HOME 2004/11/08 1881418.doc 科目名= =(R)・(TV1/3 = 感染症と生体防御(‘04)=( TV 〔主任講師: 笹月健彦(国立国際医療センター総長)〕 〔主任講師: 岩本愛吉(東京大学大学院教授)〕 〔主任講師: 近藤喜代太郎( 北海道大学名誉教授)〕 全体のねらい 感染症はヒトの体内・体表にすみかを求め、増殖しようとする微生物・寄生虫によるヒトの罹患である。それらの生物とヒ トの防御機能との間には複雑な干渉があり、なかでも免疫のしくみは、高等動物への進化の過程で、生存を脅かした微生物 などとの永い闘いの末に得られた進化の産物である。本講義では、はじめの6章で免疫システムについて体系的に学び、ア レルギー、移植、癌、免疫不全などの臨床的問題にも触れる。7、8章はそれぞれウイルスと細菌・真菌感染の総論、9〜 13 章では主な感染症について罹患臓器別に学ぶ。また、1415 章は主として公衆衛生の立場から感染症対策について体系 的に学ぶ。感染症はかつては人口の1/3〜2/3を脅かす重大な脅威であったが、日本などの保健先進国ではほぼ制圧され ている。しかし新興・再興感染症の問題もあり、人類と微生物との闘いはまだ終わったわけではない。15 章では世界的視野 に立ち、発展途上国の感染症がなおかつてのような脅威を振るっている実態と、国際的なとり組みについてのべる。 回テーマ内容 執筆担当 講師名 (所属・職名) 放送担当 講師名 (所属・職名)
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免疫システムの成 り立ち 免疫システムはウイルス、細菌、寄生虫などの外来侵入者 に対する防御機構として進化してきた。これら感染源が保有 する高度の多様性に鑑み、免疫システムも10 15 乗に達す る多様性を獲得している。ここでは、多様性の獲得、自己反 応性の除去、免疫応答の制御に関して免疫システムのフレー ムワークについて学ぶ。 笹月健彦 (国立国際医 療センター総 長) 笹月健彦 (国立国際医 療センター総 長)
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免疫システムの多 様性と多型性 免疫システムは外来侵入物に対する必須の防御機構として 機能する一方、免疫応答を行ったために生体が障害されるこ ともまた事実である。そしてこの免疫応答には個体差が存在 する。ここでは、免疫応答の個体差(多型性)について学ぶ。 同上同上
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自然免疫 自然免疫とは、感染に対する初期防御においては細菌のリ ポ多糖やウイルスの二重鎖RNA のような、宿主が本来持たな い構造体を認識して誘導される反応である。本講義では自然 免疫系を理解するともにその後の獲得免疫系との関連につい て学ぶ。 小安重夫 (慶應義塾大 学教授) 小安重夫 (慶應義塾大 学教授)
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獲得免疫 個々の感染体に特異的な反応は、抗原特異的な受容体を持 つT細胞やB細胞などのリンパ球が関与する。本講義では抗 原特異的なリンパ球の抗原認識と機能発現、ならびに特異的 な抗原を見つけ出すためのリンパシステムに関して学ぶ。 同上同上
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自己免疫 自己免疫は、抗体またはT細胞が自己の抗原と反応する現 象である。自己の抗原に対する免疫学的寛容(トレランス) が破綻して、自己免疫応答が惹起され、それにより自己免疫 疾患が引き起こされると考えられている。 山本一彦 (東京大学大 学院教授) 山本一彦 (東京大学大 学院教授)
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免疫が関与する疾 病-アレルギー、移 植、癌、免疫不全な ど 免疫が関与する疾患は多い。免疫不全のように多くの抗原 に対して免疫力の低下が見られるものから、特定の抗原に対 する免疫応答が強すぎて起こる疾患や免疫応答が弱いために 起こる疾患もある。これらの疾患に対して行われる現在の非 特異的療法には種々の限界があり、より理想的な治療法を目 指す必要がある。 同上同上 2004/11/08 1881418.doc 科目名= =(R)・(TV2/3 回テーマ内容 執筆担当 講師名 (所属・職名) 放送担当 講師名 (所属・職名)
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ウィルス感染症 形態や核酸の種類に基づくウィルスの分類と具体的なウィ ルスの種類、惹起する疾患の症状や診断等につき学ぶ。国内 的、国際的に問題となっているウィルス疾患を取り上げ、そ の動向、対策等の現状についての知識を得る。 岩本愛吉 ( 東京大学大 学院教授) 岩本愛吉 ( 東京大学大 学院教授)
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細菌・真菌感染症 形態とグラム染色に基づく一般細菌について、その種類や 惹起される疾患、治療法等を学ぶ。リケッティア、クラミジア、 マイコプラズマ等についての基本的な知識を得る。重要な真 菌感染症についての基本的な知識を得る。 山口惠三 ( 東邦大学教 授) 河野茂 (長崎大学大 学院教授) 山口惠三 ( 東邦大学教 授) 河野茂 (長崎大学大 学院教授)
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呼吸器感染症 呼吸器の基本的な解剖学を学び、健康な人に起りうる呼吸 器感染症の症候、病態、診断法、治療法等につき学ぶ。病院 に入院している人に起りやすい呼吸器疾患につき基本的な知 識を得る。結核やインフルエンザなど重要な呼吸器疾患につ いて概説する。 河野茂河野茂
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消化器感染症 消化器感染症を起こす代表的な微生物に関して学ぶ。国内 で重要な消化器感染症、海外旅行中に注意すべき消化器感染 症を、病原微生物、予防、治療、診断等の観点から概説する。 O-157、サルモネラ症など、話題の消化器感染症につき重点的 に解説する。 山口惠三山口惠三
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エイズ エイズを起こすHIV というウィルスについての基礎知識を 得る。HIV に感染後の病態とエイズという重症の免疫不全に 伴なう日和見感染症につき解説する。抗HIV 薬によるHIV 感 染症の治療の現状につき解説する。国内、世界でのHIV 感染 の現状につき知識を得る。 岩本愛吉岩本愛吉
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その他の性感染症 性はヒトの根元的活動のひとつであり、それに関連して伝 播される疾病sexually tranmitted disease(STD)はヒトの歴史と ともにある古い問題であるが、新しいヒトの行動パターンと ともに新しい問題点をつねに提供している。新興STD である エイズについては1115 章でのべるが、本章では古くからの STD である梅毒、淋病、そけい肉芽腫、尖圭コンジローマに 加え、近年注目されているクラミジア症、ヘルペス症などに ついても、臨床、疫学、対策の概要についてのべる。 塚本泰司 (札幌医科大 学教授) 塚本泰司 (札幌医科大 学教授)
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神経系の感染症と プリオン病 種々のウィルス、細菌による急性脳炎・脳髄膜炎・脊髄炎 などの中枢神経系の炎症は幸いに減少したが、重い後遺症を 残す疾患である点、なお重要である。近年、医療の場などで 免疫不全者に真菌性髄膜炎が起きている。プリオンは微生物 ではなく、感染蛋白であり、ヒトのプリオン病であるクロイ ツフェルト・ヤコブ病CJD の多くは初老期に孤発性に生ずる が、遺伝性の症例、汚染硬膜の移植などを介した伝播性の症 例が知られ、英国ではBSE 汚染牛の喫食を介して発症したと される若年性CJD が報じられ、世界的パニックを生じた。 近藤喜代太郎 (北海道大学 名誉教授) 近藤喜代太郎 (北海道大学 名誉教授) 2004/11/08 1881418.doc 科目名= =(R)・(TV3/3 回テーマ内容 執筆担当 講師名 (所属・職名) 放送担当 講師名 (所属・職名)
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感染症対策と公衆 衛生 1〜13 章は生体防御のしくみ、種々の感染症の臨床につい て学んだので、本章ではそれらを前提として、感染症対策の ため、国家・社会が構築したしくみについて学ぶ。衛生・公 衆衛生のもっとも重要な起源は感染症対策であり、本章では ヒトがはじめて手にした武器である種痘以来の歴史と、明治 以降の日本の発展の跡を簡潔に顧み、現行制度のあらましを のべる。 近藤喜代太郎近藤喜代太郎
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感染症と国際保健 感染症は有史以前からヒトの最大の敵であり、ヒトが集ま って住むようになってからは、伝染病の流行によって人口の 大半が失われるようなことも、しばしば起きた。しかし、先 進国ではこの状況は克服され、絶滅したわけではないが、ほ とんどの感染症は国家・社会の保健システムの制御下におか れている。しかし、発展途上国では感染症・寄生虫症はなお 重大問題であり、ときには国家・社会の存亡にかかわる事態 になっている。G7 サミット(1997)は世界の総死因の1/3が 感染症であることに懸念を示し、共同の対策を支援すること とした。本章では世界的視野に立って、主な感染症の状況と 対策についてのべ、日本の役割を考える。 同上同上