HOME 2004/11/08 1271288.doc 科目名:日本法文化の形成(03) 1/2 =日本法文化の形成(‘03)=(TV 〔主任講師: 六本佳平(放送大学特任教授)〕 全体のねらい 「法」を実定法学の各分野に細分化された専門知識としてとらえるのではなく、政治・経済・文化など社会統合の主要な 構造部門のひとつとして社会科学的認識の対象として捉え、日本の法システムの特徴と機能を歴史的に考察する。内容とし ては、法の概念や法機構の基本構造の理論的な説明を行った後、まず日本の近代の法文化が、近代国民国家の構築という政 治的な優先課題に深く刻印されつつ形成されてきた歴史的経緯をたどり、ついで近年その到達点からの更なる構造変容を期 した司法制度改革の努力が、ルール志向性という普遍的な課題と日本的な特徴とを交錯して追求される様を明らかにし、法 システムの日本的なあり方とは果たして何かを探究する。 回テーマ内容 執筆担当 講師名 (所属・職名) 放送担当 講師名 (所属・職名)
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[序――]法と歴史 と文化 「法」を「法システム」としてとらえること、そのあり方 が文化によって基底的な影響をうけると同時に、政治・経済・ 社会さらに文化自体とも相互に影響しあうこと、さらにその 社会の歴史的な背景が制度の慣性として基本的な意義をもつ ことを概説し、日本の法文化を固定視することなく可塑視す べきことを述べる。 六本佳平 (放送大学特 任教授) 六本佳平 (放送大学特 任教授)
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歴史的与件 2章ないし6章は、近代日本法文化の形成過程を扱う。近代 日本法文化の歴史的前提となった、明治法システムの特色に ついて、また、幕末の法体制、法状況、開国をめぐる法的な 必要などについて触れ、日本の法的遺産としてどのような歴 史的与件が明治維新の前後の政治過程で動員されたかを見 る。 同上同上
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開国の政治と法 明治維新の政治過程および新政府による近代国家構造の新 たな設計において、法体制の構築がどのようになされたか、 特に司法制度の構築がどのような政治過程のなかで行われ、 国家的統一優先の政治課題によってどのような影響を受ける ことになったかを見る。 同上同上
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明治統治機構の形 成 維新政府による統治体制の構築とその中で生まれた自由民 権運動、およびそれに対抗して制定された明治憲法の制定過 程、さらに法典編纂と私的所有制度の導入について述べる。同上同上
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法律家の形成 明治法システムの形成において要のひとつとなる法律家制 度の導入と司法官(裁判官と検察官)を中心とする法律家養 成制度の構築、そして対抗勢力と見なされた代言人・弁護士 の発達にふれる。さらに、国立大学および私立学校における 法学教育の始まりにもふれる。 同上同上
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産業社会化と法シ ステム 司法の独立の観念に影響を与えた大津事件にふれた後、第 一次大戦後の国内の政治・経済構造の変化と法システムへの 影響、小作争議という政治的・法的に大きなインパクトを持 つ出来事が法の変動を要求したのに対して法学や法実務が対 応した過程からどうような法文化的特色が強化されたかを探 る。 同上同上
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日本国憲法と法シ ステム 7 章ないし11 章では、近代法文化の変容を扱う。第二次大 戦後の戦後改革が、法律革命による生きた法文化の変革を生 むことが期待されたのに対して、50 年経過後にその成果が問 われることなり、再び根本的な構造変革が要求されるに至っ た様相を法文化の変容という視点からに焦点を合わせて描 く。この章では、日本国憲法の成立過程を顧み、新たな司法 制度を見る。 同上同上 2004/11/08 1271288.doc 科目名:日本法文化の形成(03) 2/2 回テーマ内容 執筆担当 講師名 (所属・職名) 放送担当 講師名 (所属・職名)
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法文化論 伝統的法文化が権利意識の欠如として捉えられたが、ルー ル志向の欠如とし見るべきであったこと、およびそのことの 社会生活上および法制度上の含意を、第二次大戦後の法と社 会に関する思惟を支配した川島武宜の法文化論を中心に検討 する。 六本佳平六本佳平
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法律家と法文化 法システムにおける法律家の役割について概観した後、法 学教育、司法試験、法曹三者、準法律家について日本法シス テムの他国に対する特徴について検討し、その形成や改革に も法文化的な面を探る。同上同上
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紛争処理と法文化 諸種の法的・法外的紛争の処理方法や、一般の個人や組織 の処理行動に日本的特色が、どのようなかたちでのこり、ま た変容を遂げてきたかを探求する。 同上同上
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司法過程と法文化 社会の構成員を社会の要求する行為パターンに従わせる社 会統制の諸手段のうちで法システムが占める位置、両者の関 係、民事および刑事司法の日本的特色とされるものの社会的 条件、その有効性、近年の変化などについて述べる。同上同上
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家族をめぐる法文 化――離婚と相続 12 章ないし14 章は、「法政策と法文化」をテーマとして、 いくつかの法領域からいくつかの法制度を例としてとりあ げ、その法文化的特色を明らかにする。この章では、家族観 念、親子関係、相続慣行、婚姻における男女平等などを取り 上げる。 同上同上
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土地利用と法文化 ――借地権と入会 権 近代法秩序の根幹をなすもう一つの制度である土地の所有 とその利用の法制度について、明治政府によって近代的私的 土地所有制度が導入された経緯を説明し、ついで、より具体 的に借地権と入会権について伝統的な法文化とその近代法シ ステムの下での機能変化について述べる。 同上同上
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企業と雇用の法文 化 日本の企業の形成を明治初期に遡って顧みた後に、日本の 企業の構造および雇用慣行の特徴、それへの法システムの対 応、経済変動によるその近年の流動化、それへの法システム の対応、その将来について論ずる。同上同上
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総括と展望 明治以来築き上げられてきた日本の法システムが、その第 一段階の任務をある程度果たしたとして、次の段階で、国民 により開かれ、社会により応答的なシステムとして、流動化 する社会の要求に応えていけるか、そして新たな活力ある日 本法文化を形成していけるかという観点から総括する。 同上同上