではなく、システムダイナミック

スによる研究が必要となる。

同 上 同 上


11 マクロなゆらぎ

環境の中では、風の変化のように、熱ゆらぎよりも大きな

スケールのマクロなゆらぎが起こる。これは、系が熱平衡状

態からずれると、外的な変化に対して大きな応答をするとい

う性質を持つからである。マクロなゆらぎの特徴と、その影

響について考える。

北原 和夫

(国際基督教

大学教授)

北原 和夫

(国際基督教

大学教授)


12 散逸構造

外的条件を変えて、系の中の物質やエネルギーの流れを大

きくして行くと、時間的空間的構造を持った新しい状態に移

る。この構造を散逸構造という。散逸構造の一例は、流体が

上下方向に循環する対流である。環境問題と散逸構造の関連

について考える。

同 上 同 上


13 リサイクルと環境

リサイクルをすれば、資源の消費や廃棄物が減り、環境に

いいはずだ。しかし、場合によっては、リサイクルに手間や

エネルギーがかかったり、リサイクル処理中に毒性物質が放

出されたりする。そこで、意味のあるリサイクルの条件につ

いて考える。

井野 博満

(法政大学教

授)

井野 博満

(法政大学教

授)


14 材料の環境負荷評

価と選択基準

環境にいい材料の使い方は、リサイクルばかりではない。

製品を長持ちさせることや、自然の物質循環に合った材料を

選んで使うことも大事である。環境負荷評価(ライフサイク

ルアセスメント)の方法と、材料選択の基準について考える。

同 上 同 上


15 定常能動系と物質

循環

能動系が定常であるためには、それに接する環境もまた定

常でなければならない。物質に関しては閉じた地球では、物

質が環境を循環することによってこれは果たされる。その際

増大したエントロピーは、宇宙空間に棄てられる。現実の地

球ではどうだろうか。

中山 正敏 中山 正敏------------