HOME 2004/11/08 1666410.doc 科目名物質の科学・量子化学(03) 1/2 =物質の科学・量子化学(‘03)=(TV 〔主任講師: 平尾公彦(東京大学教授)〕 〔主任講師: 濱田嘉昭(放送大学教授)〕 全体のねらい 原子が結合して分子ができる。分子がさらに集合して、私たちが目にするマクロの物体となる。したがって、物質の性質 や反応性を理解するには、分子の成り立ちをミクロの視点にたって理解することが必要である。本講義は、化学結合の起原 を量子力学に基づいて解説する。理論の解説では、基本的な考え方をわかりやすく述べることを念頭に置き、CGなど視覚 的な理解ができるように努める。また、分子の持つ性質を実験的に調べる手段として、主に分光法をとりあげ、理論的理解 と実験的解釈が一致していることを示す。実験の解説では、実際の研究現場とその応用をロケ取材により積極的に取り上げ ることにする。 回テーマ内容 執筆担当 講師名 (所属・職名) 放送担当 講師名 (所属・職名)
1 物質の世界: われわれをとりまく物質世界と物質進化について概観す る。また、ミクロの世界を理解するうえでの量子化学の重要 性について解説する。原子、分子の基本となる物理量、電子 の質量、電荷、プランク定数、光の速度などが実験的にどの ように決められたのかを振り返る。 平尾公彦 (東京大学教 授) 濱田嘉昭 (放送大学教 授) 平尾公彦 (東京大学教 授)
2 ミクロの世界: 水素原子のスペクトルを中心に量子論が誕生するまでの歴 史を振り返る。ボーア模型を解説し、同時に半古典的なボー ア模型の限界を指摘する。平尾公彦平尾公彦
3 水素原子の構造 ‐量子力学の基礎: ‐ 量子力学、波動方程式の基本的な考え方を解説する。まず 正確な解の得られる一次元の箱の中の粒子に適用し、ミクロ な世界を概観する。また、正確な解が得られる水素原子に適 用し、その電子構造や軌道関数を明らかにする。 同上同上
4 多電子原子の構造: 水素原子の波動関数を参考にしつつ、Pauli の原理の基づい て一般の原子の電子構造を解説する。原子がどのようにして 成り立っているのか、元素のもつさまざまな性質や元素の示 す周期律が電子の構造からどのように導き出されるのかを説 明する。 同上同上
5 二原子分子の結合 と電子構造: 厳密解の得られる水素分子イオンの電子構造を解説し、分 子の成り立ちについて解説する。また、二原子分子の電子構 造を明らかにし、化学結合、共有結合やイオン結合について も解説する。 同上同上
6 多原子分子の結合 と電子構造: 原子価、混成軌道の概念を導入し、一般の分子の成り立ちを 解説する。また、分子の形がどのようにして決まるかを解説 する。 同上同上
7 π電子系の電子構造: ‐ヒュッケル分子軌 道法‐ 簡単な分子軌道法であるH・kel 法を解説し、π共役分子の電 子構造を明らかにする。また、吸収スペクトル、化学反応性、 芳香性などについて説明する。 同上同上 2004/11/08 1666410.doc 科目名物質の科学・量子化学(03) 2/2 回テーマ内容 執筆担当 講師名 (所属・職名) 放送担当 講師名 (所属・職名)
8 ミクロの世界の性質: ミクロの分子は、私たちが通常目にする物体の運動と類似 の運動とともに、異なった様相の運動をしている。量子論に 基づく分子運動の性質を説明し、それがマクロの物体の運動 や性質とどのように関係しているかを解説する。 濱田嘉昭 (放送大学教 授) 濱田嘉昭
9 ミクロの世界の観測: 分子の構造や運動あるいは性質を実験によって調べる方法 の一つが電磁波と分子の相互作用を利用する分光法である。 分子の運動の種類と電磁波の種類との関係、分光法の原理と 測定によって得られるスペクトルの解析について説明する。 同上同上
10 レーザー分光法 −電子励起状態の 構造とダイナミク ス−: 分子の詳細な情報を得るには、スペクトルのエネルギー分 解能を高める必要がある。そのためには電磁波をより精密に 分解して測定するか、レーザーなどのエネルギー幅の十分狭 い光源を用いる方法がある。レーザーの原理と高分解能分光 によって得られる分子の姿を解説する。 馬場正昭 (京都大学教 授) 馬場正昭 ( 京都大学 教授)
11 高エネルギー分光法 −X 線と物質−: エネルギーの大きい電磁波、すなわちX線を物質に当てる と、イオン化や内殻電子の励起がおこり、また蛍光など二次 的な電磁波を放出する。こうした現象の利用により物質のナ ノ構造から星雲の構造まで観測することが可能である。 宇田川康夫 (東北大学教 授) 宇田川康夫 (東北大学教 授)
12 高速分光法−分子 の動的構造−: 分子はピコ秒,さらにはフェムト秒の時間スケール様々な 運動をしている。これらの化学過程を調べる測定法の工夫、 それらの測定から得られる分子の動的な姿について解説す る。 濱口宏夫 (東京大学大 学院教授) 濱口宏夫 (東京大学大 学院教授)
13 高分解分光法−分 子の動的構造−: 分子は決して固い棒のようなもので結ばれているのではな い。分子のフレキシブルな運動を知る方法、いくつかの分子 が相互作用して大きな集団を作っていく様子について、主に 高分解分光法の立場から解説する。 遠藤泰樹 (東京大学大 学院教授) 遠藤泰樹 (東京大学大 学院教授)
14 磁気共鳴分光法 −磁場と分子−: 核スピンや電子スピンは磁場の中に置かれると,エネルギ ーの分裂を起こす。このエネルギー差をマイクロ波の吸収に よって測定する方法が磁気共鳴法である。磁気共鳴法の原理 と応用について解説する。 手老省三 ( 東北大学 教授) 手老省三 (東北大学教 授)
15 量子化学の最前線: 最近の話題を取り上げ、量子化学、計算化学の最前線と量 子化学の役割、将来の可能性について解説する。 平尾公彦平尾公彦