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2004/11/08 1837613.doc
科目名環境社会学(03)
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=環境社会学(‘03)=(TV)
〔主任講師: 舩橋晴俊(法政大学教授)〕
〔主任講師: 宮内泰介(北海道大学大学院助教授)〕
全体のねらい
環境社会学とは、環境問題の解明と解決の道の探究を志向する社会学の一領域であり、この10
年にめざましい発展を示
してきた。本講義では、わが国の環境社会学の到達点を反映する形で、環境社会学の基本的課題と視点を体系的に提示する。
講義の内容としては、第1
に、豊富な具体的事例を提示することによりそれに立脚してわかりやすい内容とすること、第2
に、日本における環境社会学の代表的な理論枠組みを提示すること、第3
に、国際比較と国際関係への視点を持つこと、第
4
に、環境問題の歴史的展開の中で過去の教訓と現代の位置を自覚させるようなものとすることを、重視したい。
回テーマ内容
執筆担当
講師名
(所属・職名)
放送担当
講師名
(所属・職名)
1
環境社会学の課題
と視点
環境問題は21
世紀においてますます重要な問題となること
が予想される。社会と環境の相互作用の焦点に生起する環境
問題を、社会の側に視点を置きつつ把握する環境社会学の課
題と視点について全体的展望を提示する。環境社会学とはど
のような学問であり、どのような問題群を探究するのかにつ
いて、加害論・原因論、被害論、解決論という視点から説明
する。
舩橋晴俊
(法政大学教
授)
舩橋晴俊
(法政大学教
授)
2 環境問題の諸段階
産業化以後の環境問題の歴史的段階は、大きくは、「公害・
開発問題期」と「環境問題の普遍化期」とに分けることがで
きる。それぞれの時期にどのような問題が生起して来たのか、
これらの二つの時期で、環境問題の性格がどのように変化し
てきたのか、逆に、どのような面では、連続しているのかを
検討する。
同上同上
3 公害の原点として
の水俣病
水俣病が公害の原点と言われる最大の理由は人類初の環境
汚染、食物連鎖による大規模中毒であること、人類初の胎盤
を経由した胎児の中毒発生が確認されたことであった。した
がって、その被害の構造(影響)は単に健康被害が重症者から
軽症者におよぶという単純なものでなかったはずである。し
かし、医学をはじめ各分野の研究が対応に戸惑い、政治的状
況も絡んで未だ実態の全貌を十分に明らかにし得ていない。
そのために教訓が十分に活かし切れていない。
原田正純
(熊本学園大
学教授)
原田正純
(熊本学園大
学教授)
4
新幹線公害問題
−日本とフランス
の比較
民間企業のみならず、社会資本建設にかかわる公共事業も
公害を引き起こす。日本の新幹線は、高速輸送という便益を
提供する一方、深刻な各種の公害(騒音・振動・電波障害な
ど)を引き起こした。他方、フランスの新幹線は優れた計画
手法に裏打ちされて通過地域との共存を実現している。
新幹線公害対策の教訓を国際比較によって明らかにする。
舩橋晴俊舩橋晴俊
2004/11/08 1837613.doc
科目名環境社会学(03)
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回テーマ内容
執筆担当
講師名
(所属・職名)
放送担当
講師名
(所属・職名)
5 廃棄物問題を考え
る
廃棄物問題は今日の様々な環境問題の中で重要な課題とな
っている。それは、単に廃棄物の量の問題だけではなく、そ
の有害性が生物に「生殖異常」をもたらすという、廃棄物の
質の問題が大きくクローズアップされてきたことによると考
えられる。そこで、この講義では、そうした廃棄物の有害性
を生み出す、処理方法の問題と処理施設の立地条件の社会的
側面を明らかにする。また、この廃棄物問題とかつての公害
問題との関連を重視し、その関連性の考察と両者の比較を行
う。
その上で、廃棄物処理行政史を考察し、問題点を指摘する。
それとともに、今日の廃棄物問題解決に向けた取り組みに欠
けている点を指摘する。
鵜飼照喜
( 信州大学教
授)
鵜飼照喜
( 信州大学教
授)
6 自然環境と社会の
相互作用
人間社会と自然環境とは、相互に影響しあっており、また
そのかかわりあいは多様である。人間社会が自然環境の方に
適応しつつ、自然環境もまた人間がかかわった形になってい
くという原理的な相互作用、そしてそのための人間社会の側
のしくみを、ソロモン諸島を事例に見ていく。
宮内泰介
(北海道大学
大学院助教
授)
宮内泰介
(北海道大学
大学院助教
授)
7
農山村と環境問題
――有機農業を中
心として
農産物・木材の輸入自由化により、日本の農林業は壊滅に
瀕しているといわれる。農山村(田畑、森林)が果たす公益
的機能を見直すためにも、構造的諸問題に対処する実践が
人々に求められている。有機農業や山村再生の実践を通して
環境問題を考えてみよう。
松村和則
(筑波大学)
松村和則
(筑波大学)
8 コモンズ―自然環
境と担い手
自然環境の利用や保全を誰が担うべきなのか、という古く
て新しい問題を、「コモンズ」をキーワードに考える。コモ
ンズとは地域の自然環境を地域の人間が共同で所有・利用・
管理していくしくみのことである。
宮内泰介宮内泰介
9 発展途上国と環境
問題
ソロモン諸島の森林伐採、インドネシア・マレーシアのア
ブラヤシ・プランテーション開発を事例に、発展途上国にお
ける環境破壊がどういうしくみをもっているか、それを克服
するための手立ては何かを考える。
同上同上
10 社会的ジレンマ論
これまでの諸事例をふりかえりながら、理論的な検討を試
みる。環境破壊の基本的メカニズムとして、「集合財」をめ
ぐる社会的ジレンマの基本的論理がどのようなものかを説明
する。北海道えりも岬における森林破壊と森林の回復の事例
をとりあげ、社会的ジレンマを通しての環境破壊とその克服
について、説明する。
舩橋晴俊
(法政大学教
授)
舩橋晴俊
(法政大学教
授)
2004/11/08 1837613.doc
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回テーマ内容
執筆担当
講師名
(所属・職名)
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講師名
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11
環境負荷の外部転
嫁と社会的ジレン
マの諸類型
環境破壊のもう一つの社会的メカニズムとしての、「環境
負荷の外部転嫁」について説明する。開発途上国と日本との
関係においても、日本国内においても、このメカニズムが、
作用している。青森県への放射性廃棄物の集中を事例として
とりあげ検討する。また「環境負荷の外部転嫁」という視点
を使って社会的ジレンマの7
類型を提示する。
舩橋晴俊舩橋晴俊
12 環境制御システム論
環境問題の解決努力の歴史的進展は、環境制御システムが
形成され、経済システムへの介入を4
段階にわたって深化さ
せてきた過程である。その4
段階とは、A介入の欠如、B制
約条件の設定、C副次的経営課題としての内部化、D中枢的
経営課題としての内部化、の諸段階であり、現代社会は全体
として、D段階への移行が必要になっている。
同上同上
13 自然エネルギーと
地域振興
90 年代後半、一部西欧諸国の脱原発・グリーン電力導入の
趨勢を追うような形で、日本でも風力発電をはじめとする自
然エネルギー発電施設が増えている。それを促進する政治的
社会的条件に注目し、エネルギー政策における市民参加、環
境負荷が少ない新産業の導入による過疎地域の活性化などの
問題を考える。
田窪祐子
( 富士常葉大
学専任講師)
田窪祐子
( 富士常葉大
学専任講師)
14
環境基本条例と環
境基本計画−自治
代総合的環境行政
の推進
環境問題の広がりと普遍化に伴い、自治体の環境政策にお
いても「総合化」がキーワードになり、総合的環境行政の展
開が志向されている。本講では、こうした問題意識のもとに、
自治体政策において総合的環境行政の中核的システムとなる
環境基本計画の意義、構成と展開を紹介した上で、持続可能
な社会の実現に向けて環境基本計画を中心に地域環境を総合
的に管理していく「環境マネジメント」の発想について検討
する。
田中充
(法政大学教
授)
田中充
(法政大学教
授)
15 環境問題の解決の
ために
環境社会学の立場から“環境問題の解決”を考えると、何
が見えてくるか?“環境問題の解決はひとりひとりの心がけ
から”と一般的に語られるが、環境社会学の立場からは、そ
れと違ういくつかの方向――調査、市民自治、協働、情報共
有、社会的しくみを変える――などが見えてくる。
宮内泰介
(北海道大学
大学院助教
授)
宮内泰介
(北海道大学
大学院助教
授)